表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

5.1-Aには変な奴が多いみたいですが。

あまり本編にかかわらない小ネタ。

後半、強姦などの表現があるので注意。

なんだかんだで一週間が経過しました。



いやー、なんだかんだって便利な言葉だよね。


まあそれは置いといて。


この一週間でかなりクラスメイトの化けの皮が剥がれた。


進級当初は新しいクラスだからと大人しくしていたようだが、そもそも大部分が顔見知り。


だんだんと本性が表れてきた。






CASE(ケース)①攻略対象者、有馬と神谷の場合


クラスにいる2人の攻略対象者、有馬ありま 櫻志おうじ神谷かみや りょう


この2人はよく共に行動している。



渚と同室の有馬は、一言でいうと爽やか。それ以外に表す言葉が見つからないくらい爽やかである。


名前とかけて、爽やか王子と崇めよう。


委員長ではないが、各クラスに1人はいるようなカリスマのある中心人物だ。




反対に、鋭い眼光の不良っぽい神谷。


Aクラスには珍しいタイプの彼は、他の生徒達から遠巻きに見られて、避けられていた。


曰く、何故Fクラスではないのか…と。


そのせいで孤立気味だった神谷だが、有馬と仲良くなってからはだいぶクラス内に溶け込めたみたいだ。


まあ、最初は有馬が一方的に構っていただけだと思うが、神谷も懐いたらしい。


教室に有馬が入ってくるとパッと目を輝かせる姿は、飼い主と犬のよう。


…本人にはそんなこと言えないけどね?



