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 79 会議(1)


                     79 会議(1)


「そ、それは、………」

「言い忘れたが、発言は挙手して指名されてからにしていただきたい」

 妖鬼が言い掛けたところで、慌てて義忠が付け加えた。


「はい」

「妖鬼君」

「人間でないという証拠でもあるんですか?」

 当たり前の反論をした。


「はい」

「ゲキダ君」

「あるから言っているのです。今、皆さんのお手元に資料を回しますのでそれをご覧になって下さい。資料にも述べてある通り、何よりも遺伝子が違います。

 言い難い事をはっきり言えば、あなたと人間とではおそらく子供は作れません。それほどに違うのです。人間とチンパンジー位の違いは十分に御座います。

 最初は突然変異かとも思いましたが、恐らくは有り得ないだろうというのが私ども研究班の見解です。しかも、細胞サイクルが異常に速い。

 通常、私ども人間の細胞が生まれてから死ぬまで部位によって違うのですが一か月くらいは掛ります。早くても一週間。どんなに速くても数日、しかしあなたの場合は一時間にも満たない。

 いいえ数分の場合さえあります。どんどん新しい細胞に生まれ変わっている。だから傷を受けてもあっという間に治ってしまう。

 しかもあなたの知能は天才に近い水準です。その中でも運動機能は異常に優れている。私共が出した結論はただ一つ。あなたはエイリアンだということです。

 あなたは地球外知的生命体、俗に言うところの宇宙人なのではないのか。我々にはそうとしか思えないのです。その宇宙人がどうして人間に紛れ込んでいたのか。答えて下さい、妖鬼君」

 ゲキダは荒唐無稽に思えることを平然と言ってのけた。


「はははは、まさか、えっと、はい」

「妖鬼君」

「………」

 妖鬼は話すべき時が来たと思った。決心するのに少し時間が掛ったが、自分が何を言うのか、待って貰っている様なのでおもむろに口を開いた。


「本当は秘密にしておきたかったのですが、どうしても言わなければならないようですね」

 妖鬼の言葉に全員耳を澄まして聞いている。辺りは静まり返った。

「俺は本当は妖鬼ではありません。本名は暁天ユキオです。ノースイーストシティの進学校に通っていた高校二年生、17歳です。

 俺の街にスイーツ研究所という建物がありました。俺はそこで騙されて、妖鬼という青年と脳の交換をされました。首謀者は津下原源内です。

 彼は自分の孫である妖鬼の命を救う為に、俺の体と、彼の孫の体の脳を交換したのです。自分でも未だに信じられないくらいですがこれは事実です」

「そんなたわ言、誰が信じますか!」

 大声で罵ったのはゲキダ女史だった。


「私語は慎みなさい!」

 今度は義忠が怒鳴った。

「す、済みません。はい」

「はい、ゲキダ君」

「あ、有り得ません。脳の交換は全世界で研究されていますが、未だに成功した例はありません。マウスを使ってでもです! まして人間でやるなんて、百年早いですわ!」

 ゲキダは激怒しながら言った。


「はい」

「妖鬼君」

「私は研究者の人達が、奇跡だ、という言葉を使っていることを記憶しています。成功する確率が低く、今後どんな後遺症が出て来るかわかりゃしない、幾ら孫の為とはいえ、こんな危険な手術に良く津下原源内氏が同意したとか何とか言っていました。一か八かの賭けだったと思われます」

「はい」

 今度は別の女性の声だった。聞き覚えのある声である。


「はい、細号君」

 声の主は妖鬼の心理テストを行ったユカリだった。妖鬼と同じ列の後方に居たので、彼女がいたことには気が付いていなかった。

「もし妖鬼君の言うことが本当だとすると、彼の心理テストの結果が納得できるものになります。彼は彼の周囲のことを何も知りませんでした。

 しかし、津下原源内にだけは強く反応した。どうしてそうなのか実のところさっぱりわからなかったのですが、脳交換が事実だとすればぴったり話は一致します。

 それと研究が遅れていて百年早いと言いましたが、それは表向きの話じゃないんですか? 私達のロボット技術と同様に、進んでいた研究をひた隠しにしていたのではないでしょうか?」

