43 特別レストラン(3)
43 特別レストラン(3)
ユキオはクレイに褒められたことより、クレハも恐らくは捕まったらしいと知って安堵していたが、
「事件の容疑者で有名なのはちょっとねえ………」
と、クレハには一切触れなかった。
「ところであのう、妖鬼さんって呼んでいいのかしら?」
クレイは真顔になって話題を変えた。
「ええ、まあ、それでいいですよ。そのクレイさんはクレイさんでいいんですか?」
妙な聞き方だったが他の聞き方を思いつかなかった。
「ふふふふ、ここでは私、ユキノなんですよ。皆さんがおっしゃるには、純白の雪の野原の様に綺麗な肌だって言うので、調子に乗ってユキノにしたんです」
「えっ、ユキノですか………」
ユキオはちょっとドキリとした。
『俺の本名と一字しか違わない。それにユキオとユキノ、ゴロもやけに似ているな。ふう、しかしまあ、偶然に過ぎないのだろうけどね』
勿論、本名を名乗る訳にもいかず、更に話を聞き続けた。
「ああ、そうそう、もう一人、ユメカちゃんも助かったんですよ。彼女、私にくっついて来ていたので、結局二人まとめて天下グループのお世話になっちゃいました。
勿論それは裏のお話。表向きは天下グループは私達とかかわりは無いことになっているのよ。間違っても、私達が天下グループに助けられたなんて言っちゃだめよ」
「はい、勿論です。そのう、ユメカさんは改名したんですか?」
ほとんど忘れていた名前だったが、話したがっている様なので、少し聞いてみた。
「ええ、彼女は今はミユユ、なんです。二つのユは彼女の元の名前と私の今の名前のユから来ているとか言ってました。でもユユじゃ変だからミユユにしたとか」
「へえ、何となく、らしい感じですね。ところで彼女は今は、姿が見えないみたいですが」
「今日は非番なのよ。会いたければ明日来れば居るわよ。もっとも明日は私が非番でお休みですけど」
「いや、特に会いたいとかじゃないですから別にいいです」
そこで一瞬話は途切れた。話したいことはたくさんあるのだが、何から話せばいいのかちょっと迷っていた。互いにそうだったのだ。
その時、外からすごい音が聞こえて来た。医務室の方の音はほとんど聞こえないが、外の音はかなりよく聞こえるようである。
「バタバタバタバタ………」
「え、な、何ですか?」
「ああ、来たわね。大型ヘリの到着よ。一度に二百人くらい運んでくるのよ。様々な物資と一緒にね。私達もあの大型ヘリでここにやって来たのよ。
多分妖鬼さんより私達は三時間くらい早くここについたと思うけど、大型ヘリが飛び去って一時間くらいでジェットヘリがやって来て、お客様がやって来たとか、テレビに出ている人だとか、一杯噂があったわ」
「そうか、俺が、来たことはみんな知っていたんだ」
「ええ、ほら見て、たくさん人が降りて来るでしょう?」
確かに後から後から、次々に降りて来る。通常は暗いのだが、ヘリの到着に合わせてライトが明るく照らしている。真昼に近いくらいの明るさだった。
それでも、特別レストランからは数百メートルくらい離れているので、降りて来た者たちの年齢や性別などははっきり分からなかった。
「今回はどういう人達が来たのかしら。私達には詳しいことは知らされることが無いからよく分からないわね。妖鬼さんの時が唯一の例外だったみたい」
「例外ですか、ふうん。それにしてもこんなにたくさんの人が運ばれて来て、泊まるところがあるんですかね」
「それは大丈夫よ。大きな声じゃ言えないけど、地下にすごい設備があるらしいのよ。千人でも二千人でも軽く収容できるらしいわ」
ユキノは声を潜めて言った。
『ふう、成り行きに過ぎないとはいえ、こんな美人と親密に話が出来るのは悪い気はしないな。しかし、このユキノという女性は、何と性格が良いのだろう。
………この人にだったら、本当の事を打ち明けてもいいかも知れない。まあ、もう少し様子を見てからにするけどね。チャンスがあったらいつかは』
地下の施設の話に驚きはしたが、それ以上にユキノに親しみを感じていた。いや、信頼感がぐんと増したと言うべきだろう。その信頼感をさらに増す言葉をユキノは語りだした。
「ところで話は違うのだけど、あなた本当にあの二人の女子高生を殺したの? 私にはちょっと信じられないんだけどな」
相変わらずユキノはひそひそと話す。話の内容から仕方のない事だったが、ユキオにはそれが嬉しかった。
「ふうん、説明に困るんだけど、………俺には殺した記憶はないんだけどね」
話を嘘にならないようにもって行こうとした。




