カカオ豆を炒って粉にし、砂糖と牛乳と、アフリカの少年たちの汗と血と涙と、そして少女の愛を加えたもの
今年もバレンタインものを一つ。ニヤニヤしながらお読みください。
「ねえ君はさー。」
さくさく歩きながら隣の仲のいい同級生女子が言う。
「何だ?」
「もう少し、なんと言うか、アレだ、直感的に動けないの?」
「要点を整理して言ってくれ。分かりづらい。」
「ほらーまたそういう事いうー。」
「お前が直感的過ぎるんだよ。脊髄反射で考えてるのか?」
「むぅ~。」
いつもの会話だ。なんのこたぁない。こいつは非論理的で、俺は論理的に生きてるだけだ。そのくせなぜか仲いいんだけどな。
「ねぇ、今、楽しい?」
「ああ。」
「なんで?」
「何でって……あ。」
「ふっふふ~。一本とった~♪」
「なんてこった……俺としたことがこんな脊髄思考生物に一本取られるとは・・・」
「……さりげなくだいぶ失礼なこと言ってるよね。」
「ごめんなさい。」
「はやっ! …ところでさっ。」
「何だ?」
「今日の数学のプリントの最後の問題。あれどうやって解くの?」
「えっとな…あれは直線BCとPRが平行だから……」
いつもこんな感じだ。たいていこいつのペースで話が進んでしまう。そして、いつのまにか家の前まで来ている。
「あ、そうだ。」
「何だ?」
「はい、これ。」
何かの小さな包みを渡してきた。
「何だ? これ。」
「……冗談?」
「何がだ?」
「…………じゃないみたいね。今日の日付は?」
「日付? 二月の、十四日…………あ。」
「今日を忘れるとか何よ。鈍感すぎよロミオさんだよ。」
「なんだよそれ。シェイクスピアか?」
「もともとそうなんだろうけど、このネタは通じないか。」
時々コイツはこういうよくわからない事を言う。
「じゃあ、この中身はカカオ豆を炒って粉にし、砂糖と牛乳と、アフリカの少年たちの汗と血と涙を加えたものか?」
「…何それ。」
「社会の資料集の片隅に書いてあるだろ。ガーナとかでは子供が働かされてんだよカカオ農場で。で、チョコレートをこう呼んだりするんだよ。」
「そんなとこ見ないわよフツウ…ねえ、あんたのこと『ざつがくん』って読んでいい?」
「なんだそれは。」
「『雑学君』略して『ざつがくん』。」
「略かそれが。」
「うん。」
「まったく……好きにしろ。」
「わーい。あとさ、一つ付け加えるけど。」
「何だ?」
「砂糖と牛乳と少年たちの汗と血のほかに、あたしの愛もこもってるからね。毬亜とかがバラまいてるのとは違う、あんただけのために作った特別製なんだから。」
ふぅむ。欲しいなあ本命チョコ……
家族からと友チョコ同然な義理チョコくらいしかもらったことがないので……
ちなみに資料集(ビジュアル公民:とうほう)は本当で、ざつがくんもある女友達から言われてます。
他はフィクション、つまり結局話はすべてフィクションです。