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Messenger ~伝令の足跡~  作者: kagonosuke
第五章:テラ・ノーリ
194/232

悪魔の罠

 ファーガス直々の些か強引な舞踏指導から解放された後、踊りの輪から抜け出したリョウの前にはここぞとばかりにユルスナールが待ち構えていて、拗ねたような恨めし気な視線でリョウを見下ろした。

 対外的には澄ましたような顔を取り繕ってはいるが、その瞳を良く見れば、そこにある感情はある意味雄弁だった。

 だが、幸いにしてその内面的変化はユルスナールの人となりを良く知る相手にしか分からなかったようなのだが、それはそれで十分面倒な話ではある。いい年をした大人がへそを曲げるというのも厄介な話だからだ。それが色恋沙汰から端を発していれば尚更である。

「随分と楽しそうだったな」

 開口一番、吐き出された含みのある言葉をリョウは軽く流していた。ユルスナールがファーガスに妬いていたとは思ってもいないようだ。

「もう、お義父(とう)さまったら、強引なんですもの。でも幸い、無様に転げることもなかったのでほっとしました」

 ―足を踏むことも無かったんですよ。

 少し誇らしげに邪気のない微笑みを向けられて、ユルスナールはほんの少しだけ罪悪感を覚えた。ここでリョウに八つ当たりをしたのでは余りにも情けないではないか―という訳である

 そんな男の内心の葛藤を汲んだのかは分からないが。

 リョウはユルスナールの傍に立つとそっとその手を取り、腕に体を凭せ掛けるように預けた。そして少し甘えるような仕草で擦り寄った。

「ルスラン、今度、教えてくださいね? 簡単なものからでいいので。もう、こんないきなりは懲り懲りですから」

 そう言って少し照れたように微笑んだ。

 男というものは、かくも単純な生き物である。

 その瞬間、ユルスナールの中に突如として形容し難いリョウへの愛しさが込上げてきた。この場で今すぐその華奢な身体を思い切り抱き締めたいという欲求が生まれた。

「ああ」

 そして、先程までの不機嫌さはどこへ行ったのやら。すっかり機嫌を直して微笑んだものだから、その現金さに直ぐ傍にいたシーリスやブコバルたちは無言のまま顔を見交わせると内心の可笑しさを堪えながらも肩を竦め合ったのだった。


 やがて、絶え間なく鳴り響いていた楽師たちの曲が止み、広間に招待客が集まり出した。ユルスナールの話では、これからこの祝賀会を主催した王族が挨拶に現れるのだという。そして国王(ツァーリ)の謁見があり、先の武芸大会で優秀な成績を収めた剣士たちに労いの言葉を与えることになっているのだそうだ。

 個人戦、団体戦で優勝を果たしたユルスナールと第七師団の兵士たちは、所定の場所に整列する為に玉座に近い広間の前方へと向かった。広間の前半分では、他師団の兵士たちも揃いつつあった。

 同じ色の詰襟の軍服を着た体格の良い男たちが静かに整列する様は、遠目にも圧巻だった。そして、その周りを色とりどりの晴れ着に身を包んだ招待客たちが囲む。広いはずの室内が急激に増した人口密度に狭く感じられた。

 リョウはケリーガルの妻、ダーリィヤと共に遥か後方の端の方に立っていた。知り合いは皆、軍人たちなので前方に集まっている。そして、軍部と深い繋がりのあるファーガスも現北の将軍を拝命しているロシニョールも夫婦共々同じく前の方へ行った。財務官であるケリーガルも近くへと移動したようだ。そして残されたのがダーリィヤとリョウだった。

 室内は独特な高揚感と緊張感に包まれていた。ざわざわとどこか落ち着かない空気が人々の囁き声と衣擦れの音、そして咳払いなどに漂っている。それだけこの国の(ツァーリ)の登場をここに集まる全ての人が心待ちにしていることが伝わってきた。王族はこの国を支える主柱でもある(たっと)き一族なのだろう。広間に張り巡らされた程良い緊張感は、これから現れる国王(ツァーリ)が畏敬の念を持たれていることの表れだろう。


 ざわざわと燻るように揺れていた室内が、不意に静まり返った。人々の話声がぴたりと止む。荘厳さえある深い沈黙の中、国王(ツァーリ)の登場を願う声が議事進行の高級官吏から上がった。

 広間前方にある大きな扉が開かれたと同時に招待客が一斉に頭を垂れた。男たちは最敬礼をし、女たちは膝を屈めて頭を下げ、淑女としての礼を取る。

 ダーリィヤに促されるようにしてリョウも慌ててそれに倣った。目に入った磨き上げられた石材ムラーモル(大理石)の床が、艶やかに天井から降り注ぐ数多もの発光石の明かりと広間に集まる人々の姿をぼんやりと映し鏡のように反射させていた。

