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4.親衛隊隊長ですが。

九重瑠衣視点。


彼はノーマルなので、主人公のよい友達になれると思います。

友達以上の関係になるかは…まだわかりません。

親衛隊の内部について詳しくは、そのうち補足するつもりです。

生徒会親衛隊隊長兼生徒会長親衛隊隊長。





それがオレーーー九重ここのえ瑠衣るいの肩書きだ。


とても長い。




入学式が終わって部屋に戻ったオレは、疲れたのでシャワーを浴びることにした。


いつものクセで下はちゃんとズボンまで履いたが、上半身は裸のまま共用スペースに歩いていく。


まだ濡れている黒髪を摘まむと、雫がしたたる。


(明日から、また髪を染めないと…)



日本と違ってこの世界には、純粋に黒髪の人は意外と少ない。


どちらかといえば濃いめの茶色が1番多いんじゃないだろうか。


今朝は寝坊したからウィッグで行ったけど、バレる危険性を考慮すると染めた方がいいよな。



…髪、傷まないかなぁ。






そんなことを考えていた時だった。



ガチャリ


ドアが開いた。




視線の先には見覚えのある銀髪。


彼の瞳は一瞬見開かれるが、すぐに元の無表情、プラスチックな美貌に戻ってしまう。


あのゲーム(・・・・・)では名前も出てきていないのに、あきらかに他と逸脱した端正な顔に、始めて見たときから警戒をいだいていた。



そう、同じクラスの七罪ななつみれいだ。


正直、生徒会より美少年だと思う。


腐男子目線から分析させてもらうと、中性的で背はまあまあ高いものの身体の線が細い七罪は攻めでも受けでもいけるナイスな容姿だった。



オレはしばし思考停止したまま彼を凝視する。


完全に脳内がパニックに陥っていたのだ。




オレは、すっかり気を抜いていた。


中等部のときは偶然余って一人部屋だったし、同室者がいるということが頭からすっぽり抜けていたのだ。


この寮に移動したのは一週間前。


内部進学生徒は全員、高等部の寮に移動した。


だいたいが中等部から同室者は変わらないままで、外部生がオレみたいな一人で部屋を使ってる奴らのところに入ると、聞いていたはずなのに…。



バタンッという音に我にかえると、七罪が玄関から出たあとだった。





やばい、口止めしなきゃ。


このホモの巣窟から身を守ろうと、ちょっと足りてない頭で一生懸命考えた『瑠衣』の想いが無駄になってしまう。


慌てたオレは部屋の前から去ろうとする七罪を引き戻し、壁ぎわに追い詰めていた。



焦るオレとは裏腹に、冷静な七罪。


彼はオレが変装している理由を聞こうとはしなかった。


そんな七罪だったから、オレは事情を話したいと思ったのかもしれない。


結果、オレは洗いざらい全て打ち明けることにした。


もちろん前世のことは伏せて…だったのだが。



ひょんなことからナナが転生者という衝撃の事実が明らかになり、同じ親衛隊でゲーム内の悪役のわりに良い子だと不思議に思っていた二胡川も前世の記憶持ちだったと教えられた。


こんなイレギュラー要素が多いなら、きっともうゲームとして機能しないだろう。

転校生ヒロインが来るまではゲームの強制力が働くのか確認しないといけないが。


巻き込まれるのは御免だけど、イベントは傍観したいなー。







オレが適当に冷蔵庫にあるもので作った夕飯を、ナナは美味しいと言って食べてくれた。


誰かといっしょに食事をするのなんていつぶりだろうか。


少なくとも親衛隊隊長になってからは覚えが無い。


「おやすみ」の挨拶に心が温かくなったときには、どれだけ自分は人に飢えていたのだと嘲笑わらうしかなかった。


親衛隊の隊員はオレのことを淫乱だなんて思ってないし、風紀委員も『仕事ができる奴』だと見直してくれたというのに、まだ足りないのか。


…でも、それは演じたオレを見ているのであって本当のオレを評価してくれているわけじゃない。



前世の記憶持ちという境遇を分かち合うことで、オレは本当の意味で楽になれたのかもしれない。






* * *


あとで思い返してみると、自分の行動が恥ずかしすぎて頭をかかえたくなる。


相手がナナだからよかったものの、悪い奴だったら弱みを握られたりしていたのではないか?




