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10話 人里を目指そう(旅立ち)

 東か西か、はたまた北か。いずれかの方向から陽が昇り、山の向こうの空が明けてきた。朝が近いようだ。俺は朝方からちょっと眠った程度だが、疲れは感じなかった。マナ充填ボディのお陰なのだろう。そのお陰で、昨夜ちょっと大変だったが……。


 フローリアとのパス開通でマナは5倍くらいまで上がってる感じだ。慣れればもう少しいけるかもしれない。体を慣らしながらいこう。昨日みたいなのは、もうマジでしばらく沢山だ。


 川辺は低木が並んでいるのもあって、ここの地形がやっと把握できた。四方をとんでもなく高い山々に囲まれた盆地のような感じだろうか。頂に白い雪を冠している山々はとても険しい。ハイキング気分のノー装備で、乗越えられるものではなさそうだ。

フローリアと出会わず、適当な方向に歩き出してたらと思うとちょっとゾっとした。


 川の流れで顔を洗い、昨日焼いたまま放置して冷たくなっていた魚を齧って朝ごはん。昨日の予定通り、川沿いをくだっていく予定だ。

人が集まっている所を知らないか、建物とか見たことないか? とフローリアに聞いてみたが、彼女は俺と出会った森の辺りをテリトリーとして、あの森周辺から移動してなかったらしい。

この川に出てきたのも初めてだったそうだ。まあ明るくなったらこんな所にいる理由はない、さっさと移動しよう。

女神さまからは、急ぎ何をしなければマズい状況ではないと聞いていたが、フローリアしか居ないこの地では何も出来ない。化け物を倒そうにも大型の獣すらいなそうだからな、ココ。世界のすう勢には、あまりにも関係しなさすぎな場所に思えた。


「ふーん、じゃあその妖精王ってのにはあの森に居ろって言われてただけなのか」

移動スタイルは昨日と同じ、ジャイアント○ボスタイルだ。左手で俺の耳たぶを掴み、右手は大事な飴ちゃんをヒザに乗せている。

昨日と違うのは移動時に揺れてさわさわしてくすぐったいので、背中まで伸びていた綺麗な青い髪をサイドポニーで右側にまとめてもらった。というか俺がまとめた。

リボン代わりなのが、裾を切った俺の作業着の切れ端なのは申し訳ない。手に入るなら、いつかリボンでも付けてやろう。

あんな雑なヘアセットでも大喜びで、川辺でくるくると映る姿を映して楽しんでた。

なかなか出発に応じてくれなかったのは、まあご愛嬌。


「そうなの、ここに居ればいいのよって」

なにか使命みたいなものがあったんじゃないだろうか。俺に付いてきて良いのか?って聞いて見ると

「ぱーとなーだから一緒にいるのよ?」

と当然の様に言い切られてしまった。

他に何か知ってることは無いか、いろいろ聞いてみたがあまり知識は無いようだ。喋りながらも、俺はどんどんと川沿いを下っていった。


 河原が無くなる場所では木々の間を走りぬけ、また渓流の様に岩場があるところでは、

岩を足場にしてジャンプして移動した。時空魔法の練習も兼ねて、流れる葉っぱを見つけたら時間固定して足場にしていたから、気分はもうニンジャだ。

結構なスピードで移動しているのだが、なかなか森を抜けることは出来なかった。陽も高くなったので、この辺りで食事でも取るかな、まずは魚を取るしかないのだが…。


 そこで昨夜、やんごとない理由で開いた自室ゲートを思い出した。ポケットのゲートを開いて部屋を探る。何か食える保存食とか置いてなかったかな。ゲートを開くと、ゲート先の光景が、認識で把握できるようになる。テーブルの下のミニ冷蔵庫も電源入りっぱなしだけど、あれなんか入れてたっけかって……。

あれ、俺の遺影の前にお皿にのって、ラップが掛かったおにぎりが1個。昨日は無かったよな……?。

ポケットに引っ付かないようにおにぎりを取り出す。ちゃっちゃららー

「おにぎり~」

ってフローリアがちょっと驚いてる。俺のポケットに頭を突っ込んで中を探ってるな。しかし、俺が意識して開かない限りは普通のポケットなんだよ、残念でした。まあ、教えるのは別にいいのだが、ヘタに教えたらあっちに行ってしまうかもしれない。このコはなんとかポケットに潜り込めてしまいそうだからな。


 これは由香里さんの作ってくれるいつものおにぎり。ウチのおにぎりは丸いおにぎりだ。料理ヘタとか不器用という訳じゃなく、彼女の中でおにぎりは丸いものらしい。

パカっと割って中身を確かめてみると俺が好きだった小梅ちゃんだった。

やばっ、ちょっと涙でそうになった。くそ、由香里さんは俺を泣かせるのが得意だな、ホント。


「これ何?ユッキー。なんか良い匂い」

と興味しんしんのフローリア。

「これはおにぎりって言う食べ物だよ」

と教えてあげる。少し食べてみる? と聞いてみると本当に嬉しそうに微笑んだ。フローリアはおにぎりに手を伸ばすと、真ん中に鎮座していたご本尊を取り出した。って小梅ちゃんをまるごと持っていかれてしまった。

ああ…それは梅干しであって、おにぎりじゃないんだよって言ったけど、もう聞こえてないね。小梅ちゃんに齧りついてはまた大喜びだ。酸味のあるもの好きそうだったからな。

と、あれまだこっちのおにぎりを気にしてるな……と思ったら、小梅ちゃん跡地周囲の赤く色づいたお米もひょいひょいと食べている。容赦ないですね、フローリアサン……。


「ユッキー、これ本当においしーね」

満足して梅干の種を嬉しげに膝に置いているフローリア。嬉しそうでなにより……と俺は塩味の効いた塩にぎりを食べるのだった。

あれ、なんかいつもよりしょっぱいや…コレ……。

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