29 動画(1)
29 動画(1)
「わが愛する、孫、陽気よ。お前の心情はよく理解している積りだ。殺した奴らはひどい奴らだったのだろう?
お前は昔から正義感の強い奴だった。噂によればあの二人の女子高生は、ひどいいじめっ子だったとか。お前にも十分理はあるのだ。
世界一の弁護士を付けてやろう。自首さえすれば大丈夫、決して重い罪にはならん。今どこにいるのか私は知らない。
しかしこのテレビを見ていたのなら、何としてでも自首して来なさい。例え極悪非道な者と言えども、殺してはいかん。そのことはお前が誰よりよく知っているはずだ。
罪を償いさえすれば、お前は堂々と胸を張って生きていけるのだ。誰にも後ろ指など指させはしない。お前は私が、いや、わが津下原グループガ総力で守って見せる。
さあ、出て来なさい。自信を持って堂々と裁判を受け、主張すべきは主張して、判決の日を待ちさえすればよいのだ。決して重い罪にはならないはずだ。
最後にもう一度言おう、堂々と胸を張って自首して来なさい。決して悪いようにはしない。最高の弁護士を付けることは既に決まっているのだから。長々と失礼いたしました。では、父親の源気にかわります」
源内は熱弁をふるった。次に父親の源気が話したが、ぼそぼそと、自首を勧めただけですぐ終わった。
『ふん、ばかばかしい。呆れた茶番劇だな。しかし、父親の源気は脳の交換の事を知っているのだろうか? まあ、考えても無駄なことだな』
ユキオは不快そうにテレビの画面を見ていた。
「あの、何だか不愉快そうね。曲がりなりにも、おじい様とお父様よ。懐かしいとか思わないの?」
ウヅキは本当は予想通りの反応だと感じていたのだ。
「さあね。俺は知らんね」
実際ユキオは二人を知らないのである。
「ふふふふ、思った通りね。妖鬼様が、身内に、特におじい様の源内さんに反発していると知っているから私達はあなたを味方と感じていたのよ。
それはそうと、あなたにぜひ見て欲しい動画があるのですけど、ちょっと、食事時にはふさわしくないんだけど、もう、終わったからいいわね?」
ウヅキはチラッと掛時計を見てから言った。少し時間の必要な事なのだろう。
「動画ですか。残酷なシーンがあるということですか?」
「そうなのよ。でも、どれが本物なのかよく分からないのよね。有力なのが三本あるんです。どれにも、妖鬼様が映っているのですけど。すぐテレビ画面に出せますが宜しいでしょうか」
ウヅキの目がかなり真剣である。
『ふうん、俺が映っている動画が三本? どれが本物か分からないってどういうことだ? とにかく見るしかないな』
少し考えてから返事をした。
「うん、分かった見てみるよ」
「はい、じゃあ、妖鬼様の動画、その一!」
ウヅキの言葉に画面は直ぐ切り替わって、インターネットからダウンロードしたらしい動画が始まった。
「えっ、こ、これは、本当なのか!」
信じられないような光景だった。
「ボンッ! ボンッ!」
半裸の妖鬼が日本刀を振り回し、女子高生二人の首をはねている姿だった。場所は何かの工場の跡地の様である。辺りが明るいので、昼の映像らしいが、時刻ははっきりしない。
時間は十秒ほど。他に人影はなく、首をはねた音はあったが音声は無かった。少し不自然なのは女子高生が逃げなかったことだが、恐怖で足がすくんで動けなかった、とも考えられる。
「どうですか、身に覚えはありますか?」
「うーん、他のを見せてくれないか?」
ユキオは正直困った。当然ながら記憶にはない。ウヅキは困惑する妖鬼の姿を見て、
『ひょっとするとこれが本当なのかも。余りに残酷で、認めたくないのかも知れないわね』
そんな風に感じながらも、
「それじゃ二番目にします。妖鬼様の動画、その二!」
一番目と同様に、インターネットからのダウンロードされたらしい動画である。
「やめてよ、変態!」
「こんなことをして、ただで済むと思ってんの!」
今度のは音声が入っているし、他にも妖鬼の仲間らしい若い男や女が映っている。二人の女子高生は何かの柱に縛り付けられていて、裸にされ、性的暴行を受けた後、ナイフで刺殺された。
考えようによっては、一番目より残酷かも知れない。こっちの方はやや時間が長く十分ほどだった。
場所は室内だが、どこなのかは分からないし、昼か夜かも分からなかった。音声は殆どが二人の女子高生のもので、他の者たちの声はカットされている様である。
ただこの動画は所々抜け落ちているような印象があって、相当に編集が加えられているように思える。殺された二人の女子高生に切迫感が余りなく、演技の様にも思えるものだった。
「まさかこれじゃあ、無いわよね? でも、変なのよね。同じ女子高生が全部で三回も殺されるなんて。あの、もう一本も見ます?」
困惑の続くユキオの、ウヅキにとっての妖鬼の姿に何かの疑念を感じて、ウヅキは慎重に言った。




