プロローグ
意を決して、私は一歩踏みだした。隣に立つ人もまた、同じような一歩。
「これで最後だ、ティーファ」
足の長さの分だけ前進した彼がわずかに振り返る。
「ええ……行きましょう、フェスト」
手に持つ杖をぎゅっと握りしめ、私はうなずきを返した。両手で握ったそれを前に突きだし、意識を集中する。
数年に及ぶ、長い旅だった。私が何も知らない少女だったように出会ったばかりの頃は血気盛んなばかりだったフェストは、今ではもう落ち着いた青年だ。私自身も、旅の間に成長していたと思いたい。
集中し、脳裏に巡らせた呪式を杖に乗せ、薄く広く魔力を巡らせる。
一歩一歩確実に踏みしめてきた旅の道が魔法陣となり、その力を確実に広げるのがわかった。
失敗は万に一つも許されない。息を一つ飲んでから、口を開く。
私に力を授けてくださった女神へと祈りの歌を捧げ、魔獣を封印する力を得るために。
それは突如として現れ、世界を混乱に陥らせた魔獣――強大な敵に立ち向かった「戦士」と「巫女」の戦いの最終章。
神より託された聖なる獣たちと、授けられた力とで私たちは魔獣を空間の狭間へと封じることに成功した。
しかし、それは華々しい勝利とはほど遠かった。
だって人々が望んでいたのは、魔獣を滅すること。他に打つ手がなかったのだと――神に与えられたのは滅するための力ではなく封じるためのものだったからだと――救世主と持ち上げられた私たちの伝える言葉が弱くなってしまったのは、自らがそのことを認め切れていなかったからだと思う。
出来ることならば、私たちだって魔獣を倒してしまいたかった。与えられた力がそのためのものならば、喜んでそうしただろうに。
それが叶わなかった私たちは、悔しい気持ちをはっきりとは拭いきれないままその後に分かたれた。
旅の間に得た友情も信頼も――他の、何もかもを胸に秘めて。
アイリアははっとして目を覚ました。
重い頭を持ち上げる気にはとてもならずに、ただ目を開ける。見慣れたいつもの天井に、いつもの寝床。
「また、あの夢――」
普段と違うのは、自らの心境だけだ。そのことを確認しながら、ゆるゆると起きあがる。
夢の残滓が胸の内で苦々しくくすぶっている。
ここではない世界の、きっと遠い過去の話――昔から時折夢で細切れに見ていたそれが前世と呼ばれるものだとはっきりと悟ったのは、案外最近のことだ。
夢のうちの苦々しさがあっという間に現実のそれで塗り替えられるのは、アイリアに夢が前世だとはっきり確信を持たせた人物が「彼」だと認めがたいからだった。
現世の「彼」が出てくるまで、10話以上かかる、とここに宣言します(遠っ




