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Messenger ~伝令の足跡~  作者: kagonosuke
第二章:スフミ村の収穫祭
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新しい日常 1)

 この国では、月の初めの1日から10日までを一つの括りとして、【デェシャータク】と呼ぶ。

 そして、11から20、21から30、31から40、その四つの【デェシャータク】が合わさって、一か月を形成していた。

 つまり、一カ月はおよそ40日。

 そして、月は【青】の月、【赤】の月、【黄】の月、【白】の月、【黒】の月と5つの色分けによる呼び方がされており、各色の月にはそれぞれ【第1】の月と【第2】の月があった。

 5つの色の月が2倍で10カ月。日数に換算すれば、1年は400日となる。


 さて、北の砦から森の家に帰って来たリョウの日常は、再び元の穏やかな流れの中に戻っていた。

 と言っても、全てが元通り、同じになった訳ではない。そこには、ささやかだが、以前とは違う変化が訪れていた。


 リョウは今、大量の書物の中に埋もれていた。

 さほど広くはない森の一軒家、その中でも一番の広さを誇る部屋は、何と言ってもガルーシャの書斎だった。

 壁一面に備え付けられた本棚には、それこそびっしりと上から下まで隙間なく様々な本で埋め尽くされていた。

 ガルーシャは自分の領域(テリトリー)に関しては、ある種、病的なまでに几帳面で神経質だった。本の背表紙は、歴史書から地理学、言語学、文化人類学的な他国の風土や文化、術師が扱う【術式】に関しての技術書等、新旧入り混じり、分野毎に綺麗に並んでいる。

 リョウは、この部屋に入る度に古い図書館の蔵書室に紛れ込んでしまったような錯覚を覚えた。

 思い浮かべるのは、勿論、本の背表紙にあるあの赤い【禁帯出】の(マーク)だ。

 古い本の少し黴臭い独特な匂い。それはどこか懐かしくも柔らかな郷愁を誘う香りだった。


 今、リョウは、術師になる為の勉強を始めていた。

 この場所には、ガルーシャが辿って来た道筋が残されていた。この途方もない大量の書物をただただ時の流れに任せて朽ち果てさせることだけはしたくなかった。

 元々、膨大な知識量を誇る博識の術師であったガルーシャのようになれるとは露ほども思ってはいない。だが、リョウとしては、この大量の書物―ガルーシャの汗と血と涙の結晶とも言える【蔵書類(コレクション)】を無駄にはしたくなかった。

 幸いにして生前、短い間だったが、リョウはガルーシャから度々、術を使うことに関しての手ほどきを受けていた。

 それは、ごくごく日常の事柄で実際の術師が扱うものとは程遠いものであったが、原理としては同じようだった。

 それからというもの、リョウの一日の大半は、ガルーシャが残した本から術師としての役割やら実際の技を学ぶことに費やされていた。


 一口に術師と言っても、その言葉がカバーする範囲は、とても広く、実に多岐に渡っていた。その中から、自分の得手・不得手を見極めながら、そして、自分がどういった方向性に進みたいのかを相談しながら探って行くことになる。

 リョウは、始め、眼前に広がるその余りに膨大な情報量に途方に暮れそうになった。

 だが、そのようなことを嘆いていても仕方が無い。

 ここにある書物は、それこそ術師になる為の修行を積んでいる者達にとってはきっと垂涎ものであるに違いないのだから。

 この国で、この世界で、生きて行く為の知識を得ると思えば良いのだ。そう考えることにした。

 そうすると自ずと道は開けてきた。

 それにリョウは独りではなかった。セレブロを始めとする森の獣達が、小屋に暮らす自分の無聊を慰め、力になってくれたからだ。彼らはとても心強い仲間達だった。

 寂しさなど感じる暇など無かった。


 リョウは、まず手始めに生活に密着した分野から手を付けることにした。その一つに【薬草採取】とそれらを利用した【薬作り】があった。


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