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さいあくな掃除当番

「ササ!てめえ、騙したな!俺、日直じゃねーじゃん?!」

「いや、俺、"じゃなかったっけ?"って聞いただけじゃん??」

「あっ!?そういう事言う?!マジひでーなぁ!」

「何?藤枝、まぁた、笹沼におちょくられてんの??」


教室に入ると、藤枝君と笹沼君が日直の事で言い合ってた。

それを見た周りの子たちが、面白そうに二人を見て笑っている。

藤枝君の周りはいつでも笑顔に溢れている。

藤枝君は素直で、明るくて、気さくで、誰にでも優しい。


憧れだった。


私も、あんな風になれたら。

尊敬していた。

いつしか彼を目で追うようになっていた。

そして、いつしか彼を好きになっていた。


せめて挨拶くらいはできる様になりたい。


「ったく。」

「ん?フジ、どこ行くん?」

「トイレだよ!!」

「あれ?マジ切れ??」

ちょっとからかい過ぎたか?と思った笹沼は一応、藤枝の後を追う事にした。


藤枝が、トイレに行こうと莉央の方に歩いて来た。

チャンス!今度こそ言わなきゃ!おはようって!


勇気を出して。

たかが挨拶じゃない??


「…あっあの!」

「…何?」

…え?


引き止めたのは藤枝じゃなく、笹沼だった。

見ると藤枝はもう、莉央の脇を通り過ぎ、教室を出ようとする所だった。


「あっ….えっと…」

ただでさえ、緊張していたのに、引き止める相手を間違えた莉央はもうパニックに落ちいって、頭が真っ白になってしまった。

「…用が無いなら行くけど。」

「…」

「…意味わかんねぇ」

そう言うと、笹沼は面倒くさそうな顔をして、去っていった。


さいあくだ。

自分の情けなさに。


"キモい、話しかけるな"

そう思ったに違いない。


キーンコーンカンコーン


今日も男子と(藤枝君と)話さないまま放課後になった。

ため息を付きつつ、莉央は帰り支度を始めた。

「あのさ、莉央、今日ってなんか用事ある??実は委員会入っちゃって。今日の掃除当番替わってくれないかな??」

香澄が莉央にお願いする。

「うん、いいよー。」

特に用事もなかった莉央は二つ返事でOKする。

「ありがとう!!この恩は必ず!!」

そう言うと、香澄は教室を出て行った。




「あれ?吉田さん?田倉さんは?」

「あっ、えっと、委員会だから替わったの…」

「そうなんだ。優しいね!よし、じゃあ早く終わらせて帰ろうね~。男子、さぼんないでよ~!」

篠田さんが、笑顔で言う。

よかった…。割と話したことがある篠田さんが一緒で。

実は莉央は香澄以外は女子ともあまり話したことがなかった。

男子ほどではないが、中学のトラウマが抜けきれない。

―内心、キモイと思ってるんじゃないか―

被害妄想かも知れない。いや、被害妄想だとわかっている。

だけど、一度染みついた、被害妄想はいつでも莉央の心の奥をざらつかせる。


あっ…。


笹沼君も一緒だった。

朝の一件もあり、気まずさはいつも以上だった。


莉央は目が合わない様に必死で掃除をした。

正直、いつもの二倍は働いたと思う…。

なのに…。


「じゃあ、最後!ゴミ捨てじゃんけんね!じゃんけ~ん…」

「ポン!!」


…。


「は~い、じゃあ笹沼君と吉田さんね!」


…なんと?!


「吉田さん、田倉さんの替わりに来たのについてないね~。よろしくね?」

そう言って、篠田さんは私にゴミ箱を手渡した。

どうやら、同情こそすれ、変わってくれる気は無さそうだった。


莉央はチラッと笹沼を見た。

「あ~あ、マジ最悪。」


それは、単純にゴミ当番になってしまったことだろうか?それともアタシと当たってしまったことだろうか??はたまた両方か??

”ホント、最悪だよね~”とか同意した方がいいのかな?でもお前の事だよとか思われたら嫌だし…。

それとも、今朝急に呼び止めてごめんねっとか言った方がいいのかな?


莉央が半ばパニックになりながら、言葉を探していると莉央の携帯が震えた。

莉央が携帯を確認すると、母親からだった。

”スーパーで特売の卵を買ってきて”との伝言だった。

…面倒くさい。

思わず、莉央はため息をついた。


ソレを見ていた笹沼は、莉央の方のごみ箱のゴミを自分のゴミ箱にまとめだした。

明らかに山盛りになっていたが、それを持ち上げると、莉央に言った。

「俺一人で行くから。吉田は帰れば??」

「えっ…でも…」

莉央の言葉には答えず、さっさと笹沼は教室を出て行ってしまった。









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