55 ライガ(1)
55 ライガ(1)
ライガと一緒に走ることで話はまとまったのだが、
「我が天下グループでもロボット犬を作ったのだが、性能を試してみたいのでね。ロボット犬二頭と一緒に走って貰いたいのだが、どうだろう。
ヤセールグループの関与したロボット犬より若干性能は落ちるらしいのだが、人間と一緒に走ったことが無いのでね、特にライガ君の様に足の速い者とはね。
もし走っていて邪魔になるようだったら、途中で排除もありうるという条件でどうだろう、一緒に走ってくれまいか。こういうチャンスはめったにないものでね」
義忠はロボット犬の性能テストを同時にやりたいらしかった。
「機械の性能をお疑いになる人が、ロボット犬の性能テストですか。まあ、いいでしょう。僕は構いませんが、妖鬼君はどうですか」
「ああ、私もいいですよ。ロボット犬とだけ走るんじゃちょっと嫌だけど、ライガさんと一緒というのなら構いません。ただし、邪魔な時は蹴飛ばすかもしれませんよ」
妖鬼のかなり本気な言い方に、
「はははは、邪魔にならないようにせいぜい気をつけますから。じゃあ、今度は午後二時に、グランドでお会い致しましょう。では、一時解散!」
義忠の解散宣言で、再び、三々五々居合わせた人々は散って行った。
「疲れてない?」
自宅に戻った妖鬼にウヅキは優しく聞いた。
「ああ、全然平気だよ。ところで、さっき何があったか知ってるか?」
「何って、武龍さんとの試合の事?」
「ああ、まさか、あんな手があるとは思わなかったよ。俺が裸絞めした時の事さ」
「そう言えば、急に止めちゃったわよね。まさかまた指が伸びたとか?」
「いや、今度は注射されたんだよ、ダメージを与える液体をね」
「えええっ!」
ウヅキは絶句した。
「強烈に痛かった。それで俺もついかっとなって、かなり本気の回し蹴りで彼の足の骨を折ったんだよ。せっかく怪我が無いようにと思って裸絞めに持って行ったんだけど、逆効果だったな」
「噂には聞いていたけど、本当だったのね。で、注射された腕の方はどお?」
「痛みは数分で消えてしまった。多分後で調べても証拠が残らないような薬物なんだろうね、きっと。注射針は指と指の間から伸びて来た様に見えた。
俺は決めたよ、次は韋駄天ライガ君との試合になりそうだけど、もう手加減はしない。ただ困るのは四天王の底知れないパワーだよ。
当たり前のダメージじゃ彼らは参らないんだよね。だから大けがをするか、させるかになってしまう。何とかそうしない方法は無いものかねえ」
ユキオは最近の試合の方法に大いに疑問を感じていた。
「そうねえ、確かに、行き過ぎているわね………。ああ、そうそう、お昼はどうします?」
「うーん、そうだねえ、そんなに時間がある訳でもないんだけど、何だか無性にラーメンが食べたいね。本格的なラーメンはこの島じゃないのかな?」
「勿論あるわよ。ただ、地上には無いわね。地下に行かないと。行きましょうか?」
「行きましょうかって、地下に行くには、確か病院というか、今朝までいた、医務室の奥のカジノからじゃないと、行けないんじゃないのか?」
ユキオにはウヅキの言葉が解せなかった。
「ところがさにあらず、自宅から行けるのよ。それじゃ行きましょう。ちゃんと許可はとってありますからね。地下一階までなら大丈夫。地下二階以下は残念ながらまだ許可されていないわ」
「へえ、でもどこから行くんだ。ざっと見た感じ、それらしい階段とかは無かったけどね」
「私の寝室は見ましたか」
「まあ、チラッとはね」
「地下への階段は、私の寝室にあるのよ。別の言い方をすれば、この近くでは私の寝室にしかないのよね。どうぞこちらへ」
ユキオはウヅキの後に付いて行った。
「さあ、こっちよ」
「ああ、そうか、ここにもドアがあったんだ」
そこは入り口からは死角になっていて見えない位置にあるドアだった。ドアを開けると、地下への階段が確かにあった。階段は明るく、綺麗な作りで、繁華街にありがちな薄暗く汚いイメージは微塵もなかった。
「へえ、地下だけどずいぶん立派だね」
「ええ、この島の本当の姿は地下にこそあるのよ。さあ、ここが、天下グループの誇る地下都市よ」
地下一階のドアを開けると、地上よりもはるかに多くの人々が、行き来していた。まるで大都会の巨大な地下街の様である。
「へえ、驚いたな。ついさっきまで全然知らなかった。いや、ほんとにこれは地下都市だな」
ユキオはタンポポの言っていたことを思い出していた。ただ、想像していたのは巨大な簡易宿泊施設だった。地下街は想像していなかったのだ。
「家から近くて割と美味しいのはここなんだけど、ここにしますか?」
「ああ、余りゆっくりしていられないから、ここでいいよ」
二人は手近なラーメン屋に入った。ユキオがみそラーメンを頼むと、ウヅキも同じものを頼んだ。
「ああ、久しぶりだ。うん、美味しい!」
「ふふふふ、そうでしょう。しかも、定番通常メニューは一杯だけなら無料なのよ。あ、あの、餃子は食べない?」
「これからマラソンをする人間にそこまで食わせるのかい?」
「あ、そ、そうね。じゃあ、その、また後でね」
ウヅキはちょっと残念そうだったが、
「マラソンが終わったら、食べに来ようか」
ユキオの一言に安堵した。二人は自宅に戻り、支度をしてグラウンドに向かった。