「七罪、数学の課題なんだけどさ、ちょっと教えてくれない?」


「おう」


爽やか君が話しかけてきたので、課題ノートをごそごそと探す。


「…オレもいいか?」


びっくりした。


まさか神谷が俺に課題を教えてくれと頼む日がくるとは。


別に断ることもないので、了承する。


すると、あからさまにホッとした仕草をみせる神谷。



「…?」


首を傾げていると、有馬が解説してくれた。


「神谷って目つき鋭いの気にしてるんだよ。だから七罪に怖がられないか心配してたんだって」


あー…たしかに何人か殺ってそうな目つきだとか思った。


すまんな、神谷。


心のなかで謝罪する。


「第一印象は見た目だけど、それから人にどう思われるかは自分の行動だろ?俺は神谷のこと、怖いとは思わないけど?」


狼っていうよりもはや犬っぽいし。


そう言うと、有馬は目を瞬かせた。



「七罪は良い奴だなー。…なあ、嶺って呼んでいい?」


「どうぞ。じゃあ俺も櫻志って呼ぶわ。ついでに神谷も亮でいいか?」


「な…、ついでかよっ!」


ぶつぶつと言いながらも満更でもない様子。


櫻志と俺は顔を見合わせて、やれやれと肩をすくめた。


「名前で呼んでもらって嬉しいとか思ってないんだからなっ!?」


否定してるけど頬がうっすら赤いですよ、神谷亮くん。


結論。爽やかは友達思いの良いやつで、一匹狼はチョロいツンデレだった。





CASE②油井、御影の場合


俺、瑠衣、渚の3人で登校していると、校舎と寮のちょうど中間地点のあたりで行き倒れている人を見つけた。


っていうかクラスメイトの御影みかげめいだった。


「もしもし油井くん?また御影くんが…」


渚は手慣れた様子で誰かに電話をかけている。


訂正、行き倒れているのではなく寝ているだけみたいだ。


耳を澄ますと、たしかにスヤスヤと寝息が聴こえた。



「起きてよぉ〜」


瑠衣がゆさゆさと横たわる身体を揺するが、彼が眠りから覚めることはなかった。


本当に幸せそうに寝てやがる。


蹴飛ばしたら起きるかな?と物騒なことを考えた俺だったが、残念なことに実行する前に保護者がやってきた。




「御影!てめぇまたか!!」


ぜいぜいと荒い息で駆けつけたぽっちゃり系男子は油井ゆい智春ともはる


面倒見がよく、困っている奴は放っておけない性格なので、いろいろと生活能力のない御影冥の保護者(お世話係)である。


「起きろッ」


そして容赦なく御影を蹴飛ばした。


図らずも俺が考えていたことを実行した油井だったが、彼にはまったく躊躇いがなかった。


その段階はとうに越えてしまっているのだろう。



常にけだるげで線の細い御影は、いとも簡単にちゅうを舞い、べしゃりと芝生に落ちた。


「うわぁ痛そう」


渚は遠い目をして言った。


「御影、落ちたのにまだ寝てるね〜」


呆れながら御影の物と思われる鞄を、油井に持っていく瑠衣。


「さんきゅ、九重。じゃあ俺は行くわ。お前らも遅れないようにしろよ?」


いまだに夢の国に旅立っている御影を軽く担ぎ、その大きな体でどしどしと歩いていく油井。



「「「・・・・・・」」」


俺たちは俵担ぎで運ばれる御影を見送ったのだった。






後の出来事。


俺たちが油井に連絡したことを聞いたらしく、

「…悪かった。お礼にこれやる」

御影は手に持ったMOMO(モモ)を差し出してきた。



「なんで消しゴム!?」


しかも12個だった。

ダース単位でどこに持ってたんだよ。


何故そんな大量の消しゴムを持ち歩いているのか聞いたら


「…非常食?」とのこと。


なんて斬新な言い訳なんだ。


注)消しゴムは食べてはいけません。






CASE③小野田、嵯峨、野々村の場合


「おはよッス七罪」

「あ、嵯峨さがおはよう」


裁縫が趣味だと公言するメガネ男子、嵯峨が俺の元にやってきた。


「なあ七罪。小野田おのだの私服を見てどう思った?」


小野田と嵯峨は小学生のころからずっと同じクラスの腐れ縁らしい。


寮に帰れば私服でいる人ばかりなので、知り合いと通路ですれ違うことはよくある。


突然なにかと思えば、小野田の私服か。


あれはそうとうヤバイというかなんというか…個性的?



「すごく尖ってるな…、と思った」


「そうだよ!尖ってるんだよ!!」


見かけた小野田の私服は緑のシャツにトゲがびっしりついているものだった。サボテンっぽかった。



「いくら柔らかい素材でできてるっていっても、あの服で学園外に遊びに行こうとするのはやめてほしいんだ…。おれが恥ずかしい」


「服装は自由やん?気になるなら嵯峨っちが作ってしまえばいいんよ」


常に微笑みをたたえている野々ののむらがゆっくりした口調で言った。


お前、いつから背後にいた。


「野々村、いきなり入ってきて何を言い出すんだ。でもそれなら、おれも楽しいしいいかもな」


嵯峨はなにやら1人で納得すると、自分の席に戻っていった。



…ってか何故俺に相談したんだ。


「レイっちはあっという間に打ち解けてるね。外部生なのにすごいと思うんよ。きっと最強の守護霊がついてるからやね!」


「守護霊っ?」


野々村は戦々恐々と尋ねた俺の言葉にやんわり微笑んでスルーし、頭上を振り仰ぐと去っていった。


野々村は霊感があると有名である。


残された俺は、内心ガクブルだった。


え…上にいるの…?



このように変なクラスメイトが多いが、クラス内の仲は概ね良好である。





CASE④攻略対象者、月代つきしろ和哉かずやの場合。



担任である月代先生は、25歳と比較的若い教師が多いこの学園の中でもTOP3に入る若手教師。


そしてホストのように色気のあるイケメン。


ここまでいえばわかるだろ?