 物音一つしないどこか厳かで張りつめたような沈黙。静まり返った室内に複数の足音が響き渡った。ゆったりとした男の重みのある硬質な足音。それに続くのは軽やかで小さな複数の足音だ。そして再び、雑音が消えた。

「面を上げよ」

 凛とした威厳ある声に集まった人々が一斉に姿勢を正した。リョウも同じように下げていた頭を上げ、遥か前方に立つ人影をそっと見上げた。


 そこには真っ白な詰襟の軍服のような衣装に身を包むこの国の最高権力者がいた。肩の片側にゆったりと掛けられた外套(マント)は、目にも鮮やかな明るい青色で白い滑らかな獣の毛で縁取りがされていた。左胸の部分には沢山の色とりどりの勲章のような飾りが付いていた。

 王は初老の域に入ると思われる齢の男だった。堂々とした威厳ある立ち姿であるが、良く見るとその顔立ちは柔和な印象を受ける。たっぷりとした口髭と顎髭が顔の表面を覆う。やや濃いめの灰色の髪には、所々白いものが混じり始めていた。

 (ツァーリ)を中心に居並んだ王族たちの背後には、青い大きな旗のようなものが掲げられていた。そこに描かれているのは、白い獣の姿だった。武芸大会時、審判が手にしていた旗にも同じような意匠が施されていた。そこに描かれているのは、悠久の時を生きるとされる太古の森の守護者【ヴォルグ】であるという。

「皆、今宵の一時を楽しんでおるようだな」

 柔らかで少し高めの声が軽やかに響いた。

「今宵は他でもない。先の武芸大会での我が軍の兵士たちを称え、労う会でもある。それぞれの勇敢なる戦い振り、実に見事であった。頼もしい限りだ。今後ともこの国の為、そして民の為、大いに励んでもらいたい」

 国王(ツァーリ)の慈悲深く寛大なる御言葉に各師団毎に整列した兵士たちは一斉に畏まった。

 それから団体戦で上位入賞した各師団へお言葉が下された。側用人の高級官吏が平たい箱を手に王の傍に控えた。その中には、今回の武勲を称えた小さな勲章が並んでおり、それを上位入賞の師団長に授与するのだ。

 (ツァーリ)はまず三位入賞となった第九師団と第五師団の長に歩み寄り、言葉を掛けながら勲章を授与した。周囲の招待客たちは入賞者を称え、盛大な拍手をした。そして、同じく二位となった第一師団長にも下される。

 そして最後に団体戦、個人戦共に優勝を果たした第七師団長・ユルスナールの番となった。

「この度は、盛大なる祝賀の儀にお招き預かり恐悦至極、重ねて御礼申し上げます」

 静かに騎士としての最敬礼を取った第七師団長に、国王は鷹揚に頷いた。

「随分と腕を上げたようだな。こたびの戦いぶり、実に素晴らしかった。今後とも我が軍の名に恥じぬよう精進せよ」

「は、勿体なきお言葉」

 そして慣例に則り、国王(ツァーリ)自らユルスナールの首に小さな勲章(メダル)を掛けようとしたその時だった。

「お待ちください!」

 広間中央から突如として一人の野太い男の声が沸き上がった。

「恐れながら申し上げます」

 その男は前方にやってくると王族が立つ舞台の直ぐ傍で片膝を突いて畏まった。

「なんだ?」

 勲章授与を止められた国王(ツァーリ)は、突然の闖入者を訝しげに見下ろした。そこには進行を中断されたことへの不快感が憚らずに表れていた。

 不測の事態に第一と第二の近衛の兵士たちが、素早く(ツァーリ)を守るべく傍に駆け付けようとしたが、国王(ツァーリ)はそれを無言のまま手で制した。

 突然、乱入とも言える不遜な振る舞いをしたのは、国の中央機関でも大臣の要職に就く有力貴族の一人、タラカーノフだった。

 (ツァーリ)誰何(すいか)にタラカーノフは、その場で朗々とよく響く声を張り上げた。

「恐れながら申し上げます。そこなる第七師団長ユルスナール・シビリークスには、この度、間者に通じ、我が国の重大な機密事項を他国に流しているとの嫌疑報告が監察機関より上がっております。そのような恥ずべき売国奴の疑いがある輩に(ツァーリ)御自らご厚情をお下しになる必要はないかと」

 その瞬間、音にならないどよめきが一斉に館内を駆け抜けて行った。動揺が集まった人々の間を高波のようにうねり揺るがした。

 皆、信じられないという顔をしている。それもそうだろう。第七師団長のユルスナールは、代々【北】の方位を守護する名家シビリークス家の三男で、品行方正、実直で真面目な仕事ぶりが定評だった。醜聞を流すこともなく、日々堅実(ストイック)なまでに己を律する騎士団の中でも鏡のような男である。そして、この国への忠誠心も(あつ)い。そのような立派な男が、斥候に通じ国を裏切るような行為を働いている。それは余りにも法外な寝耳に水のような出来事で、そのような嫌疑自体が掛けられることが到底信じられなかった。遥か後方に佇むリョウも動揺の余波に晒され、一体、何が起こったのか理解できなかった。

