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 38 剛毅(1)

                      

                    38 剛毅(1)


「えっと、ここ、お寿司はあるのかな? スイーツ研究所からここまで考えてみると、お刺身とかお寿司とかの生ものは一度も食べてなかったんだよね」

 ユキオはウヅキにあれこれ言わせないように、自分の食べたいものを言ってみた。


「確かあるはずよ。ええと、メニューはああ、あったわ。そうねえあたしも久しぶりにお寿司にしようかな。この特上の五人前の桶に入った寿司が良さそうね。これを二人で仲良く食べましょうよ」

「ああ、確かにおいしそうだけど、値段は五万イエンだよ。もっと安い奴で………」

「大丈夫任せて。私はそれくらいは平気なくらいのお給料を貰っていますからね、ああ、あの、この特上の桶寿司一つ」

「はい、かしこまりました」

 そばに来ていたウエイターが注文を受け取って去って行った。


「お待たせいたしました。特上桶寿司で御座います、ああ、それとお茶で御座います」

 ウエイターが二人やって来て、一人は寿司をもう一人はお茶を運んで来た。ネタは新鮮で酢飯の味付けも上々。握り具合も丁度良く、まさしく絶品であった。


 しかし寿司五人前でも二人の胃袋には少々物足りず、その後、ラーメンの大盛りを追加して締めくくった。

「ええと、ワリカンで行くんだよね?」

 ユキオはおごって貰うつもりはなかった。


「心配性なんですねえ、妖鬼様は。あなたの飲食代は全て天下グループが支払いますから大船に乗ったつもりでいて下さい」

「ああ、そうなんだ。じゃあ、お言葉に甘えておきましょう。じゃあ、そろそろ」

 二人が帰り支度をし始めた時だった。


「ウヅキさん、こちらが噂の妖鬼さんかい?」

 数人の男のグループのうちの一人が声を掛けて来た。背も高く相当にごつい体形をしている。

「ああ、これは剛毅ごうき先輩。お久しぶりで御座います。はい、確かにこちらが妖気様。あの、妖鬼様、こちらが四天王のひとり大開だいかい剛毅さんです」

 ウヅキはかなり警戒している。剛毅に何か思惑がありそうなのだ。


「噂によれば、ウヅキさん、あんたが手もなくひねられたそうだね。だとすれば是非一手ご教授願いたいものだねえ。幸い、すぐそこに舞台がある。

 様々なパフォーマンスにも耐えられる設計になっているらしいから、男二人が五分くらい格闘したって壊れることはないだろうと思うけどね。どうだろう、昼食も終わって腹ごしらえは十分だろう。

 軽くひと汗流してみませんか。まあ、私なんざ、あっという間にやられてしまうかも知れませんがね。どうです、やってみませんか」

 にやにやしながら言うその目の奥に絶対の自信が見え隠れしている。


「ああ、でも、これから色々とやることが御座いますので、対戦はまたこの次ということにしたらどうでしょうか」

 ウヅキは何とかして止めさせたかった。どちらが勝っても禍根が残る気がするのだ。


「短い時間だったらいいですよ。まあ、せいぜい3分くらいなら」

 ユキオは周囲の視線が気になっていた。もう、自分の強さが噂としてかなり広まっているらしいのだ。


『多分、伊香来君が漏らしたんだろうな、俺とウヅキさんの対戦の様子を。まあ、それは仕方ないとして、今ここで逃れても、しつこく付きまといそうだし、後になればなるほど、騒ぎが大きくなりそうな気がする』

 それくらいだったら、今、勝負しておくほうがむしろましだと考えたのである。


「あ、あの、妖鬼様、や、止めた方が」

 ウヅキは勝ってしまうことをむしろ恐れていた。負けて黙って済ませておく連中ではない。自分以外の四天王達は肉体を機械や薬品を使って改造してでも勝とうとする連中なのだ。

 それらは極秘になっているので確証はないのだが、人間離れしている点では妖鬼と同類なのである。しかし、妖鬼は軽く引き受けてしまった。


「いあや、すぐ終わりますから、じゃあ、舞台上で。でも、服がこれではちょっと」

「はははは、そういうこともあろうかと、こっちでちゃんと支度してありますから。じゃあ、一緒に着替えましょう。まあ、用意してあると言っても、単なるジャージなんですがね」

 剛毅とその仲間らしき連中は妖鬼を取り囲むようにして別室に消えた。男ばかりなのでウヅキはついて行けなかった。間もなく剛毅と妖鬼はジャージ姿で現れた。


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