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 21 天国島(1)

 

                    21 天国島(1)


 ジェットヘリの到着した島は島としては小さい方だったが、それでも競技場が五、六個くらいは入る大きさがあった。

 島のそこここにコンクリート製の頑丈そうな建物が幾つかあり、木の生い茂っている場所も何か所かあったが、大半は舗装されていて、なにか人工的な作りものの島のような印象を受ける。


「さあ、どうぞこちらへ。ああ、そうそう、お腹が空かれたでしょう。私共も実は空腹でして、宜しければ、これから食堂で、食事に致しませんか」


 パイロットのハヅキとウエートレスのウヅキも、一緒にヘリから降りてほぼ無言で歩いていたが、老人はユキオの様子を気遣って言った。


「は、はい。そうして貰えれば助かります。食堂というのはレストランの事ではないのですか?」

 事情が分からなかったので念の為に聞いてみた。


「はい、ここには、レストランはありません。ただまあ、食堂と言っても、レストランと殆ど一緒なのですが、通常の食事はすべて無料です。しかしアルコール類などは有料なのですよ。

 それと念の為に言っておきますが、ここにはタバコはありません。詳しいことは、食堂で食事をしながらお話し致しましょう。ああ、そこですから」


 二、三分で殆ど人気のない食堂の建物の中に入れた。ただ、ユキオには外にいる連中の事が気になった。大半がジャージ姿で、何やら訓練を受けているのである。数百人はいるように思えた。


『かなりハードなトレーニングみたいだな。一体ここは何なのだ? 助かったと思ったけど、何だか一癖ありそうだぞ……』

 ちょっと嫌な予感がした。


「日替わり定食で宜しいでしょうかみなさん。まあ、それ以外は有料なのですが……」

 老人は軽く微笑みながら、他の三人を見渡した。誰も異論はなかった。 

「それじゃ、日替わり四つ」

 四人は、何となくヘリコプターの席と同じような配列で座った。ユキオはウエートレスのウヅキと並んで座り、向かい側に老人とパイロットのハヅキが並んで座った。


「はい、お待ちどう。ミソカさん、いいワインがあるんだけど、今日は飲まないのかい」

 定食を運んで来た、食堂のかなり太ったおばちゃんが、老人に声を掛けた。

『ミソカというのか、このご老人は……』

 やっと、老人の名前が分かった。


「はははは、おばちゃん、せっかく、改まって自己紹介しようとしていたのに、そんなにあっさり名前を言われちゃ、こっちの立つ瀬がないよ。はははは」

「おや、まあ、そりゃ悪かったわねえ。でもそこまでするほどの事かい、たかが名前なのに。それじゃまあ、ごゆっくり、なんて言わないよ。わたしゃ忙しいんだからね。さっさと食って、食器を返して下さいよ」

 おばちゃんは迷惑そうに、しかしとげのない言い方をした。如何いかにも慣れた感じのやり取りである。


「ああ、素早く一時間ぐらいで返しますから。朝寝でもしといてください」

 今度はパイロットのハヅキが皮肉を冗談めかして言った。


『へえ、仲がいいんだな。この会話からは悪意は感じられないけどね。しかし……』

 ユキオは警戒心を完全には解かなかった。


『このさりげない雰囲気は何だか、スイーツ研究所に似ているぞ。あいつらの名演技に俺も含めてみんなだまされたんだからな。百パーセント疑う必要はないけど、三十パーセント位は疑いの気持ちを残しておかないと!』

 過去の苦い経験がユキオを用心深くさせていたようである。 


「それでは、いただきましょう。……、ええと、さっきのおばちゃんの一言で私の名前はばれてしまいましたが、私は、ミソカといいます。

 正式には雁木がんぎミソカといいます。ああ、そうですね、この際ですから、各自自己紹介をいたしませんか。簡単で宜しいですから」

 ミソカは楽しそうに食事をしながら、まず自らの紹介を始めた。


「まあ、ハヅキ君やウヅキさんにはお分かりと思いますが、私、ここではナンバー8(エイト)などとも呼ばれております。

 妖鬼様専属の付き人、正確に申せば、その指導係の役割を仰せつかっております。今後ともよろしくお願いいたします」

 ミソカは一時箸を置いて、深々と頭を下げたのだった。


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