57 ライガ(3)
57 ライガ(3)
「さて、お二人ともご苦労だった。特に妖鬼君は疲れたろう、朝から体力測定や試合があったりしてね」
「ふう、さすがに疲れましたが、今後の予定は?」
妖鬼は疲れているらしかったがなお余裕がありそうでもある。
「予定としては今日の夜になるのだが、疲れている様だから明日にしようか?」
義忠は一応聞いてみた。
「いえ、夜になれば体力も十分に回復すると思いますから」
義忠は期待していた返答に満足げに、
「そうか、ならば、今夜八時に地下二階の研究室に行ってくれたまえ。既に準備は整っている。そこで様々な調査が行われる。まあ、健康診断みたいなものだが、血液検査やMRIなど体の隅々まで調べさせていただく。
更に最終段階として、心理学的な調査、平たく言えば、君が記憶喪失者なのかどうなのかの調査をさせて貰う。知能テストもあるからね。
それら一連の調査に3~4時間はかかるだろう。深夜になってしまうが、その後は、調査結果が確定し、その結果を受けて我々が議論を尽くすまでの三日間は完全なお休みだ。三日後もう一度研究室に来てくれたまえ。
そこで我々の出した結論を君に伝えることにする。勿論詳しい日時は後でウヅキ君に連絡して一緒に来て貰うことにする。ウヅキ君もそれで宜しいかな。ああ、当然今夜もウヅキ君と一緒に来て貰うがね」
と、一気に言った。
「ああ、俺は疲れたからこれで失礼します、じゃあ、皆さん後は宜しく」
かなり疲れた様子のライガは自分の用事が終わったと感じて歩いて行ったが、一度だけ後ろを振り返って、
「近いうちにまたお会いしましょう、妖鬼君!」
そう言い残して去った。妖鬼は軽く頭を下げただけだった。
「はい、じゃあ今夜8時に研究室に行きます。あ、あの、水を一杯いただけますか」
喉の渇きがあったからだろうが、フルマラソンの疲れが無いかのように妖鬼は平然と言った。
「はははは、君、水を頼むよ」
義忠は関係者の一人に言ったが、
「あの、水は私が………」
ウヅキが素早く給水所に水を取りに行きすぐ戻って来た。
「どうぞ」
「ああ、どうも、いや、冷たくておいしい」
コップ一杯の水を妖鬼は一気に飲み干した。その一杯の水で妖鬼の体力はすっかり元に戻ったようである。
「それでは、午後8時に研究室で」
ウヅキと妖鬼は軽く頭を下げて自宅に戻った。
「へへえ、あの二人何だかいい雰囲気じゃないか」
義忠はそう呟いたが心中はかなり複雑だった。
『妖鬼という奴は天下グループ格闘会の四天王と同じくらいの水準らしいな。しかしあの回復力の速さは尋常ではない。敵に回すと怖い存在になる。
味方であれば心強いが、本当に味方なのか? ウヅキといい感じだからそれを利用すればいいのだろうが、どうも得体の知れない印象がある。厄介なことになりそうだな………』
そんな思いでグラウンドを去った。
自宅に戻ったウヅキと妖鬼は入浴後、食事をとっていた。本当は地下のラーメン屋で餃子を食う約束だったのだが、マラソンでのアクシデントもあって、二人とも忘れていた。
「でも、どうしてロボット犬は殆ど同時に変になったのかしらね」
ウヅキはロボット犬の異常行動が気になっている。
「うん、はっきり分からないけど、いつまでも俺達に追いつけなかったことに原因があるんじゃないのか?」
「そうなのかしら。でももしそうだとしたら役に立たないわね」
「そうは思わないな。少なくとも途中まではちゃんと追跡していたんだからね。ただ、アシモフの三原則は守られていなかったね。人間に襲いかかったんだから」
「あれはショックだったわ。研究段階なのにどうしてアシモフの三原則を外していたのかしら」
「うーん、ひょっとすると、ロボット警察犬と戦わせるためじゃないのかな。俺がこの島にいる以上警察がいつこの島に捜索の手を入れて来るか分からない。
その時、ロボット警察犬が大量導入されたら大抵の人達は太刀打ちできないだろう。もし人がロボット警察犬を排除しようとしたら、公務執行妨害になって逮捕の理由が出来てしまう。
しかしこっちのロボット犬が立ち向かえば、逮捕にはならない。なんせロボットだからね。そうなるとかなりの時間稼ぎが出来てしまう。こちらの狙いはその辺にあるんじゃないのかな」
妖鬼のユキオは自分の考えを述べてみた。
「へえ、何だか、妖鬼さんて頭がいいみたいね。あなたの高校時代の成績は一応チェックしてあるわ。中の下位の成績ね、えへへへ、ごめんなさいね、こんなことまで分かっていて。
ちなみに私の成績は下の上くらい。通う学校も年代も違うから単純に比較は出来ないんだけど、私よりは1ランク上よね。ちょっと羨ましい」
ウヅキは一応妖鬼を誉めたつもりだった。
「ところで知能テストがあるんだよね」
妖鬼は話の方向を少し変えてみた。
「はい。これは学校の成績とは必ずしも一致しないらしいんだけど、私の知能はズバリ100よ。平均的な頭脳の持ち主ということね。妖鬼さんはご自分の知能をご存じかしら」
「いや、それは分からないよ。多分100くらいは行くんじゃないかな」
ユキオは自分の知能テストの事を思い出していた。ただ、その結果は知らされていなかった。