そう、彼はモテる。そりゃあもう尋常じゃなく。


教師の中では保険の枢木くるるぎ先生と人気を二分するほどだ。


当然親衛隊もある。



そんな彼はーー最近、俺に名前呼びを強要しようとしてくる。


レイ、俺のことは和哉って呼べよ」


職権乱用ですか、先生。

いいじゃん、月代で…。


月代(・・)先生。会うたびにそれ言うのやめてくれません?」


いい加減ウザいんで、という言葉は飲み込む。


こうなるといやでも和哉先生なんて呼んでやりたくない。


「お前が呼ぶまで俺は言い続ける」


えー…。


すごく嫌そうな顔をしてるのが伝わったのだろう。


先生は苦笑した。



「ぶっちゃけたこと言うと、お前の容姿がかなりストライクだったんだよなー。それで気になって見てたら、なんかおもしろいし」


「俺は先生のこと、好きじゃないです」


「でも嫌いじゃないんだろ?」


「・・・」


まだ一週間だけど、月代先生が生徒思いのいい先生で、人気は見た目のせいだけじゃないって充分わかっている。



「じゃあ無理やり呼ばせるのはやめる。お前が自分から呼びたくなるような、いい教師になってやるから」


正直なんでこんなに好かれているのかまったくわからないし、先生がより良い教師を目指すのは良い事だと思う。


俺が関わっていなければ、微笑ましく見れたんだけどな。




でもさ…


そういうの、ヒロインに言ってくれませんか?