 ゆかりの説明には説得力があった。


「はい」

「ゲキダ君」

「しかしそれだけでは説明出来ません。ごく最近の情報で彼はR-10Tを打ち負かしたと聞きました」

「オオーーーッ!」

 どよめきが起こった。

「彼は格闘会の四天王をことごとく打ち負かし、更には最強ともいえるR-10Tをポンコツにしてしまったんですよ」


「はい」

「えっと、ウヅキ君」

「R-10Tを打ち負かしたというのは本当ですか、その、妖鬼さん」

「はい」

「妖鬼君」

「はい。まあ、打ち負かしたという表現がいいのかどうか知りませんが、倒れて動かなくなったのは事実です」


「はい」

「ハヅキ君」

「しかし、R-10Tは10トンの衝撃にも耐える、それこそ象の体当たりにも耐えられるくらいですよ。どうやって倒したんですか。

 何か道具でも使ったんですか。道具を使ったのならば、私共にだって倒す可能性はありますよ。それだけで人間じゃない、エイリアンだというのは暴論じゃないのですか」

 ハヅキは妖鬼の弁護のつもりだった。


「はい」

「ゲキダ君」

「本人に聞いてみましょう。妖鬼君あなたはどうやってR-10Tを倒したのですか? ひょっとして道具を何か使ったのですか」

「はい」

「妖鬼君」

「道具は使いませんでした。ただ彼と戦っているうちに閃いたんです。確かに一撃では倒せないだろう。しかし、高速連打ならどうだろうかってね」

 妖鬼は出来るだけ正直に言った。今更嘘をついても仕方がないと思ったのだ。


「はい」

「ゲキダ君」

「高速ってどのくらいのスピードですか。プロのボクサーなら一秒間に5、6発ぐらいは打てる可能性があると思いますが。しかしその程度のスピードではR-10Tは倒れないはずですわ。

 かつてライガ君と戦ったことがあったことを皆さん覚えているでしょうか。彼のスピードはまさに超人的。一秒間に7、8発は打ったと聞いています。

 それでもR-10Tはびくともしなかった。妖鬼さん、今ここでその時と同様のスピードで、あなたの言う連打とやらを見せてくれませんか」

 ゲキダは勝負に出た。彼女は妖鬼に漠然とした反感を持っている。もし道具を使ったのならば卑怯だと罵り、素手だったら、不気味なエイリアンを信用すべきではないと言うつもりだった。

 どちらにしても妖鬼が不利になるように仕組んだのである。その意図に妖鬼は薄々気が付いていたので、どうすべきかしばらく迷っていた。


「はい」

「妖鬼くん」

「それじゃあ、やってみます。少し皆さんと離れてやってみましょう」

「はい」

「ウヅキ君」

「あの、せっかくここにR-10Tがいるんです。彼と戦わせてみたらどうですか。まあ、時間もない事ですし、R-10Tには耐えるだけにして貰えれば。私にはその方法でも全然歯が立ちませんでしたから」

 ウヅキは妖鬼の倒し方が信じられなかったのでその目で見てみたかったのだ。


「成程、それは良い提案ですね。じゃあ、妖鬼君、後ろに空きスペースがあるからやってみてくれないか」

 義忠がウヅキの提案に乗った。

「分かりました。R-10Tを後ろまで動かして下さい」

「私がやりましょう」

 ゲキダがR-10Tに指示を出した。すぐに会議室の後ろの空きスペースで妖鬼と向き合った。


「どうぞ始めて下さい。R-10T、衝撃に耐えるだけ耐えなさい」

 義忠は命令した。

「復唱します。衝撃に耐えるだけ耐えなさい、ですね」

「イエス」

「では、衝撃に耐えるだけ耐えます」

「それじゃ、行きます、はーっ!」

 妖鬼は強く一呼吸してから始めた。

「バ、バ、バ、バ、バ、バ、バ、バ、バ、………」

「バッタン!!」

 妖鬼の連打は一秒間に10回を超えていた。しかもなお一撃に一トンを超えるパワーが込められている。 

「オオーーーーッ!!」

 あっけなく倒れたR-10Tを見て、恐怖心の入り混じったどよめきが起こった。 

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