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 78 本当の地下二階(2)


                   78 本当の地下二階(2)


 エレベーターに乗り込むと、最上階が0階でその下が-1階、一番下が-9階になっている。地下二階と思っていた階が0階になっているらしい。

「さあ、着いたわよ」

「-9階が一番最下層なんだね」

「ええ、ここにさっき話したロボットレストラン、通称ロボレスがあるわ、すぐそこよ」

 少し通路を歩いていくと確かにレストランがあった。別にロボットレストランなどとは書いてなかった。看板にはただ単にレストランとだけ書いてある。


「とにかく何か食いたいから、入ろう」

「ええ、いいわよ」

「いらっしゃいませ」

 出迎えたのは男性用の服らしきものを着こんだS-2Tだった。ウエイターということらしい。

「二人よ」

 ウヅキが慣れた感じで告げた。

「二名様で御座いますね。どうぞこちらへ」

 手際よく案内してくれる。店員がロボットであることを除けば、普通のレストランとほとんど違いは無い。


「久々にかつ丼を食いたいね。俺はかつ丼セット」

「私は親子丼セットにします」

 注文は簡単にきまり、10分とは掛らずにやはりロボットのウエイターが持って来た。昼食時ではあるが店内はさほど混んではいない。


「しかし、随分空いているね。俺達を含めても十人もいないんじゃないか?」

「そうね、今頃は多分みなさん会議室の中で昼食を食べているでしょうね。ここのレストランは通常の幹部の人達が利用することが多くて、大幹部の人達は会議室かあるいは自宅で専用のコック達に作らせていると思うわ」

「へえーっ、ぜいたくな話だな」

「専用のコックって言っても、人間のコックは数人だけ。あとは全部ロボットのコックなのよ」

「ええ、大丈夫なのか?」

 妖鬼は美味そうにかつ丼を食いながらも心配になった。


「かつ丼の味はどお?」

「ああ、美味しいよ」

「そのカツ丼もロボットが作ったのよ」

「えっ、でもさっき、ロボットレストランに人間のコックが一人いるって、言わなかったか」

「ええ、そうよ。でも彼は指導するだけで実際の調理はR-10Tがやっているのよ。ちなみにR-10TのRってレストランのRなのよ。それでS-2TのSはサービスのSなのよ、ウエイターは一種のサービス業でしょう?」

「あれまっ。俺は当然ロボットのRだと思っていたけど違ってたのか。それとSはスピードのSかと思っていたよ」

「まあ、そういう意味合いもあるのかしらね。でも元々はレストランで働く為のロボット作りから始まったらしいわ。

 作り始めてから既に百年位は経過しているらしいわよ。そのレストラン用のロボットが今やガードマンの働きさえするようになったのよ」

「へえーっ、たまげたな。しかしロボットが作ったとは思えない美味しさだ」

 妖鬼にとってまた新しい発見が加わった。


「いや、美味しかった。しかし少し不思議な気分だよ。これってロボットに支配されていることになるのかな」

「うーん、どうなのかしら。でも、一応主人は私達人間だから、まだまだ支配されているとは思えないわね」

「そうなんだけどねえ………」

 妖鬼には何だか分からなくなってしまって、しばし考え込んだ。


「さあ、そろそろ時間よ。会議室に行きましょう。お偉いさん達が待っているわよ。午後二時からあなたに対する尋問やら何やらが始まるみたい」

「そうか、じゃあ、行こうか。ところで会議室にはウヅキさんも入れるのか」

「はい、私も参考人として呼ばれているの」

「何だか国会みたいな感じだな。さもなければ法廷とか」

「まあ、似たようなものね、ああ、ご馳走様」

「ああ、その、ご馳走様です」

 ウヅキのまねをして言うと、

「ありがとうございました。またのご来店をお待ち申しております。お粗末様でした」

 数名のロボット達が声を揃えて感謝の念を伝えた。

『丁寧過ぎる感じだけど、人間も多少は見習った方がいいかもね』

 そんな印象を受けてレストランを後にした。


「さすがに厳重だね。ロボットがうじゃうじゃって感じだ」

「最高幹部達のお城みたいなところだから仕方ないわね」

 二人が入り口の前に着くと、

「ゆっくり一人ずつお入り下さい」

 門番らしいロボットが言った。そこのドアだけ回転式になっていて一人ずつしか入れない様になっている。先に妖鬼が、続いてウヅキが入った。

 回転ドアを抜けると、小さなホールになっていて、そこに見覚えのある二人、ミソカとハヅキが微笑みながら待っていた。


「やあ、お久しぶり」

「いや、結構あっていますけどね」

 ハヅキの懐かしそうな言い方に、妖鬼は冗談っぽく反論した。

「まあまあ、とにかく中に入りましょう」

 ミソカがとりなした。


「さて、主役の登場ですな」

 幾分皮肉気味に言ったのは義忠だった。

「ああ、ど、どうも」

 妖鬼は何と言ったらいいか分からず、万能語である、『どうも』で済ませた。


「君が妖鬼君か。会うのは初めてだね。一応ここのトップを務めている、磁北泰治という者です宜しく」

「こ、こちらこそ宜しく」

「ここのナンバースリーを務めます、難波なんばムスキンです、宜しく」

「妖鬼です宜しく」

 その後、ナンバー10まで、ナンバー8のミソカを除いて紹介されて、何ともせわしなかった。会議室は複数あるようだったが、今回は学校の教室を二つ合わせたくらいの中会議室だった。

 大きな長方形のテーブルが中央にあり、妖鬼はミソカとウヅキに挟まれた感じで座った。その隣にハヅキがいた。

 向かい側には大幹部のうちのナンバー1からナンバー7までが座り、妖鬼の側にはナンバー8のミソカの他にナンバー9、ナンバー10の二人も座っている。

 その他の関係者も加えれば二十人近い人数だったが、一番端にはロボットのR-10TとSー2Tも向き合う形で座っていた。ロボットがいるのは無論不測の事態に備えての事だろう。


「では、これより、会議を始めます。今回のテーマはご承知の通り、妖鬼氏の処遇についてです。本来は明日の予定でしたが、本土の警察当局の要請もあり、一日も早く会議を開き、善後策を講じたいと考えた次第です。

 それに先立って妖鬼氏の調査報告をしていただきましょう。反論や事実確認などは調査報告の後にしていただくとして、先ずはゲキダ洋子君報告してくれたまえ」

 司会は義忠が務めた。ゲキダ洋子はナンバー7として紹介された女性である。メガネをかけた細身の厳しそうな表情の女性だった。


「彼は人間なのでしょうか。妖鬼君、あなたは本当に人間なのですか? ほとんどすべてのデータはあなたが通常の人間ではないことを示しています」

 最初の質問は予想だにしない厳しいものだった。

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