 突然の暴言とも言える大臣の主張にユルスナールの背後に立つブコバルがいきり立って声を上げようとしたが、ユルスナールはそれを制した。

「イリューヒン、それは(まこと)か?」

 王が監察機関の長を務める大臣の一人を静かに見遣れば、

「是」

 大臣は、深く一礼してから一言、言葉少なに肯定をすると先日そのような報告書が監察の方に届いたことを認めた。

 それが余計に人々の間に動揺を生んだ。単なる噂でも讒言(ざんげん)でもなく、報告が上がっているということは然るべき根拠と証拠があるということでもあるからだ。

「これへ!」

 タラカーノフの低い合図の声に広間の反対側の入り口から一斉に槍を手に武装した男たちが室内に突入してきた。そして、瞬く間に国王の前に立つユルスナールを囲んだ。その間、国王と王族たちの周りを警戒に当たっていた第一と第二の兵士たちがその身を守る為に盾となり王族を安全な場所に後退させて行った。

 突然の兵士と思しき男たちの乱入に招待客の中の婦人たちからは悲鳴の声が上がった。「何なのだ?」と誰何(すいか)する男たちの動揺もその声に表れていた。

「タラカーノフ殿、国王(ツァーリ)の御前ですぞ。お控えなされ」

 大臣という要職に就く男が謁見会場に武装した男たちを乱入させたという行為に、西の将軍が一喝した。

 野太い将軍の声に周囲に沈黙が落ちた。


「これは一体、何の真似ですか、タラカーノフ殿?」

 己が周りを取り囲む鋭い無数の槍の切っ先に、ユルスナールは静かにその原因となった相手を見据えた。ユルスナールの表情は冷え冷えと冴え渡り、一切の感情を失くしていた。

「おやおや、これは見上げた御人だ。面の皮が相当厚いと見える。この後に及んでお惚けになるとは」

 嘲笑するようなタラカーノフの挑発に、だが、ユルスナールは慌てることなく、奇想天外な言い掛かりをしてきた男を見た。

「一体、なんの話をなさっているのやら。どなたかと勘違いをなさっておられるのではありませんか? 誰しも寄る年波には勝てませんからね。冗談にするには些か行き過ぎています」

 珍しく憚らずに厭味を言い放ったユルスナールをタラカーノフは鼻で笑っただけだった。何の自信があるのかは知れないが、相当居丈高な態度である。

「この私に間者に通じているとの嫌疑が掛かっていると? 何を根拠にそのようなことを仰るのですか?」

 ―仮にもやんごとなき国王(ツァーリ)の御前。厳粛なるこの場を穢した罪は何よりも重い。そうではありませんか。

 国王(ツァーリ)の目の前での明らかな僭越行為は、見過すことの出来ない事態だ。不敬罪もいい所だろう。

 だが、淡々と相手の愚行を窘める言葉を吐いたユルスナールを前に、

「ああ、嘆かわしい。なんということだ! 貴公はすっかりあの女狐に籠絡されているようだ。今後、この国の行く末を支えて行くであろう若者が何たる不始末。情けなや」

 タラカーノフはやや芝居掛かった大げさな動作で天を仰いだ。

 そして、この突如として始まった前代未聞の告発に周囲の人々は声を上げることなく、じっとその成り行きを恐々として見守った。


 タラカーノフは、国王と周囲に集う人々をぐるりと見渡した。その姿は、やけに自信に溢れていた。

(ツァーリ)よ、この広間には日頃高潔と謳われるこの師団長を悪魔の道へ唆した不届き者が紛れ込んでおります。その者は我が国を探り、キルメク経由で隣国ノヴグラードに情報を流しております」

 近衛の兵士たちに守られた後ろで、(ツァーリ)が目を眇めた。

「なんだと?」

 その言葉にユルスナールは耳を疑った。余りにも突飛な言い掛かりだった。自分を足掛かりに他の誰かを引き出そうとしている。この男の矛先はどこに向かおうとしているのだろうか。


 ノヴグラードの間者という言葉に、先の苦い戦争の記憶を持つ人々が一斉にどよめいた。二十年近く前の辛酸を舐めたノヴグラードとの戦いは、スタルゴラドの人々の中に癒すことの出来ない深い傷を残していた。愛する人を亡くした者もこの場には大勢いることだろう。何よりも凄惨を極めた戦いから派生した恐怖は、直接的であろうとも間接的であろうとも当時国内に暗い影を落とし、幾ら拭おうとしても拭いきれない記憶(トラウマ)となっていた。

