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 31 動画(3)

 

                   31 動画(3)


「同じ場所は現在どうなっている?」

 ユキオには最新のテレビがパソコンと一体化していて、口頭での要求にこたえてくれるらしいことが理解できていた。


「ああ、今は何もないんだな」

 映し出されたスイーツ研究所の場所には更地さらちのみが映っている。

「一週間前は?」

「残念ですが、そこまでの対応はしておりません。前に見た映像と、今回の映像との間の映像は御座いません」

 テレビは一週間前の映像が無いことを伝えた。


「それじゃ前の映像に戻してくれ」

「承知しました」

 再びスイーツ研究所の空からの画像が現れた。


「空から見るのは今回が初めてだけど、俺はここに監禁されていたんだ。ただそれ以前の記憶がないんだよ。自分の名前さえ本当は知らなかった」

「えっ、記憶がない?」

「ああ、だからさっきの三つの動画のどれが本物かと言われても答えようがないんだ」

「ま、まさか。う、嘘じゃないんですわよね」

 ウヅキは信じられないといった表情である。


「信じて貰えないかも知れないけど、一つだけ奇妙なことがある。入れ墨なんだけどね」

 ユキオは何とか信用して貰いたくて、気にかかっている入れ墨を見せることにした。

「入れ墨? 入れ墨がまさか違うなんてことじゃないでしょうね!」

 ウヅキの目に疑いの表情が現れ出した。入れ墨はしかし、消すことも可能なので、違う入れ墨になっていたとしても、別人とは言えないのだが、

『妖鬼様のシンボルが違うものだとすれば、ちょっとおかしいわね。この男は偽物?』

 何となくそんな気もして来たのだ。考えてみれば、どことなく雰囲気が違う。ウヅキの疑念はどんどん膨らんでいったのだが、

「まあ、これを見てくれ」

 ユキオは立ち上がって上半身裸になって、背中を見せた。


「えええっ!!」

 驚いたウヅキはしばらく呆然と立ち尽くしていた。そこには、くっきりと「妖鬼」の文字が、見覚えのある文字が、目の前にあった。信じられないほど黒々としている。


「ど、どうしたの、これは、普通の入れ墨じゃないわね。でもこんなの見たことない!」

 ウヅキの疑念は一気に吹き飛んだ。逆に信奉の度合いは更に深まった。


「ああ、なんて奇麗なんでしょう。ああ、美しい………」

 ウヅキは妖鬼の入れ墨とそれを背に持つ妖鬼の後ろ姿にすっかり魅入られてしまっていたが、

「間もなく正午になりますが、ニュースをお伝えいたしましょうか」

 テレビの言葉に我に返った。


「ああ、そうね、ニュースにして頂戴。あの、妖鬼様、宜しいでしょうか」

「うん、最新のニュースは知りたいからね」

 服装を元に戻して、ユキオは座り、ウヅキもその隣に座った。


「警察庁は、防衛省の協力のもと、指名手配の津下原陽気が通称天国島へ逃亡したと断定し、数日中にも、捜査のメスを入れる予定です。

 ただこの島には船での接近が難しく、ヘリコプターなどで空から捜査員を派遣するしか方法がありません。しかし、この島を管理している天下グループの会長、磁北じほく泰治たいじ氏は島への立ち入りを拒否する姿勢を見せており、予断を許さない状況となっております。…………」


「もう、俺がここへ来たことは完全に知られてしまったんだな。しかし、困ったね、裁判を受けろと言われても、記憶がないし、……」

「あの、スイーツ研究所に来る前の事は分からないの?」

「うん、気が付いたら、研究所のベッドに寝かされていたんだよ。その時点で自分が誰なのか、どうしてそこにいるのか全く分からなかった。

 俺は七人のごつい男達に連れられて、あの小屋に入った。脅されて、一人で入ったんだ、夜にね。間もなく警察がやって来て俺が逮捕されることは知らされていた。

 俺は大人しく捕まるかどうか考えたんだけど、その男達の話を盗み聞きしたことがある。ベッドに寝かされていた時にね。そいつらのひそひそ話から分かったんだけど、俺は捕まったらまず間違いなく死刑だって言っていた。

  そのことを思い出して、逃げ出すことに決めたんだ。小屋の屋根を破ってね。出入り口だと見張られていると思ったから、そうしたんだけどね」

 ユキオは虚実入り混ぜて話した。


「どうしたらいいのか、私にも判断出来ないのだけど、あの、上層部の人に、報告してもいいかしら。あなたを警察に売ることは無いと思うけど。その、良いかしら?」

 ウヅキはかなり判断に苦しんでいる。自分は格闘部では大幹部だが、天下グループ全体では上位の下の方クラスである。


「はい、別にかまいませんよ。本当はここへ来る前に、警察に捕まる覚悟はしていたのですから。いざとなったら、こっちにだって奥の手があります、あ、いや、何でもないです」

「えっ、奥の手。まだ何かあるんですか?」

 ウヅキは入れ墨の他にも何か秘密がありそうなことを感じ取っていた。


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