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 27 自宅(2)

 

                    27 自宅(2)


「あの、そこに座ってくつろいで下さい」

 床は洋風で靴は脱ぐ必要が無いようである。部屋の造りもどこか洋風で、戸は全てドアタイプになっている。ユキオはウヅキに言われるままに、居間に入って、ソファに腰かけた。中央付近にテーブルがあり、その向こうには大型のテレビがでんと据えられていた。


『そういえば、ここまですべて靴は脱がなくてよかったよな。俺の住んでいた地方都市じゃ、まだそこまで開けちゃいないけどね。しかし、まずいな、ちょっと腹が減って来た。

 今朝食べた定食だけじゃ本当は足りなかったんだよな。でも、お替りはちょっとしずらかったし。今は、ああそろそろ十時半か。ううむ、どうしようかな……』

 テレビの上の方にある掛け時計で時刻を確認した。ユキオは本当はかなり遠慮していたのだ。助けられた身なので、わがままは言えないと思っていた。


「しばらく、外は歩かないから、帽子を脱がれてはどうですか。あのう、それとまだ少し早いですけど、お昼に致しましょうか? それともお風呂に入ります?」

 ウヅキは落ち着かない様子で、なにかと話しかけてくる。ユキオは帽子を脱いでソファの片隅に置いた。


「ああ、そうだな、その、昼食にしてもらえるとありがたいんだけどね」

 ウヅキの言葉は渡りに船だった。ただテレビのスイッチの入れ方が分からなかったので、

「ええと、テレビはどうすればスイッチが入るんだ?」

 リモコンをチラチラ探しながら聞いてみた。


「ええと、先ず、これからすぐお昼に致しましょう。それとテレビは口頭でスイッチが入るわ。テレビに向かって、こんな風に言えば、『テレビ、スイッチ』、これでスイッチが入るわよ」

 確かにすぐに画面が現れた。


「消す時はやはりテレビに向かって、『テレビ、消す』でいいのよ。まあ、テレビ、オンやテレビ、オフでも、良いわよ。昔と違って十分に融通が利いて、それらしい言葉を言えばちゃんと理解してくれるわ。

 ああ、それで、昼食のメニューは何にしましょうか。私としてはビーフカレーがいいのですけど。これはちょっと恥ずかしいんだけど、さっき食べた定食じゃ全然足りなかったのよ。

 こう見えても私はアスリートですから、普通の人の三倍は食べないと、身が持たないのよ。言い訳がましいけど、さっき咲川くんをノックアウトしたのも空腹でイライラしていたからなの。

 あれはちょっとやり過ぎたと大いに反省しているのよ。それでその、ビーフカレーの大盛りを私は食べようと思うのですけど、妖鬼様もどお、大盛りで」

 空腹の度合いがかなり強いらしく、言いたいことを一気に言った感じである。


「はははは、何か、その点は俺と一致しているみたいだな。俺も足りなかったんですよ、あの上品な定食じゃね。それじゃ、ビーフカレーの大盛り、お願いします」

 ユキオはほっとした。しかしちょっと不安もある。

『ウヅキさん、料理は出来るのかな? 無理そうだな……』

 その勘は的中した。


「十分で出来ますから、テレビでも見てお待ちください」

 そう言いながら、冷蔵庫から、パック四個を取り出した。


「ライスのパック二つとビーフカレーのパック二つよ。どちらもビッグサイズ。これを温めさえすれば出来上がりよ。あとは皿に盛るだけだから簡単に出来るわ。

 私、掃除、洗濯、炊事、全部苦手なのよ。でも今は便利になったわ。炊事はパック詰めのを温めればいいだけだし、掃除はお掃除ロボットがやってくれるし、洗濯はクリーニングの人が毎日寄って行ってくれるから、その人に頼めばOKだし」

 鼻歌交じりにそんなことを言いながら、パック専門の調理器具にライスとビーフカレーを別々に挿入してスイッチを入れた。数分で暖まり、それらを皿に盛りつけて、調理終了である。


「お待ちどうさま。どうぞ召し上がれ」

 引き出しから、スプーン二本を取り出して、一本をユキオに渡し、

「いただきます」

 すぐに食べ始めたのだった。


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