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24話 レベル0(ゼロ)

 私、ユキは今、西に大森林を望み、杜の都と城砦都市を繋ぐ街道にあるユルグの街というところに居ます。実は城砦都市に一番近い街です。

 

 城砦都市から見て北東の街道でおおかみさんを倒して、クラウセン大平原をまっすぐ横断し、まさに大返しって感じでこの都市まで来ました。普通はあのまま北東に進んだと思うに違いないフフフと策士ぶってみました。

 

 街道を行き来する隊商の宿場町的な商業収入がメインみたいです。夜になると隊商の護衛さん、雇い主の商人さんとかがいっぱい街にあふれます。みんな暖かいベットや、暖かくて美味しい食べ物、そして綺麗なおねえさんたちを求めて、みんな楽しそうです。私はと言うと……。


――


 俺は、金に困っていた。あー現実逃避するくらい金が無い。自由に行動できる街に心のタガが外れて、ちょっと豪遊しすぎたわ。少しお高いお風呂付の宿屋に泊まり、ちょっと野性味のある骨付き焼肉とか、珍しいフルーツとか楽しんでた。残った銀貨2枚は、やーっと言って離さないフローリアの激しい抵抗にあい、無利子の銀行に預けたと思って、俺は存在を忘れることにした。いつか銅貨とすりかえてやるがな!。

 さて、小銭入れにある銅貨4枚が命綱だ。もう切れてるという説もある。服を買い換えようなんて2日目で諦めた。もうドレスでいーや。あれ、服買う金諦めて何したんだっけ、思い出せない……。


 ちなみに俺の髪がまた伸びた。爪も伸びないのに不思議で仕方ない。肩を越えてちょっと邪魔だし切ろうかとな…と悩みながら弄っていたら、フローリアがサイドポニーに纏めてくれた。俺は左にお下げ。こういうのが楽しいのは、やっぱフローリアも女の子ってコトなのかね。


――

 なのでお仕事する事にしました。で、私は今その両開きの扉の前に立っています、看板には冒険者ギルドの文字。冒険者というのは、傭兵とジプシーの中間みたいなものでしょうか? 子供の頃に旅に憧れて、バックパッカーも楽しそうなんて思っていたので、ちょっと面白そうかな? 私は意を決して扉を開いて中に入りました。


 私が建物に入ったら、なんか注目されちゃったみたいです。窓口でギルドの職員の人と大きな声で話している2人のおじさんや、右手のバーカウンターの様な席で、軽食を取ったり、お昼からお酒を飲んでるおじさんとか。みんなお話をやめてこちらを見ています。恥ずかしいからあまり見ないで欲しい。


『おい、アレ……』

『う…マジか……』

 窓口で職員の人に掴みかかりそうな勢いで話していたおじさんたちが、離れていきました。順番ゆずってくれたのかな?


 私は窓口に近づくと、職員の人に話しかけられました。

「いらっしゃい冒険者ギルドへようこそ、お嬢さん。ご用件は?」

「えっと、冒険者っていうのになれるかなって、来ました」


 ざわっとギルド内が一瞬騒がしくなって、また静かになりました。

「あー、冒険者ってのは危険な仕事なので、お父さんかお母…」

「もう二人とも亡くなりました」おにーちゃんとゆかりおねーちゃんはいるけどね。本当に危険だったりするんですよ?って職員の人が心配しているけど大丈夫って何度も答えたら諦めてくれたみたい。

「では、ギルド登録を進めさせてもらいます」

木から作られたちょっと粗い紙に必要な事項を記入していきます。実はこの紙、魔法が掛けられていてウソを書いたら字が赤くなってしまうそうです。そうしたらギルド登録失敗なのかな?


 名前 ユキ、クラス 魔法使い?

「ってなんで疑問符がつくんです?」いや、なんとなく?

