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 49 タンポポ(2)


                    49 タンポポ(2)


「想像がつくとは思うけど、殆どが地下に住んでいるのさ。地上に出ちゃうと、指名手配されている人は空撮されて、警察が引き渡し要求をして来るかも知れないからね」

「ああ、そういうことなんだ。でもずっと地下暮らしじゃ大変だろうね」

「まあ、その為にここがあるのさ。ここは地下と繋がっているんだ。もっとも地下にだってカジノはあるし、いろんな設備が整っているんだけど、やっぱりたまには地上に出たいよね。

 建物の外に出られなくても窓から外を眺められるだけでも幸せなのさ。実はね私もその一人なんだけどね。私には親殺しの容疑が掛っているんだよ」

「えっ、親殺し!」

 タンポポは急に厳しい表情になった。


「あんたは信用できそうだから話すんだけど、あたしが十五の時だった。私の両親が中年太りになったことを気にして、ヤセールを飲んだのさ。

 飲み始めてから何日もたたないうちに二人の様子がおかしくなったんだ。痩せ過ぎてミイラみたいになっちまったんだよ。しかも、私の事が分からなくなったみたいで、あたしに襲いかかって来た。

 私は二人から逃げようとして、二階に上がって様子を見ていたんだけど、そのうちに二人は階段を上って来た。私は怖くなって、突き飛ばしたら、階段から二人とも転がり落ちたんだ。

 救急車を呼んだんだけど、救急隊の人が来た時にはもう死んでた。私は親殺しということになって逮捕された。だけど納得できないよ。本当の死因はヤセールにあると思うよあたしは。

 裁判であたしは無期懲役になるらしかった。でも納得出来なかったから、あたしは脱走した。誰とは言えないんだけど、あたしに同情してくれる人達が警察関係の人達の中にもいたんだよ。

 その人たちの協力もあって、私は何とか逃げられた。その手引きをしたのがここの天下グループだったのさ。ふう、ああ、たくさん話したら喉が渇いたな。ソフトクリームの追加してもいいかな」

「ああ、よく話してくれたね。何を追加してもいいからね。話してくれたお礼だよ」

 ユキオは感動してもいたが、

『ミイラみたいだって? ひょっとして………』

 妖鬼の三番目の動画の事を思い出してもいた。


「特大のソフトクリーム追加ね。妖鬼さんは?」

「ああ、そうだな、おれはじゃあ、普通のソフトクリームにしておくよ。そろそろスイーツ恐怖症を治しておかないとね」

「スイーツ恐怖症?」

「はははは、甘いものがちょっと苦手なだけだよ、胸焼けするからね」

「なあんだ」

 ユキオはスイーツ恐怖症の本当の理由は話さなかった。話がややこしくなると感じたからである。


「お待たせしました」

 特大のソフトクリームはまさに特大で、普通のソフトクリームの五、六倍はある。

「それにしても無愛想なウエートレスだねえ」

「ああ、彼女はいつもああなんだよ。噂じゃ彼女も殺人の容疑者らしいよ」

「へえ、それで暗いのか。でも誰かさんは明るいよね」

「ああ、あたしはもう吹っ切れちゃったのさ。ここに来た五年前は真っ暗だったけどね。あのウエートレスさんもだんだん明るくなると思うよ」 

「だといいね。うん、はあ、久しぶりにソフトクリームを食ったな。ああ、何かおいしいね」

「うん、美味しいよ、ただだから特に美味しいよ」

 ユキオのソフトクリームはすぐに無くなったが、特大のソフトクリームはそう簡単には無くならなかった。


「ふううう、完食!」

 二十分ほど掛ったが何とかタンポポは食い終わった。

「はははは、見事な食いっぷりだね。ところでとっておきの話が他にもあるのか?」

「勿論あるけど、今日はここまでだよ。小出しにしてしばらくおごって貰うつもりだからね」

「ちゃっかりしてるね。ところで仕事は何してるんだ。給料は安いとか言っていたけど」

「ああ、便利屋さ。ちょっとした道具の修理をはじめとして、炊事、洗濯、掃除、郵便物の配達、伝言、買い物、とにかく何でもやってるから、是非私を利用して下さい。料金はその都度話し合いで決めるんだ。

 どちらかと言えば夜の方が商売になるもんで、昼は寝ていて、夜にあちこち動き回っているんだよ。ただ、気づいているかねえ、この島では携帯電話のたぐいは使えないってことに」

「あっ、言われてみれば確かにウヅキさんも使ってなかったし、販売店もないよね」

 タンポポに言われるまで気付かなかったことにユキオは少しショックだった。


「何故携帯電話が無いのかはまた明日のお楽しみにしてくれよ。それでその、なんか仕事は無いかな。肩が凝っていたらマッサージもするよ」

「いや、今のところは特にないな。それと、今日の朝八時で俺はここを出ていくことになるけどね」

「ここを出ていく?」

「つまり退院するんだよ。だから当分会えないかも知れない」

「えーーーっ! つまんないな。………あ、あのさ、退院してからでも来たらいいじゃないか、別にここは誰が来てもいいんだからさ。外からの入り口は病院だけなんだけど、厳しい規制なんかないんだからさ」

 タンポポはいかにも残念そうだった。


「妖鬼様、ここにいらしてたんですか、ずいぶん探しましたわよ」

 幾分呆れ気味の表情をしたウヅキが立っていた。


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