いろいろと回想してきたが、最後にCASE⑤……というか今の俺の現状。


「嶺くん、書類ここに置いとくね」


女子のような可愛らしい声に現実に引き戻される。


「ありがとうございます、先輩」


たぶん表情は変わらないのだろうが、ニッコリと内心で笑ってお礼を言う。


俺の表情筋は働きを放棄しているらしい。


「ナナ、それが終わったら休憩しよぉ〜?あ、みんなも適度に休んでいいからね〜」


一目があるので偽チャラ男ver.の口調だった。


心なしかぐったりしている瑠衣は、隊員のみんなにも休憩を取るように呼びかけた。





そう、今俺は親衛隊が自由に使用できる会議室にいた。


生徒会親衛隊は規模が大きいので、集会などを開く際に用いられるらしい。


資料室が近いため、親衛隊として生徒会の仕事を手伝うときに便利である。


機密書類は回ってこないが、生徒会だけでは大変な雑用系は、こうして親衛隊が処理している。


と、いっても生徒会親衛隊が総出でやらないといけない量ではない。


なので隊長である瑠衣と選抜された何人かの隊員が放課後とかに行なっているわけだ。


そしてどうせ暇だしと俺も手伝っている。



「生徒会の雑用をやっているのに、当の生徒会からは何もお礼がないって悲しいよね…」


一区切りついたのかお茶を飲んでいる渚。


「渚くん、僕らは生徒会の皆様のお役に立てれば嬉しいんだからお礼なんて期待しちゃダメっ」


副会長の親衛隊に属する先輩が渚を嗜める。


なにこの純粋な瞳…。

綺麗すぎて直視できねえ。



チワワ先輩に戦慄しつつ書類を片すと、俺も休憩にはいることにした。



いい機会だと思い、ついでに気になっていたことを問う。


「俺、外部生だからそこのところよくわからないんですけど、なんでそこまで親衛隊は生徒会に嫌われてるんですか?」


俺は親衛隊がもっと殺伐としていると思っていた。


だが実際入ってみると先輩は優しいし、生徒会にガチな恋愛感情を抱いている人は半分にも満たず、ほとんどが高嶺の花を愛でるような尊敬だという。



一部の過激派を除いて、平穏な組織だった。


なのに何故、生徒会や親衛隊に入っていない生徒にここまで避けられているのか。



「それは、昔は親衛隊自体が危険な組織だったんだけど、あの事件が1番の原因かなぁ」



おそらく知らないのだろう、何人かの一年生の隊員が興味深そうに耳を傾けている。



「僕たちが親衛隊は嫌われるのに入ってる理由ってさ、その方が好きだったりとかもあると思うけど、中には学園で平和に過ごしたいからって人も多いんだ」


「そうだねぇ〜」


その筆頭である瑠衣は首肯する。


「親衛隊に入っていれば、ある程度は抜け駆けとみなされない。一部の過激派に、生徒会に近づいたら強姦とか、その手のものから護られるからね」



でも、と先輩は続ける。


「2年前…会長や副会長が1年生だったころ、それは起きたんだ。…個人名は伏せさせてもらうね。僕の友達でもあったからさ」


哀しげにそう言うと、静かに語り始めた。





2年前の冬。


とある平凡な容姿の生徒がいた。


その生徒Aは当時の会長の親友で、昼休みなどによく行動を共にしていた。


その生徒が、一部の親衛隊の暴走により襲われた。


ひと気のない倉庫で体格のよい生徒が3人がかりで押さえつけ、強姦したという。


会長様と釣り合わない容姿のやつがそばにいるのが気に食わないと、それだけの理由で。



異変に気づいた会長や風紀委員が駆けつけたときには時すでに遅く、現場は酷い惨状だった。


飛び散る血痕。

割れたガラス。

地面に横たわる生徒A。


焦点の合わない虚ろな目をした親友を見た会長は怒り狂い、3人をひとしきり殴った。風紀委員も生徒達が意識を失う寸前までは会長を止めようとしなかった。


そのあと会長は、親友を抱きしめて泣いた。


生徒Aは精神に深刻なダメージを受け、普通の学校生活を送るのは無理だと医師は診断をくだした。


学園側は制裁を行った生徒とそれを命令した黒幕の生徒を退学させた。


…それから生徒Aの姿を見たものは、いない。




「あんな事件、もう繰り返しちゃいけない…!」


先輩はそう締めくくると、悔しそうに歯ぎしりした。


そのとき先輩は被害者と同学年だったのだ。

ましてや友達だったのなら、親衛隊だったにもかかわらず、強行する生徒を止められなかった罪悪感に苛まれていることだろう。



「その影響が強すぎて、今の生徒達にも悪い印象を植えつけてしまっているわけですね」


「嶺くん理解が早いね。うん、そういうこと」


「ライバル同士牽制したいのはわかりますが、告白もしてないのに近づく奴に制裁してるやからは、そもそも同じ土俵にも立ってないです」


俺は冷たく言い放った。


前世が女だったからか、そこらんの醜い争いは見慣れていた…ような気がする。


くそッはっきり思い出せない。


「ナナのその言葉、過激派の連中に聞かせてやりたいよぉ。ここにいるみんなは、制裁許可が欲しいとか言い出さないでね〜?」


瑠衣はウンザリとした様子で再び仕事に取りかかる。



「ちょっとしんみりしちゃったね。もうこの話は終わり!僕等が真摯な態度で接していれば、きっと他の生徒達も見方を変えてくれるよ。それを信じよう」


先輩はニコッと笑顔をつくり、張り詰めた場の空気を変えた。



「そうですね」「がんばろー」などと賛同の声があがる。




仕事に取り掛かりだした隊員たちを横目に、積み上げられた書類の整頓でもしようと思ったのだが、ちょっと遅かった。


「きゃああああっ!?」


ドサドサと書類の山が崩れて雪崩なだれがおきた。


あたふたする先輩を見て、クスッと笑う渚。



「先輩、暴れると余計に崩れますよ?」


床に散らばる用紙を拾い集める渚だったが、机の上の書類の束は斜めに傾いていって…


「…ッと危なかった」


落ちる前に直した。


「嶺ありがと!」


まあ腕で崩れるのを食い止めただけだ。


「いや〜、平和でなによりだねぇ〜」


「…瑠衣、助けてやれよ」


お前のほうが場所近かっただろうが。



そういう意味合いを込めて睨むと、にへら、と笑って流された。

【登場人物】

七罪ナナツミレイ

前世の名は天城真琴(女)

転生者。

基本クール無表情。中性的。

身長175cm、筋力はないもやしっ子。

内心では意外とテンションが高いのに、無表情顏がデフォのせいで感情が伝わりにくい。

飄々として冷静に見えるが、そんなこともない。

本人としては笑っているつもりでも表情筋が働いていないので、その笑顔はまれ。可愛いもの好き。

銀髪に赤と金の目(いつもは黒のカラコン)。中二病に前世の黒歴史が抉られる。

ちょっと醒めている面倒なことが嫌いな主人公。冷酷な一面もあるが、歯向かわなければ優しい。

かなりハイスペック。ほぼ完璧だが、不器用。

致命的にネーミングセンスがない。

やや高めの甘いイケボ(笑)



七罪ナナツミ朱莉アカリ

弟に甘々な姉。銀髪青目。

超有名大学に通う19歳。

英語、フランス語…etc.が話せる。

アグレッシブな腐女子。

撮影、編集技術は神がかっている。

味覚オンチ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