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 28 自宅(3)

                      

                 28 自宅(3)


 例によってウヅキはユキオの右隣に座って食べている。なかなか豪快な食いっぷりだった。

「ええと、ニュースを見たいんだけど、『ニュース』と言えばいいのかな、テレビに向かって」

「はい、その通りよ。『ニュース』、それで、もっと詳しい言い方をすれば、そのチャンネルに合わせてくれるわ。例えば、『スポーツ』ほらね」


 確かに画面はスポーツニュースに切り替わった。

「へえ、なるほどね、じゃあ、『最新のニュース、事件』、あ、ありゃ」

 画面はユキオの予想通りのものになったが、そこには、ユキオのつまりは妖鬼のニュースが流されていた。しかも、防犯カメラに映っているのは紛れもなくついさっきまでの、帽子にメガネの自分の姿だった。


「ふふふふ、もうその帽子もメガネも役に立たないわね。その姿だと、お尋ね者そのものだもの」

 かなりのボリュームのビーフカレーを完食して、唇をティッシュで拭い、ウヅキは笑いながら言った。


「まあ、確かにね。せっかくの変装だったけど、もう無意味だな」

 ユキオはメガネをはずして、帽子の上に置き、残ったカレーを食べ続けた。ニュースは妖鬼の逃亡先を伝えていた。


「なお、容疑者の津下原陽気は彼の支援者と共に、ヘリコプターで南方に逃れた模様です。この逃亡には天下グループの関与が噂されております。

 その噂が事実であるとすれば、天下グループの本拠地、天下グループ島、通称天国島、への逃亡が有力視されることになります。警察庁では、逃亡先の特定の為に、防衛省に協力を要請した模様です……」

「あれ、もうばれちまったのかい。こりゃまずいねえ」

 ウヅキはちょっと渋い顔になった。


「ここって、天国島っていうのか?」

「はい、まあ、通称ですけど。正式名称は、天下グループ本部であって、島、じゃないんだけどね。

……でもね、妖鬼様、ミソカさんも言いましたけど、たとえここにいることが分かっても、簡単には手を出せないんです。

 ここはいわば要塞なんです。ここには武器はありませんから、通常の兵器による攻撃は出来ません。逃げ場がありませんから、催涙ガスも使えません。

 もし使ったら、国際的に非難の嵐になるでしょう。出来るとすれば兵糧攻めぐらいかしら。でも大丈夫、ここには十年分の食料が常時確保されていますし、食料の生産工場もありますから。

 その気になれば二十年でも三十年でも粘れますわ。その間に人道支援をお願いして、更に年数を伸ばすことも可能です。事実上、日本政府と言えども手出しが出来ないんです。ああ、のどが渇きましたね、アイスコーヒーにしましょうか?」


 ウヅキは通称天国島のいわば絶対の防衛力を一気に語って、のどが渇いたのだろう。ユキオの返事を待たずに、冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出してコップにあけ、テーブルに二つ置いた。その他に、ミルクやガムシロップの入った容器をテーブルに置き、更に、角氷をコップに五、六個ずつ入れ、

「氷を先に入れるんだったわね。でもまあ、いいわよね。ミルクとガムシロップはどうぞご自由に」

 言いながら、ストローを手渡した。 


「ああ、どうも。いや、美味しいね。……、でも、何か別の方法とかないのかな。例えば、たくさんのヘリコプターでやって来て、大人数で一気に制圧するとか。

 特殊な船で島を取り囲んで、足場を作り、崖を登って、大勢で、やはり、一気に制圧するとか。まあ、その他には、飛行船を使う手もあるし、あるいはまた、パラシュートの大部隊で、とか」

 ユキオは考えられる限りの方法を言ってみた。


「へえ、そこまでは考えなかったわ。でもそれって軍隊の領域よね。日本政府は軍事力を行使できないはずよ。仮に出来るとしても、かなり時間が掛るはず。

 きっと憲法の一部を変えなければならないはずよ。つまり出来るとしても、二年や三年は掛るわね。でもたった一人を逮捕する為にそこまでお金を使えるのかしら?」

「なるほど、俺一人を逮捕するのに莫大な金が掛るとなれば、国民の反対も少なからず出て来るということになる訳か」

「そうよ。あら、妖鬼様のおじい様だわ」

 テレビの画面に、苦渋の表情を浮かべる津下原源内の姿が大きく映し出されたのだった。


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