 先の戦以来、この国の人々はノヴグラードという言葉に敏感に反応した。時としてその反応は過剰すぎる程だ。

 周囲の空気が一気に剣呑さを増したのは気のせいではないだろう。

 周囲の人々の感情が徐々にユルスナールに不利な方向へと風向きを変え始めていた。何の根拠もない。だが、ノヴグラードという言葉はそれだけの影響力を持っていたのだ。

 そして、タラカーノフの扇動は続いた。

「その男は、忌まわしき隣国の女斥候ににすっかり骨抜きにされている。あの女の色仕掛けにな」

 人々の恐怖を煽るような言葉に、

「タラカーノフ殿、それは真か!」

 広間の前方にいた大臣、有力貴族の一人でもあるイジューモフが声高に問うた。

「ええ。あの女を出せば分かります。皆さまもご覧になったでしょう? 黒い髪に黒い瞳をした異国の女です」

 その形容がなされた瞬間、周囲にいた人々が一斉に遥か後方にいたリョウを振り返った。

 ひそひそとあからさまな視線が注がれ始めた。驚愕と侮蔑と嫌悪と。様々な負の感情が渦のようになってリョウの周囲に集まり出していた。

「なん……だと?」

 ユルスナールは驚きに目を瞠った。それをタラカーノフは、相手が動揺したというように受け取ったようだ。

 ユルスナールは、左手を無意識に腰に佩いた長剣の柄に置いた。震える右手をきつく握り締め、沸き立つような静かなる怒りを顕わにギリリと奥歯を噛み締めた。

 腸が煮えくり返りそうだった。自分に向けられた数々の見当違いな暴言もそうだが、これで男の狙いが自分を通り越した所にいるリョウであることが分かったからだ。

 黒幕はこの男だったのか。神殿側に協力をしたのはこの男か。これまでの一連の不可解な事件を思い返しながら、ユルスナールは怒りに震えた。


 一方、リョウは、突然のことに茫然と立ち尽くしていた。一体、なんなのだ。何が起ころうとしているのだ。

 遥か前方では、剥き身の槍を突き出した兵士と思しき男たちに囲まれた銀色の頭部が垣間見えた。他師団の兵士たちはいつの間にか壁際の方に追いやられ、シーリスやブコバルを始めとする第七師団の兵士たちも広間中央のユルスナールとは切り離されるようにやや遠巻きに、同じく武装した男たちに囲まれていた。

 突然、ユルスナールが敵国に通じていると糾弾を始めた男を驚きと共に見た。深緑色の落ち着いた上下に身を包んだ貫禄ある初老の男のように思えた。リョウには全く見覚えがなかった。

 会場内にはキリキリと肌を刺すような緊迫した空気が満ちていた。信じられないことに会場の空気は告発をした男を擁護するようなものに色を変えていた。

 リョウは、はちきれそうになる不安を押し止める為に胸の前できつく両手を握り締めた。


「貴公はあの異国の女にすっかり騙されている。今ならまだ間に合う。目を覚まされよ」

 一時の興奮から抜け出したのか、先程よりも言葉使いを落ち着かせて、タラカーノフは声高に言葉を継いだ。

「先日、後宮で侍女が毒殺されるという仰天すべき不可解な事件が起こりました。その侍女はエクラータ様付きの者で、一つ間違えばエクラータ様に危害が及びかねない事件でした。未だ、犯人は捕まっておりません。ですが、それもそのはず。あのような重大なおぞましい事件を余所に、当の犯人はこの場にのうのうと顔を出しているのですからな」

 その話に女たちが悲鳴のような声を上げ、男たちが驚きの声を出した。

「おい、タラカーノフ。それは本当か!」

 その一件に並々ならぬ関心を持っていた国王(ツァーリ)の第二皇子―エクラータの父親だ―が前に出れば、タラカーノフはここぞとばかりに強く頷いた。

「はい。先日、殺された侍女の部屋からこの国の鉱脈に関する機密事項を記した暗号文が見つかりました。恐らく、あの者は侍女と通じていたのでしょう。途中、仲間割れでもしたのか、都合が悪くなって相手を消したということでしょうな」

 何とおぞましいことでないか。衝撃が人々の間に広まった。


「タラカーノフ殿、推量で勝手なことを吹かないで頂きたい。当案件は目下、調査中です。そのような事実は上がっておりません! 誤解を招くような言動は慎んで頂きたい」

 侍女の一件を担当していた第二師団長のスヴェトラーナが、彼女にしてみればふざけたことを言う大臣を制する為に前に出てきた。スヴェトラーナにしてみれば「何を莫迦なことを」という所だろう。

