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塔国のラユト  作者: 采火
継承編
23/34

22.昼食の合間に

「ラユトがリュイをテスト?」


 食事をする手を止めて、レーリィンはクラメラに聞き返した。


「どうやらリュイが体術を習いたいと言い張っているようです」

「無理無理、だってバトラー君とガーデナー君だぞ。元々の実力差を考えてみてもバトラー君の方が強いに決まってるじゃないか。だってバトラー君だし。盗賊壊滅させたのバトラー君だし。何故今更?」


 レーリィンは首を傾げつつも、休めていた手を動かして昼食のサラダを口に運ぶ。トマトと茹でたキャベツを甘く味付けたものだ。全てゼルウィガーに作らせたもので、他にも豆のスープやバター控えめのパンなど、ヘルシーメニューがテーブルに並んでいる。

 何だかんだでレーリィンも女子だからダイエット程度は考えているのだ。


「まぁ、面白そうだから好きにさせておけ」


 ふふふ、と笑って口にサラダを運び続ける。


「相手は盗賊です。そんな勝手を許すのはどうかと」

「ラユトがなんとかしてくれるさ。なんたってバトラー君だしな」

「しかし、」


 言い募るクラメラに、レーリィンはフォークを突きつける。


「バトラー君とかメイドちゃんとかコック君とか、そういうのがもうすでにいるんだ。ガーデナー達が私の手の内にある間は何をしても私は気にしない。彼らにとって、その方が素でいやすいだろうしな」

「そうですが……」

「クラメラ。お前は時々過保護すぎる。そんなに心配しなくとも、お前が全力で私を守ってくれると信じているから、これくらいの無茶ができるのだ。お前が気にするのは事が起きてからでいい。でも、そんな事にはお前がさせないだろう?」


 レーリィンはクラメラにそれ以上追求させないように食事を続ける。

 黙々とサラダを口へ運ぶレーリィンは、それでも不安を隠せないでいるクラメラに気づいて、ぼそりと付け足す。


「それに面白そうだから私もみたい」

「それが本音ですね」


 レーリィンの本音にクラメラが半眼になったが、レーリィンは食事を続ける。

 食べ終わって立ち上がると、クラメラがテーブルを片づけ始めた。


「ふむ。クラメラ、そのテストとやら見に行くぞ」

「今日の午後は家庭教師が来ますが」


 クラメラの冷静な声にレーリィンは、


「さぼる」

「……はぁ」


 きっぱりと言えば、クラメラがこれ見よがしにため息をついた。


「こらこらこら、主人の前でなんだその態度は」

「姫様に呆れているだけです」

「なにっ」

「家庭教師には明日の朝来るように言っておきます。明日こそは早起きをしてくださいね」


 レーリィンは渋い顔をしたが、しかたなく頷く。勉強はしなければならないものなのだ。

 クラメラがテーブルを片づけている間、レーリィンはそれを眺める。特段やることがない。

 いつも思っていることだが、しっかりと仕事をこなすクラメラはすごいと思う。レーリィンは知識を欲してはいるが家庭教師とのマンツーマンの授業が嫌で、家庭教師から逃れる口実をいつも探しているのだ。

 理由は一つ。家庭教師との相性が良くないのだが、


「家庭教師、そろそろ解雇しようか……」

「何言ってるんです。ラユトたちのように、家庭教師を決めたのもお嬢様ですよ」

「あんな性格とは思わなかったのだ……」


 立ったまま、はぁ……と肩を落として後悔する。

 確かに雇ったのは自分だが、会うのが憂鬱な人種であるのは知らなかったのだ。

 頭の回転が速く、その膨大な知識だけで雇ってしまったと言っても過言ではない。


「まぁ、いい。明日の朝まで会わなくていいからな」


 ぼそぼそと言っていると、クラメラが片づけ終わったようで、食器を乗せたキャスターを押して入り口へ向かう。廊下を覗いて、ちょうど通りがかったメイドにキャスターを片づけるように頼んだ。

 レーリィンは壁に掛かっている時計を見た。ぴったり十三時。ラユト達の昼休みが終わる頃。

 レーリィンは、ラユトたちはどこにいるだろうと考えた。




レーリィン「さて、行くか」

クラメラ「姫様、人参が残っております」

レーリィン「……(遠い目)」

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