26 自宅(1)
26 自宅(1)
「あ、あのう、それで今日はどのようなご用向きなのでしょうか」
多良橋は恐る恐る聞いた。
「ああ、ただの見学よ。こちらの妖鬼様は今日初めてここに来られたので、ざっと、ここの施設を一緒に見て回る様にと、ミソカさんから指示を受けているのよ。
だから、お茶を飲んだら失礼します。……でも、少しもったいないわね、妖鬼様には是非、ここの訓練を多少なりともお見せしたいわね。どうかしら、指導員を特別室に呼んで、少しお見せできないかしらね」
彼女はいわば大幹部なのだ。大幹部のお願いでは断れない。
「はい、承知いたしました。それではこうされたらいかがでしょうか。時間的に今は半端で御座いますから、その、指導員の方々の都合もございますので、昼食休憩後の午後二時からではどうで御座いましょう。
それでしたら、計画変更も容易なのですが。ご承知の通り、ここのカリキュラムはかなりシビアで御座いまして、余り急には変更が難しいのですが……」
多良橋は冷や汗をかきながらも必死に、自分達の立場も考えてほしいと訴えていたのである。
「まあ、それもそうね。それじゃ、午後二時、特別室に、主力メンバーを集めておいてね。そうねえ、八人でトーナメント戦をして貰うわね。優勝者は私と戦ってもらう。
もし私に勝つか、引き分けでも、クラスを一つ上げてあげるわよ。その条件でどうかしら。ああ、でも、試合数が多くて、ばてちゃうかも知れないわね。それじゃ四人に絞ることにしましょう。
有力メンバー四人、集めといて。妖鬼様には是非、私達の凄い所を見ていただかないと。さっきは勝ったらとか、引き分けたらと言ったけど、善戦したら、も含めておくわ」
ウヅキは大サービスのつもりで言った。ここの指導員ではウヅキに勝てる者はまずいないことは分かっていたからである。
「それじゃ、またあとで。さあ、妖鬼様参りましょう」
「今度はどこへ行くんだ。ああ、その、多良橋さん、どうも、お茶、有難うございます」
「はい、今度は午後二時に、特別室でお会い致しましょう」
多良橋は笑顔で見送ったが、
「さて、大変なことになったぞ。四人を選ぶ、こりゃ難問だ」
選ばれた者は良いが、選ばれなかったものは不満かも知れないからである。数十人いる指導者の中から四人を選ぶのは至難の業なのだ。しかし、
「何としてでも午前中に決めなければ」
小声で呟きながら、応接室を後にした。
「さあ、次は妖鬼様のご自宅にご案内いたしますわ。これから当分住むことになる、その、わ、私と一緒に住むお部屋ですからね」
ウヅキは恥ずかしそうに言った。
「一緒にって、別に、何もないと思うけどな、ははは」
ユキオはウヅキが何か特別の事、男女の関係に発展する、と考えているらしいように思えて仕方がないのだが、あえてエッチな話には言及しなかった。くだけた話をするほどには信用していないのだ。
『どうも何か隠しているような気がするよな』
その感じが抜けないのである。
「ああ、。ここですよ」
外を五分ほど歩いて到着した。食堂からは結構離れている。
「へえ、なんか、普通の住宅みたいな感じだな」
「その通り、住宅なのよ。でもちょっと、普通じゃないところもあるけど。今、鍵を開けますからちょっとお待ちください。……はい、開きましたどうぞ、中へ」
二人が中へ入ると、明かりが自動で点灯した。
「照明設備は全自動なのか?」
「はい。照明ばかりでなく、冷暖房も全自動です。でも、もし、もう少し暑い方がいいとか、涼しい方がいいと思ったら、天井に向かって、『もう少し暑く』とか、『もう少し涼しく』とか言って下さい。
センサーが天井に付いておりますから、1度刻みで調節しますので。具体的に、『湿度50パーセントに』、とか、『気温23度に』とか言っても良いですわよ」
かなりのハイテク住宅の様である。