 いきり立った第二師団長にタラカーノフは嘲るような眼差しを向けた。

「推量ではありませんよ。こちらにはれっきとした証拠が上がって来ているのですから。貴公がのんびりと他所で油を売っている間に我々は隠された重大な事実に辿りついたのですから」

 そう言うとタラカーノフは徐に後方に佇む大臣の一人、国内有数の大貴族でもあるイジューモフを見た。

「イジューモフ殿、先日、宮殿内で行われた鉱脈関連の会議に黒髪に黒い瞳の見慣れない輩が同席したという話は本当ですかな?」

「ああ。それは確かだ。その場に私もいたからな。イオータ殿の弟子ということで養成所の生徒ということだったが、今にして思えば、それすらも怪しいものだ」

 その言葉にタラカーノフは、勝ち誇ったように胸を反らした。

「聞く所によるとその者は貴公と随分親しい間柄とのことですな。さぁ、第七師団長殿。あの女をこちらに引き渡してもらおうか。そうすれば全て、真実が白日の下に晒されるでしょう」


 ユルスナールは一人、奥歯を噛み締めた。相手の目的がリョウの身柄であることがこれではっきりと分かったからだ。リョウを斥候に仕立て上げ、機密情報を流したとして濡れ衣を着せ、罪人の烙印を押そうというのか。

 ―誰の差し金だ?

 ユルスナールは、広間をぐるりと見渡した。そして、数多もの人々の間に埋もれていた一人の神官を見つけると底冷えするような鋭い視線を投げた。

 そこにいたのは、第三師団長のゲオルグが接触を持ってきたと話していた高位神官、クルパーチンという男だった。ぎょろりとした目がうっそりと細められ、干からびた枯れ枝のような薄い口元が弧を描いた。

 ―あいつらか。

 ユルスナールの中で点と点が一本の線で繋がった。それは、背後にいる友人達とて同じことだろう。

 神殿の神官たちは、そこまでしてリョウに執着し、贄を得ようというのか。随分と手の込んだことをしてくれたものだ。

 ―そしてこいつもグルか。

 爆発しそうになる怒りを薄皮一枚の下に必死に押し止めて、ユルスナールは堂々とした態度で難癖を付けた大臣を冷ややかに流し見た。ユルスナールの身体の身じろぎに合わせて突き付けられていた槍の切っ先も同じように移動した。

 まずはこの場を切り抜けなければならない。タラカーノフの言葉は、全く根拠の無いでたらめであることを明らかにしなくては。

 ユルスナールは素早く周囲を見渡した。国王(ツァーリ)を始めとする王族たちは、第一と第二の兵士たちに守られている。あそこは心配ないだろう。元より王族に危害を加える積りはないのだから。狙いはそこではない。

 他師団の兵士たちは壁際に寄せられていた。皆、驚き半分、だが、口を挟むことも出来ずに成り行きを見守っている。

 事情を知る第五のドーリン、ウテナ、イリヤは、厳しい顔付きでタラカーノフたちを見ていた。第二のスヴェトラーナも冷え冷えとした冷徹な眼差しを向けている。

 ブコバルは物凄い形相で長剣の柄に手を掛けながら、ユルスナールの方を見ていた。いつでも抜刀して飛び出せるように間合いを計っている。シーリスも険しい顔付きでこちらを見据えていた。だが、その手は今にも剣を抜こうとするブコバルを制していた。

 基本、宮殿内で剣を抜くことは騎士としての礼節に背くということで禁忌とされていた。いみじくも国王(ツァーリ)の御前だ。勝手な振る舞いは許されない。

 第一のマクシームは国王(ツァーリ)の前に盾のようにして立ちながら、大臣たちの動きを目で追っていた。

 

 仲間たちは静かにユルスナールの動向を見守り、そして隙を窺った。タラカーノフは私兵をこの場に入れたが、その狙いは、王族に反旗を翻そうというものではなかった。その狙いは、ユルスナールの動きを封じ、声高に公衆の面前で辱め、そしてそれを餌にとある人物を釣り上げようというものだった。

 行き場を失った怒りを持て余しそうになりながらも、ユルスナールは努めて冷静に口を開いた。この場では感情を顕わにした方が負けだ。

「戯けたことを。冗談も休み休みにして頂きたいものですね。貴殿こそ、誰に唆されたのですか?」

「なんの話ですかな。随分と人聞きの悪いことを言う。それよりも。さぁ、あの女をここにお出しなさい。不埒者がこの中に紛れ込んでいるのは分かっている。それともこちらから迎えにやりましょうか?」