 出身地 アセルス王国。出てきたのがあそこだからウソじゃないよね? 大丈夫みたい。これからはそれで押し通すことにします。


「それでは内部資料用なんですが、潜在力調査ということで、この魔道具に触れてマナ総量を量ってもらえますか?」

とコトリと透き通った水晶玉のような道具がテーブルに置かれました。私がそれに触れようとすると、ギルドの扉が開いて3人の冒険者らしき人たちがギルドに入ってきました。

『かー久々にこのギルドに来たが相変わらずシケてんな』

『まあC級の専属ギルド員すら居ないトコだからな』と笑っています。

もう一人、魔法使いのローブみたいなのを着た人も仲間みたいですが、なんか固まってしまってます。私が力使ったわけでもないのに、なんだろ。2人は私に気づくと近寄ってきました。

「お嬢ちゃんなにしてるんだ?、まさかギルドの登録か?」ブワッハッハと笑ってます。

「ここのギルドも流石人不足だけあってこんなのも登録させんのかよ」と私の頭をぽんぽんしてます。ちょっとイラッときたけど、ここは大人の対応ですよね?


「はい。お仕事さがしてたんで。じゃ触りますね」

って面倒だし話を進めちゃおう。じゃあぴたっと、魔道具に触れてみます。光りませんでした。また不良品ですか、リコールですか!!


「ぶわっはっは、レベル0とかありえねーだろ」

「お嬢ちゃん、ごっこあそびなら付き合ってやるからよ、宿に行こうぜ? おいしゃさんごっことかよ、念入りに遊んでやるぜ?」

おまわりさん、この人です。つうほうあんけんです。二人のツレの人は二人の肩を掴んで

「おい、やめろ。やめろって」とぶるぶるふるえてます。寒いのかな?

  

「これで登録おわりなんですか?」とギルドの人に尋ねると

「ええ後はギルドの制度の説明ですと「俺達がじっくり教えてやるよ」」

とか言って肩に手を回してきました。


 もう、うるさいな!。私は立ち上がってガハハの髪の毛を掴んで頭を下げさせて、ちょーぱん(頭突き)を入れます。おじさんは白目をむいて倒れました。あんけん的な人には股間にヒザを一発。彼はちょっとぎるてぃすぎました。口から泡を吹いて倒れました。かたほうはもらったと思います。


「これで登録おわりなんですか?」ともう一度ギルドの人に聞きます。

「ええ、あとはギルド登録料、銀貨3枚を…」

タリナイヨ? 小銭入れをチャリチャリと振ってテーブルに開いてみます。やっぱり銅貨4枚しかありませんでした。なんかギルド内がまた静けさを増した気がします。後ろ二人のうめき声以外。 


 って、つい振り返ってぶるぶる震えているお兄さんの目を見てみます。

「ああ、あの、これ迷惑り、料ってことで、つ、使ってください」

と、お金貸してくれました。ぶるぶるさんいい人でした。小銭袋ごと渡されたので、銀貨3枚だけ抜き取り、残りは袋ごとお兄さんに返しました。


「あ、ありがとうございます。お借りしますね」

「あ、ああ返却とかいいんで、失礼します。お願いします、追わないで下さい」

って仲間2人を引きずるように去っていきました。床にはてんてんと染みが続いています。トイレいきたかったんだね?


 その後は、ギルドの仕事の請け方とか、報告の仕方とか、報酬や昇格とかいろいろ話を聞いて、最後に私のギルドカードが貰えました。G級冒険者ユキ、ここに爆誕です。うふふ。とりあえずどこかでゆっくりお昼ごはんを食べて、それから仕事を請けるかな?


『あいつら、流石についてねーな、ちょっと同情するわ』

『俺だって、あんなの知らなきゃからかって遊ぶわ、あの容姿でなあ……』

『昨日ここの街に付いていればな。あの斜向かいの酒場跡地を見れば、どんなバカでも判っただろうにな』

『とりあえず、アレに酒を飲ますなってのは、もうこの街の全員の意思統一をしなきゃいけねーな。シロネコユキは酔わすなってな』


 私が出たあとギルドではみんながそんなコトを話してる…。酒場、酔う、シロネコ? うっ頭が……。昨日くらいから意識が混濁してる、酒? が残ってるのか?


 なぞの頭痛に襲われ、俺は半壊した飲食店らしき跡地から目を背けて歩き出した。あんな店はなかった、そう頭から追い出しながら。



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