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 20 再び逃亡(3)

                        

                    20 再び逃亡(3)


『しょうがないな、……短い人生だったな。今更注文したところで、一口も食えずに拘置所とかに入ることになるんだろうな。あれ? 未成年者の場合はどうなるんだっけ?』


 自分が逮捕された後のことをあれこれ考えていると、

「済みません、食事の場所が変更になりましたので、移動をお願いしたいのですが」

 呼び出しのボタンを押してなかったのだが、例の体格のいいウエートレスが現れて妙な事を言った。


『そうか、ここで逮捕はまずいから、他へ行ってくれという訳か。はいはい、分かりましたよ、どこへでも行きますよ』

 ウエートレスに案内されるままに後に付いて行った。


「申し訳ないのですが屋上になります。あの、少し急いで下さい」

 何故だか分らなかったがウエートレスは早足になった。階段になると、もうほとんど走っていた。階下の方から、ロボット犬の鳴声がかすかに聞こえて来る。


『いよいよ来たな。しかし、屋上で逮捕なのか?』

 妙だと思いながらも、一般のお客に迷惑が掛らないようにする配慮だと信じていた。


 間もなく、屋上に出るとすぐウエートレスは扉に鍵を掛け、更にはシャッターまでおろしてしまった。

 そのシャッターにも鍵を掛けたので、めったなことでは開けられそうにない。出入り口はもう一つあったが、そちらの方は既にシャッターが閉められている。


「え、へ、ヘリコプターがあるぞ!」

 ユキオには何がなんだか訳がわからなかった。しかも、目の前にはヘリコプターがスタンバイされている。そのそばに、白髪の老人が一人立っていた。事情を知っているらしいその老人に話しかけてみる。


「えっと、これは、その、どういうことなんですか?」

「妖鬼様、どうぞこれにお乗り下さい。私共はあなた様の味方、いえ、信奉者なのです。この様な事もあろうかと、私共の系列のホテルに泊まられて以来、密かに準備していたのでございます。

 こんな日が本当に来ようとは! いやいや、話の続きはまたあとに致しましょう。私共の隠れ家にお連れ致しますので、ささ、早くお乗りください」

「あ、ああ、何だかよく分からんが、そうさせて貰うよ。で、あなた方は?」

「勿論、私共もご一緒致します。このヘリコプターは四人乗りで御座いますから」

「うん、分かった」


 ユキオは言われるままに後部座席左側に乗り、その右隣りにウエートレスが、パイロットはその前の席、その左隣には白髪の老人が乗り込んだ。

 ロボット犬は屋上の出口付近まで来ているのだろう、かなり鳴声が大きかったが、当然ながら屋上には上がってこれなかった。


「ベルトを締めて下さい。このヘリコプターはいわゆるジェットヘリで御座いますので相当にスピードが出ますから、安全のためにぜひお願いいたします。ウヅキ手伝ってさしあげて」

「はい、それでは、ちょっと失礼いたします、……はい、これで大丈夫。出来ました」

「宜しい、それでは、ハヅキさんお願いします」

「イエッサーッ! ええと、最初は垂直に上昇しますんで、その、雲の上に出ますから」

「ギュ-----ン!」

 

 ヘリコプターは猛スピードで上昇して行く。飛行機に乗ったことはあったが、ヘリコプターは初めての経験だった。


『へえ、これがヘリコプターなんだ。ちょ、ちょっと怖いな』

 垂直上昇は経験がなく、ユキオは怖くて体を動かせなかったが他の連中は慣れているのだろうか、いたって平然としている。間もなくヘリコプターは数千メートル上昇したところで雲の上に出た。


「へへへ、これで、下からはほとんど見えませんからね、どっちの方角へ向かったかなんて、簡単にはわかりゃしませんよ。じゃあ、水平飛行に移りますよ」

 パイロットのハヅキは説明しながら、操縦している。ひどく楽しそうである。ジェットヘリは南へ南へと向かって行ったのだった。

 

 しばらくすると、雲が晴れ、下界は全面海だった。やがて小さな島が見えて来た。

「あれが私共の島で御座います。周囲は断崖絶壁、しかも、ごつごつした岩の浅瀬が多々あって、船では近寄れません。唯一の交通手段がヘリコプターな訳でして、我々の許可なく、島には入れないのですよ。

 どうしても来るということになれば、戦争するしか御座いません。しかし、日本には平和憲法という有難い憲法があって、軍事力は行使できません。つまり憲法が改正されない限りは安心という訳で御座います」

 白髪の老人は、自信たっぷりに語った。間もなくジェットヘリは島の中央付近に到着した。 

                                   

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