 タラカーノフは嘲るように口にすると会場内の後方を見透かした。そして、その野太い声を力一杯張り上げた。

「女! 聞こえているのだろう? 姿を現わせ。さもなくばこの男を槍が貫くぞ? この男を罪人にする積りか? 健気なものだな。お前の罪を被ってな」

 会場内に響き渡ったその言葉に遥か後方にいたリョウはきつく拳を握り締めた。リョウは一体、何が起こっているのか理解できなかった。だが、ユルスナールが捕らわれたのは、どうやら自分を(おび)き出そうとするための餌であるらしいことが読み取れた。いや、それを理解しない訳にはいかなかった。

 黒い色彩を持つ異国の女。その表現に当てはまるのはこの中では自分しかいないだろう。

 この場でも再度、見知らぬ男からあの侍女の一件を持ち出されて、リョウは混乱していた。

 何故、ありもしない嫌疑を押し付けられて、ここまで声高に非難、そして罵倒されなければならないのだ。何が目的なのだ。一体、何が起こっているのだ。ここまで来ると狂気の沙汰のように思えて仕方がなかった。

 自分の身が神官たちから狙われているという肝心な事実を知らされていないリョウには、彼らの言い分が全く理解できなかった。そして、ユルスナールたちがよかれ思って秘匿したこの事実が、この後、裏目に出ることになろうとは、何と皮肉なことだろう。


 だが、迷っている暇はなかった。幾らユルスナールが帯剣していて、凄腕の剣士であろうと(いえど)も、あのように周りをぐるりと多くの男たちに囲まれていては多勢に無勢だ。それにここには未だ多くの着飾った招待客が残っていた。彼らを巻き込んだら大変なことになるだろう。

「……リョウ?」

 隣でずっと沈黙を守っていたダーリィヤが心配そうに振り返った。聡明なダーリィヤのことだ。前方から声高に求められている人物がリョウであることを察知したのだろう。

 それにリョウは心配はいらないと微笑んだ。

 そして、唇を引き結び、意を決すると顔を上げた。

 誤解があるのならばそれを解くしかない。上手く行くかは分からないが、このままでは埒が明かなかった。


「お待ちください!」

 会場内に突如として凛とした高い女の声が響き渡った。人垣が徐々に割れ、遥か後方から一人の女性が静かに歩み寄って来た。

「リョウ、来るな! これは罠だ!」

 ユルスナールの怒声が響いた。だが、それに構うことなく、リョウは背筋を真っ直ぐに伸ばし、顔を上げて、堂々とした態度でやって来た。

 リョウは、広間前方近くまで来ると騒ぎの原因となった男に対峙した。

「ワタクシは逃げも隠れも致しません。疾しいことなど微塵もありません。一体、これはなんなんですか? 誰が間者で、誰が反逆者だというのですか? ワタクシが一体何をしたというのです?」

 前方に現れたリョウをタラカーノフ配下の男たちが間髪入れずに囲み、槍の切っ先を向けた。

「チホーン・タラカーノフ!」

 人垣を掻き分けるようにして父親のファーガスと長兄・ロシニョールが前に出た。

「我々を愚弄する気か?」

 ファーガスの発した声は、とても低く静かだった。だが、そこには押さえきれない憤りが憚ることなく表れていた。

「何が目的だ? その子が間者だと? 莫迦も休み休みにしろ。その子は、我が息子、ユルスナールの選んだ伴侶だ。リョウに対する愚弄はそのまま我々シビリークスに対する愚弄でもある。分かっているのだろうな?」

「はっ、落ちたものだな。ファーガス。お前もその女を擁護するのか。大したものだ。このような堅物一家を手玉に取るのだからな。いや、それとも引っ掛かったのはお前の方か?」

 返す返すも容赦の無い侮蔑の言葉にシビリークス家の男たちの空気が一気に下がった。

「なんだと?」

「タラカーノフ殿、口をお慎みください。幾ら大臣と(いえど)も言っていいことと悪いことがあります」

 目を眇めたファーガスの隣で、ロシニョールも剣呑さを滲ませながら言った。

「何故、そこまでこの女を庇う?」

 ―どこの馬の骨とも知れぬ異国の女だろう。

 タラカーノフが嘲りの色をその目に浮かべた。


「お待ちください」

 その時、男たちの問答を遮るように静かな声が割って入った。槍の切っ先が光る合間からリョウが男たちを真っ直ぐに見ていた。

「一体、ワタクシを斥候とみなす根拠はなんですか?」

 状況を整理するようにリョウは口を開いた。リョウにしてみれば、突然、間者だとかノヴグラードの回し者だと言われて訳が分からなかったからだ。

 それからリョウは一つ一つ、先程上がった侍女絡みの嫌疑の件を論破し崩して行った。

 第二のスヴェトラーナからも事情聴取を受けたが、そこで疑いは完全に晴れたこと。殺された侍女イーラとの掠るような接点。そして、間者の疑いが掛かっているという鉱脈の会議の話。講師イオータのお供で会議に出席したのは間違いないが、それはイオータの最終試験であり、自分はれっきとした養成所の生徒であるということ。それは養成所に確認してもらえば分かることだ。暗号文など知らないし、第一、筆跡を鑑定すれば、自分が書いたものではないことも直ぐに分かるだろう。そしてこの度、術師の最終試験にも合格し、役所に登録を済ませたことを挙げ連ねていった。術師として、リョウはこの国に帰属し、忠誠を誓ったようなものなのだ。