どうやら短絡な思考は、『瑠衣』だけだったころから少しも成長していないらしい。


自室のベッドの上でゴロゴロと悶える。


本棚に入りきらずに積まれていた薄い本(同人誌)がバラバラと散らかった。



うっ…オレも整頓しなきゃな。


重なっている本の一冊を手に取ると、なんとか本棚に収めていく。


「いっそもう一つ本棚を買うか…?」


週末になったら外出許可書をもらって、買い物に行こうかな?


誘ったらナナも来るだろうか。


ふと、あいつの顔が浮かんだ。


最初からほとんど表情が変わらなかったくせに、いきなりあの微笑みは反則だろ。



ノーマルのオレでもドキッとしたのに、あいつ大丈夫なのか…?


体育会系のマッチョに襲われるんじゃ…。


…うん?ドキッとした?

いやいやいや、してない!


オレは女の子が好きな健全な男子高校生!イケメンや美少年は萌えの対象として好きだけど、オレの恋愛対象ではないから!!



でもナナの笑顔を見たのって、きっとまだオレだけだよなー。


「うぇへへ」


勝手にニヤける頬。


無言で枕に顔をうずめた。



おさまれオレの表情筋!!



…もう何を考えても墓穴を掘る気がするから、早く風呂入って寝よ。












「嶺おはよっ。…あれ?九重くんおはよう」


翌日、教室に入ったオレとナナの前に二胡川渚がやってきた。


オレの姿を見て不思議そうにしている。


「渚、おはよう」


ナナはぼんやりした無表情で挨拶する。

眠いのか?


「ニコおはよ〜」


生徒会親衛隊、その中でもオレと同じく会長の親衛隊に属する彼のことを、オレはニコと愛称で呼んでいる。



親衛隊は何気に複雑な組織なのだ。


おおやけの力関係は、


生徒会親衛隊隊長(兼任で生徒会長の新隊員隊長)>各生徒会メンバーの親衛隊隊長>一般生徒の親衛隊隊長>親衛隊員


となっている。


数年前までは反乱も当たり前で、どこの戦場だと言いたくなるような殺伐とした組織だった。


先代の苦労もあって、今ではなんとかファンクラブ程度の良識がある組織に成り立っている状態だ。


それでもマナーの悪い者はどこにだっているもので、一部の暴走しやすい狂戦士(恋する少年)のことを思うと頭痛が鳴り止まない。


特に生徒会以外の親衛隊についてはオレの管轄外なので、なかなか手を回せない。


風紀委員の親衛隊みたいに親愛対象に嫌われないように、しっかりとしたルール築いていれば別なのだが。



(まあアレはアレで別種のめんどくささがあるよなー)


