0話 トラックと女神
この話は、アルファポリスさんでも掲載しております。(http://www.alphapolis.co.jp/)
あちらのサイトで直接書いて投稿した物を、手直ししつつ推敲というスタイルです。
ですので多少の差異がありますが、書籍化なんて想定しておりませんし、ダイジェストなんてものではありませんので、あらかじめご了承ください。
胸ポケットに入れていたスマホが、軽快なマーチを奏でながら震えている。まだ眠りたりないような気分だが、すでに陽が上がっているようだ。
シートを傾けて寝ていた俺が少し首を傾けると、サンシールドの隙間から外の様子が見えた。朝方に寝入った時よりも車が増えているな。
俺の乗っているトラックの横にも、バスなどが止まっているようだ。修学旅行らしい若い学生たちの笑い声などがだんだんと耳に入ってくる。
トイレ休憩なのか、バスを降りてサービスエリアの建屋に向かう若者たち。そんなとき吹いた強風は、少女のスカートをはためかせた。
「!!」
よく見えんと急に倒していたシートから起き上がろうとしたとき、俺の中からブチッとなにかが切れる音を聞いた気がする。
息ができない、動けない。これはマズい、緊急連絡…とスマホを操作しようとしたが取り落としてしまう。
スマホの位置情報が、休憩時間過ぎても動かないから異常に会社は気づくと思うが、間に合わないだろうなあ……。
せめて見たかったなあと思いながら俺の意識は……。
次気づいた時、俺は白い部屋に居た。
光源は見あたらないのに明るく、そしてなぜか荘厳な気配を感じられる白い部屋。そこに立つのはたおやかに佇む女性、腰までも伸びている金髪。
見たこともないような美貌。薄布をまとっただけに見えるが、そこから浮き出す女性的なラインは扇情を催すどころか、触れてはいけないそんな気にさせられるような雰囲気を漂わせている。
なんて文学的にモノを考えるくらい混乱している俺の前で、その女性が口を開く。
「突然の事で驚いていることと思います。あなたは天寿を全うされて天に召される所でした。しかし、私の話を聞いていただくこちらにお呼びさせて頂きました」
うわ、声もすげー綺麗だ、こういうのを鈴を鳴らすような声っていうのかね。
「わたくしの名前はエリアスフィアと申します。貴方の住む地球とはまた違う世界で人々を導く。そう、貴方の概念でいう神のような存在と思っていただければ」
なるほど、神サマか。こんな薄布一枚なのにいろいろ透けないとかおかしいよな。それにあまりそういう方向に意識が向かない所も流石って感じなのかね。
「……なにやら不躾な視線を感じ…いや、この方は高潔な武術家のはず。そのような邪念……、あ……コホン」
ひとつ咳払い。神サマも咳なんてするんだな。それとも、そんな雰囲気だと俺が勝手に変換して視ているだけなんだろか。
ん? 武術?
「周りくどい言い方は止めましょう。
貴方に、私どもの世界を救っていただきたいのです‥川原厳秀様」
「いや、俺は高坂幸弘って言いますけど?」
その美しい笑みを浮かべていた口がぽかんと崩れていく様を見てしまった。
あ、メガミさまものどち○こあるのね……。
先ほどまでの荘厳な雰囲気はどこかに旅立ってた。
俺の前には床にうなだれるようにエリアスなんちゃらさんが崩れ落ちていた。崩れおちてる姿もなかなか美しい。しかし、あれはしばらくは立ち直らなそうだな。
川原厳秀サンか。
武道にあまり興味が無い俺でも名前くらい知ってる武道家であり求道家だな。この平和な現代では真の剣術は修められん!って、日本刀担いで外国に渡り、傭兵として人斬りに行ったとかテレビで聞いた。巻き藁じゃ満足できなかったのかね。
彼女の話を推察するに、彼と俺の魂?を取り違えたのだろうか。
「あ、はは……この為にカルマを盛大に使ったのに……あはははh……」
と生気なく笑っておられる。
って俺死んだのか、やっぱり。あー、マジかー。
再来週発売だと楽しみにしてたドラクロ13とかもうプレイできんのか。パソコンは2週間アクセスしなければ、あのお宝画像フォルダは、HDDごと消えるだろう。しかし、フォルダの画像が惜しい、USBに入れて一緒に荼毘に付してくれんかな、ムリか。
などと現世に残してきた業(お宝)の事を考えていた。
処女作ゆえ至らない所だらけですので緩い目で見ていただけるようお願いします。