 だが、術師になったという事実に、大臣は【黄色い悪魔】という希少な毒草の入手の経路について疑惑を深めたようだった。

 議論は、この場では平行線を辿っていた。

「では尋ねるが、お前はどこの者だ?」

「どこ……というのは?」

「簡単な話だ。国は、生まれはどこかと聞いている」

「それは………………」

 そこでリョウは詰まってしまった。ここで口にすべき答えを持っていなかったからだ。リョウの真実は、彼らにとっては真実たりえないのだ。仕方がないので少しずつ真実を遠巻きに小出しにして行った。

「この国の者ではありません」

「ああ。それはお前の顔を見れば分かる」

「キルメクでもノヴグラードでもありません」

「ではセルツェーリか?」

「いいえ」

 そこで、リョウは絶望した。

 重苦しい沈黙が辺りを席巻しようとしていた。明らかに自分に不利な状況だった。それもそうだ。相手はこの国の有力者(大臣)で、自分は身元不明の不審者だ。どちらの言葉を信じるかとこの場に集まる人々に聞いても、その答えは火を見るよりも明らかだろう。

「ワタシは……………………」

 口を開きかけて、また閉じる。

 ああ、どうしてこのようなことになってしまったのだろう。

「なんだ? 早く言え」

 限られた人たちにしか明かしていない【真実】をここで口にする訳にはいかなかった。信じてもらえる訳がない。いや、余計に怪しいと思われるのがオチだった。

「その問いには………お答えすることが…できません」

 絞るようにして出した返答にタラカーノフはそれ見ろとばかりに得意げな顔をした。

「ですが、私は斥候でも間者でもありません。キルメクもノヴグラードもセルツェーリも。ましてやこのスタルゴラドのことすら、満足に知らないのですから。斥候になどなれる訳がない」

「なんだ? この後に及んで言い逃れか? あ?」

「ですが、誓ってワタシは何もしていません。この身は潔白です」

 顔を上げて堂々と言い切ったリョウにタラカーノフは鼻を鳴らした。

「ふん、ならばちょうどいい。お前の言い分が正しいかどうかは確かめてみれば分かる。この場でな。こちらで用意しているものがある」

 ―これは専門の術師に作らせた判じ薬でな。

 そう言ってタラカーノフが配下の男に持って来させたものは、お盆の上に乗ったグラスだった。乾杯の時に使われたような小さなグラスの中には、透明の液体と小さな花が入っていた。

「これは特別な判じもので、第三師団でも使われているものだ」

 続けてタラカーノフは、その身の潔白を主張するのならば、この中身を飲み干せと言った。それが真実であるのならば、何の反応も起こらない。だが、もし、それが偽りであった場合、たちまちグラスの中の試験薬の成分が作用し、もがき苦しむことになるだろう。

「これならば構いませんね?」

 後方を振り返り、監察官を始めとする諸大臣、そして(ツァーリ)を見たタラカーノフに一同が同意をするように諾と頷いた。


 リョウは差し出されたグラスの中身を見て、目を見開いた。透明な液体の中に揺れる小さな花。黄色い可憐な花弁に赤い斑点のような斑模様が入っていた。

 見紛うはずがない。それはまさに【黄色い悪魔】だった。このように一輪丸ごと入っているとなるとその成分も大分液体の方に溶け出しているはずだった。毒の成分は水溶性であるからだ。

 判じものだなどと聞いて呆れる。これだけのものを飲み干せば、もがき苦しむことなどなく、即死するだろう。それを飲めということは、この場で死ねと言っているのと同義だった。

 リョウは顔を上げると小さく微笑んだ。相手が並々ならぬ敵意、いや、殺意を抱いていることだけはよく理解出来た。突き抜けた怒りと絶望がリョウを支配しようとしていた。

「このグラスの中に入っているのは【黄色い悪魔】とお見受け致しますが?」

 【黄色い悪魔】―悪名高い毒草の名に周囲で息を飲むものがいた。

 伊達に術師になった訳ではない。向こうは分からないとでも思ったのだろうか。挑戦的に見上げた黒い瞳にタラカーノフはほくそ笑んだ。

「おやおや、やはり知っていたか。さすがは術師殿。ああそうだ。お前の言う通り、これは【黄色い悪魔】だ。だが、まぁ案ずることはない。これは特別に加工下処理のされたもので、毒の成分は中和されているからな」