強姦とか起きたら後処理が自分のところに向かってくるので勘弁願いたい。


生徒会が親衛隊を毛嫌いせずにもっと関わってくれれば暴動も収まりやすいのだが。


親衛隊は生徒会を護ると同時に近づく者を排除し、生徒会を孤独にさせる組織だと彼らに認識されている。


いくらか改善されようが、生徒会や親衛隊がつくられるような人気者のオレ等に対する評価はあく


昔から続く猜疑心さいぎしんは簡単に振り払えるものではない。



「なんで嶺が九重くんと一緒に登校してるの?」


「それは〜オレとナナが同じ寮部屋だからだよぉ」


鬱になりそうな思考を断ち切り、いつものヘラヘラした笑顔でニコの質問に答える。


「向かい側って九重くんだったの!?…マジで?」


「マジでぇ」


見た目完全に子犬系ふわふわ男子のニコが「マジで」とか言うと違和感があるな。



「あ、そうだ。まだ渚には言ってなかったな。瑠衣も俺たちと同じだ」


「ほぇ?同じって…えええ!?」


昨日のオレのようなオーバーリアクションをするニコ。


すでに教室にいたクラスメイト達が何事かと視線を向けた。


「うう…」


たくさんの視線を浴びて赤面して恥ずかしそうに縮こまる。


オレも昨日知っていなかったらキャラを忘れて叫んだことだろう。



危ない危ない。





そのとき、


「ちょっとそこの2人、淫乱親衛隊隊長なんかと話してたら襲われちゃうよ?「…なんで?」


ナナが不機嫌そうに振り返ると、ニコよりもさらに小柄な男子が可愛らしい顔を不快そうに歪めていた。



こいつ、昨日オレが自己紹介した時に「最悪」と呟いた童顔の男子だ。


それに関しては別段怒ることもない。


親衛隊に入っていない生徒からしてみれば親衛隊など煩わしいだけなのだから。



「二胡川くんは親衛隊だからいいかもしれないけど、九重は体を使って生徒会の皆様に取りいろうとする最低なやつだよ?」


「お前は、その情報が確かだと思っているのか?」


ナナの曇りのない透明な眼差しが少年を見つめる。


少年はたじろいだ。


「親衛隊のみんなは九重くんのことを尊敬してるよっ。そんな根も葉もない噂、誰が流したのさ!」


ニコも心外だというように彼のことを睨みつけている。


「まあまあ、オレのことなんてどうでもいいから、落ち着いて〜」


言われ慣れてるから。



「なんだよ、ヘラヘラ笑っちゃって。その態度もムカつく」


「待てよのぞみ


思い出した。

キャンキャンうるさい小柄男子の名前は、のぞみはるかだ。


「そこまで言うことはないだろ?僕は二胡川にこがわと同室者だけど、親衛隊がそこまで悪いものとは思わない。九重だって生徒会に媚びるような奴には見えないよ?」



クラスメイトで攻略対象者の爽やか君こと有馬ありま櫻志おうじの人徳(ゆえ)か、彼の言葉で徐々に風向きが変わっていくように感じた。



「でも親衛隊はさ」

「九重隊長は書類仕事が早いよ」

「そういえば九重が会長に言い寄ってるとこ見たことないかも」

「毎日違うやつと寝てるんでしょ?」

「チャラいけど公私混同はしないよね」



ぶっちゃけ生徒会は萌え対象以外のなんでもないが、ある程度好意を持っていると思わせなければ隊長としてダメだろう。


親衛隊が生徒会嫌いだとおおっぴらに言うのもまずいので、親衛隊隊員のみんなにはLoveじゃなくてLikeの方で尊敬リスペクトしているんだと伝えている。




「どうせ淫乱と付き合うような連中も淫乱にきまって…「オレの友達を馬鹿にしないでくれる〜?」


ビキビキと青筋が立つ。


地が出そうになるのを必死に抑え込んだ。



オレのことは何を言ったっていい。


罵倒や野次は偽チャラ男親衛隊隊長になると決意したときに覚悟していたから、辛くても『瑠衣』が決めたことだし、紛れもない『オレ』自身が決めたことでもあるから。




でも、


腐男子で変装してるとバレても対応が変わらなかったナナ。


隊員としてオレを支えてくれた、ニコを筆頭とした親衛隊の皆。


九重瑠衣を認めてくれた人を悪く言う奴を、オレは許さない。



その怒気が伝わったのか、希は


「…っ!九重のことだって噂でしか知らないのに、ごめん…ちょっと言い過ぎた。七罪くんも二胡川くんもごめん」


先ほどの言葉を撤回した。


しぶしぶと言った様子だが、中等部で彼が迷い込んだ子猫を保護していたのを見たこともあるオレとしては、根っからの悪い人物とは思えない。


キツイ性格だから勘違いされやすいだけで、見方を変えればオレみたいな危険人物に毒牙にかかる前に2人を引き離そうとしたとも考えられるし。



「今回限りは許してあげるよ〜。でも同じような発言をまた繰り返したらオレ、怒るからねぇ?…他の奴らも」


脅すように強調すると、何人かの生徒が青ざめた。ため息をついて自分の席に行くと同時に、チャイムが鳴る。



「おい、何してるんだお前ら」


やってきた担任は眉間にシワを寄せて、フリーズしている生徒達に席に座るよう促した。


やっと凍った空気が元の喧騒を取り戻し、ドタバタと慌ただしくクラスメイト達は席についた。







だから聞こえなかったんだ。



「なんだ、ヘラヘラしてて気に食わないと思ってたけど、ちゃんと友達のために怒れるんじゃん」


ぽつりと呟いた、希の声は。

【その夜の電話】



「俺、生徒会の親衛隊に入ったよ」


『本当!?ぜひ生徒会に果敢にアタックするチワワ達の健気な写真を…!』


「…了解」


『保健室とか空き教室に隠しカメラを設置すると、素晴らしい光景が撮れると思うわ』


「姉さん、言っとくけどそれ盗撮だからね」


『嶺は生徒会とか風紀には接触しないの?』


「好きこのんで近寄りたいとは思わないかな。まだ1人も会ったことないし」


ラグ建築士である嶺にかかればイケメンほいほいよ。姉の予想だときっと転校生がくる前に堕ちるわ』


「(何それ怖い)…転校生、くるのかな?」


『王道転校生を姉さんは欲しているの。宇宙人アンチはいらないけど、何かしらはくるはずよ!だってここまで姉的王道がそろった学園はないもの。もうじき最大級の萌えがやってくる…そんな予感がするわ』


「フラグを建ててるのは姉さんのほうだよね…」

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