6 スイーツ研究所(5)
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6 スイーツ研究所(5)
何とか助かる方法はないかと何時間にもわたって考え続けたが、
『ううむ、今のこの状態じゃ、どうにもならないな。もう少し様子を見よう』
そう結論付けて、暫く眠った。ふと目を覚ました。思い出したことがあったのだ。
『まてよ、女子高生連続殺人事件と言えば、去年の暮れにそんな事件があったよな。年末年始にかけて大騒ぎだった。確か犯人は、当時、十七歳の未成年者だったとか』
ユキオは事件のあらましを徐々に思い出していた。
『事件の映像を、犯人が自慢げにネットに流した事件だった。映像の中で実名を本人が出したんだからな。どこの誰だか、未成年者だったけど、完璧に分かってしまった事件だった。
事件発覚後に慌てて、映像が削除されたりしたんだけど、もう遅かった。日本中に名前が知れ渡ったから、隠しようがなくて、結局、例外的に実名報道され続けたんだ。
それにもかかわらず、確か未だに犯人は捕まっていない。警察の大失態と随分新聞とかテレビのマスコミに叩かれた事件だったよな。
名前はなんだったっけ。ははは、忘れちゃった。しかし、大きな会社の御曹司だということは覚えているぞ。
確か薬品業界の、革命的なダイエット薬、ヤセール、そう、あの、ヤセールが世界的大ヒット商品で、開発した今の会長は、その収益だけで、何兆とかの資産を形成したとか。
あの会長の名前は覚えているぞ。津下原とか言ったな。名前は、江戸時代の発明家だったかの、平賀源内にあやかって、源内だったはず。
そうだ、ツゲハラ薬品の津下原源内だ! テレビにも何度か出ているあの、立派そうな男が、孫可愛さに、人を犠牲にして平気なのか!
……しかし、俺にすり替わって、その後一体どうするんだ。暁天家の一人息子として生きていくのか? ううむ、よく分からんな。ふう、少し疲れた。休もう』
事件の概要に気が付いたところで再び眠りについた。
「いつまで寝ているんだ。早く起きろ! もう歩けるだろう!」
冷酷そうな感じの男の声だった。目を開けてみると、胸板の厚い怖そうな背広姿の男達が、何人もそばに立っている。しかし二人の女性も含めて、研究員達の姿は全く無かった。
「あ、ああ」
仕方なしに起き上ってみると、既に接続されていた機械の類はなく、点滴などもされていない。その上、いつの間にか服を着せられている。
これといった特徴のない、ありふれた感じのTシャツにジーンズだった。ベッドのそばに、ズック靴が置いてあったので、それを履いて歩き始めた。
「お、おっと、どうも、ちょっと、ふらつく……」
ユキオはぶつぶつ言いながら不慣れな感じで歩いて見せた。時々よろけたのは半分わざとである。身長が少し高くなったので、足元がおぼつかなかったのだ。しかし、その状態にもすぐ慣れたのだが、
『回復が不十分だと思わせた方が、相手が油断してくれる可能性があって、逃げるチャンスが出て来るかもしれない』
そんな思いもあったからである。
「まあそれくらい歩けりゃいいだろう、ついて来い。逃げようなんて思うなよ。俺もそうだが、お前の周りの連中は、その道のプロばかりだからな」
声を掛けた冷酷そうな男が、男達のリーダーらしい。
『初めて見る顔ばかりだな。一体どこの誰なんだ? それに、その道のプロって何なんだ?』
屈強の男達、七、八人に囲まれていては大人しく付いて行くしかなかった。