 そのようなことがあるのだろうか。幾ら毒の成分が水溶性であるとは言え、その花弁そのものに強烈な毒性があるのだ。全てが完全に溶け出る訳でもないし、これだけのものを中和する薬草もリョウは過分にも知らなかった。

「さぁ、どうぞ?」

 ―自身の身の潔白は、自身で示せばよかろう。

 目の前で、男が悪魔のように囁いて微笑みを浮かべた。


 リョウは素早く周囲を見た。多くの槍の切っ先に囲まれた中で、ユルスナールが物凄い形相でこちらを見ていた。それで心は決まった。

「分かりました。ですが、条件が一つあります。あちらの第七師団長に向けている武器をおろしてください。あの方は、全くの無関係です」

 リョウは確固たる強さでタラカーノフを見た。自分がこれを飲み干せば、相手はきっと満足するのだろう。あの男が望むのは、自分の命なのだ。その理由は全く見当が付かなかったが、このままでは徒にユルスナールを傷つけてしまうことになるだろう。

 リョウは何故か笑いたくなってしまった。本当に漸く全てを打ち明け、過酷な運命を受け入れて、愛する男の妻になるという幸せを手に入れることができたと思ったのに。このような所でかようにも大きな落とし穴が待ち構えていようとは。人生、本当に何が起こるか分からないものだと今更ながらに自嘲気味な気持ちが湧きあがってきた。

 いや、遅かれ早かれ、いずれこの世界から消える定めならば、それは余り変わりのないことなのかもしれない。ほんの少しその時期が早まったというだけで。元々、ここにはいてはいけない存在だったのだろう。何かの間違いで混ざり込んでしまった完全なる異物を取り除こうと大いなる力が再び働いている。だから、今、こうして、この国の最高権力者、国王(ツァーリ)の前で全てを終わりにしろと宣告されたのだ。

 と同時に、これでユルスナールへの危害を少しでも取り除けられるのならば、それは本望だった。ユルスナールのことだ。きっと後は上手くやるはずだ。

「いいだろう」

 暫し、逡巡した後、タラカーノフはそう譲歩し、配下の男たちに槍を下ろすように命じた。

「但し、第七の師団長殿はその場でお待ちを」

 ユルスナールを囲んでいた人垣が緩くなった。男たちが槍を下げる。そこで埋もれていた愛しい男の姿がリョウの目にも露わになった。

 リョウは覚悟を決めた。最後、その姿をこの目に焼き付けようとユルスナールを見た。そして、柔らかく微笑んだ。

 奇しくも先だっての約束をこれで果たすことが出来るだろう。その生に限りがあるのならば俺の前で逝け。こんなにも早く、その約束を実現することになるとは思わなかった。

 リョウは手を伸ばした。

「リョウ! 止せ! これは罠だ! こいつらの目的はお前だ!」

 こちらに駆け出して来ようとするユルスナールを配下の男たちが囲み、その動きを封じた。

「あの方に手出しは無用です」

「ああ。約束は果たす」

「リョウ! 莫迦な真似はやめろ!」

 必死な形相でこちらを見ているユルスナールを視界の隅に認めながら、リョウは差し出されたグラスを手に取った。

「リョウ!」

「リョウ! お止めなさい!」

「リョウ! 俺を信じろ!」

 ユルスナールの声に混じり、シーリスやゲオルグの厳しい声がした。

 黄色い可憐な花が揺れる透明なグラスの向こう、視界に入る人垣の中から沢山の知り合いの顔が見えた。

 リョウは周囲の知った顔を見渡して、それから最後にユルスナールを見た。そこで、ありったけの感謝の気持ちを込めて微笑んだ。

 鮮やか過ぎる程の晴れやかな笑みだった。

 その瞬間、ユルスナールを始めとする周囲の男たちが息を飲んだ。

「ルスラン、ありがとう。この国で、この世界で、あなたに会えてよかった」

 ―サヨナラ。アイシテル。

 出来ることならば、この国で、あなたと共に生きたかった。

 最後にこれまで決して口にしてこなかった故郷の言葉を音にした。それはきっとユルスナールには伝わらないだろう。だが、それでも良かった。

 そして、リョウは一息にグラスの中身を呷った。

「リョウー!!!」

 悲痛すらある男の絶叫が、広い室内にこだました。


 それからはまるで一時的に時の流れが遅くなったかのようだった。空になったグラスがリョウの手を離れた。そして、その小さな盃が床に落ちて砕け散る前にリョウの身体は力なくその場に崩れ落ちた。胸元に下がる青い光を帯びた【キコウ石】の首飾り(ペンダント)が大きく跳ね上がり、一瞬だけ強い光を放ったかと思うと粉々に砕け散った。


「リィョーウー!!!」

 形容し難い衝撃と哀しみに縁取られた男の咆哮が周囲の空間に轟いた。

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