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Messenger ~伝令の足跡~  作者: kagonosuke
第五章:テラ・ノーリ
191/232

祝賀会の幕開け

 その後、一頻り興奮の波が収まった所で、着飾った大人たちは残る子供たちに大人しく留守番をしているようにと言い残して、玄関先に着けられた馬車に乗り込んだ。まだ五歳の一番幼いオーシャは、出掛けてしまう両親を始めとする大人たちに今にも涙が零れそうな不安そうな顔をしたのだが、リョウが戻って来たら今度一緒に寝台の中で絵本を読もうと約束をして、なんとか宥めすかした。そして、見送りに出て来たカッパとラムダの二頭に後を任せてシビリークス家を出立した。


 馬車は二頭立てで四人乗りのものが二台用意されていた。宮殿までは距離にしては然程遠いとは言えないのだが、日も暮れ、着飾った女性たちがいる為にシビリークス家にある馬車を使うことになったのだ。御者台には、厩舎番の男が其々座り、手綱を取っていた。

 一番目の馬車に長兄夫妻と次兄夫妻が乗り込み、二番目の馬車にシビリークス夫妻とユルスナール、そしてリョウが乗ることになった。

 こうして馬車に揺られるのもエリセーエフスカヤの帰り道以来のことだ。

 中は、見た目よりもゆったりとしていた。内部の椅子の部分は深い臙脂色の天鵞絨(ビロード)のような滑らかな布張りで大きなクッションが宛がわれており、車輪からの振動を抑える形になっていた。それでも慣れない独特な揺れはある為、妙な感じだった。


 貴族の邸宅が並ぶ界隈から宮殿の区画に入り、馬車は衛兵が警備をする門の前で一度止まった。馬車の側面にはシビリークス家の家紋があしらわれており、兵士たちはその紋章と中にいる男たちの顔触れを目視で確認すると慇懃に敬礼をした。

 それから再び馬車が止まったのは、宮殿の南西側にある玄関口だった。

 車止めで馬車を降りた。このまま馬車はここより北西の一角に設えられた場所に停め置かれ、御者はその傍にある詰所のような休憩所で主人たちの帰りを待つとのことだった。

 車止めには次々と招待客を乗せた馬車が止まり、着飾った男女を降ろしてゆく。馬の嘶きと御者の掛け声。そして、ガタガタという石畳の上を滑る車輪の音。案内係の声。静かな印象が強い宮殿は、この時ばかりは賑やかな喧騒に包まれていた。

 リョウもシビリークス夫妻に続き、ユルスナールと共に馬車から降りた。足を地面に着けた瞬間、一陣の冷たい夜風が吹き抜け、ドレスの上に羽織っていた外套の裾を揺らした。リョウの身体は一瞬ぶるりと震えたのだが、それが風の冷たさから来るのか、それともこれから待ち受けているであろう未知の世界に対する緊張から来るのかは分からなかった。

 それから世話になった馬たちに「ありがとう」と声を掛けるのを忘れなかった。


***


 宮殿内は、リョウの記憶の中にあった光景よりも明るかった。この日の為に発光石の明かりを一段と強いものにしているのだろう。夜の帳が落ちた闇から抜け出して一歩足を踏み入れた先は、まるで別世界のようだった。白っぽい明かりが室内の金銀の装飾や曲線を描く彫刻類、そして優美な草花を基調にした紋様が彩色された空間を煌々と照らし出していた。

 そして、何よりも室内に溢れんばかりに集う男たち、そして女たちの目にも鮮やかな色とりどりの衣装が、この場を一層華やかなものにしていた。その色合いは、赤や薄紅色、黄色、緑、青、紫とそれらの濃淡も含めて実に彩り豊かだ。中に集う人々は、皆、生き生きとした顔をしていた。寛いだ表情をしている男たち。穏やかな微笑を浮かべている女たち。それに対照的なのは頬を高揚に上気させている若い娘たちだろう。

 ああ、やはり思った通りだ。いや、これは予想以上かもしれない。リョウは眩し過ぎるその光景に目眩がしそうだった。目に映るもの全てが煌びやかでちかちかと反射し、網膜に映った映像を脳が上手く処理しきれていないようだ。

 思わず竦みそうになった足に歩調が乱れた所為か、隣に寄り添うユルスナールの腰に回された手の指先に小さく力が入ったのが感じ取れた。

「リョウ、大丈夫だ。お前は十分綺麗だ。ここにいる誰よりも」

 そんなに不安そうな顔をしていたのだろうか。まだ何も口にしていないのにユルスナールはリョウが欲しい言葉を一番必要としている時にくれた。

 リョウは、そっと隣を見上げた。そこにはいつにも増して柔らかく優しさを滲ませた瑠璃色の双眸があり、甘さを含んだ表情でこちらを見下ろしている涼やかな男の顔があって、リョウは思わず苦笑していた。

「そんなに情けない顔をしていますか?」

「そんなことはない。だが、そうだな。もっと堂々としていた方がいい。上を向いていろ。なんなら俺を見ていればいい」

 緊張を解そうとしてか、そんな軽口を叩いたユルスナールにリョウは小さく笑った。

「ふふふ。では困ったらルスランを見ることにしますね」

「ああ」

 そして、玄関口から広間へと通じる室内を横切って行く。宮殿内はとても天井が高く、柔らかな白い光が室内を照らしていた。散りばめられた金銀の装飾にその光が反射してより周囲を明るく見せていた。あちらこちらで交わされる囁きと談笑のざわめき、靴を踏み鳴らす足音やドレスの衣擦れの音が、天井や壁に反響して、ざわざわとした、だが、不思議と耳に心地よい不協和音の漣を生みだしていた。

 右を見ても左を見ても周囲は着飾った紳士と淑女たちの姿ばかりだ。溢れんばかりの色とりどりのドレスの色。その多くは光沢のある生地で明るい色合いのものであったので、余計に明るさが増しているように感じられた。

 辺りは独特の高揚感に包まれていた。

 宮殿内でこれほどまでに人が集まっているのを初めて見た。武芸大会時の貴族の婦女子たちの集まる貴賓席を見た時も華やかだと感じたが、ここはそこに多くの男たちの姿も混じり、輪を掛けて豪奢な空気に満ちていた。

 これだけ大勢の人がいれば自分のようなものを気にする人はいない。そう思ってみてもリョウの周囲にいるシビリークス家の人々はそれなりの注目を浴びていて、自然にその傍にいるリョウにも意識が向けられることになった。シビリークスの人たちには知り合いも多いようで、あちらこちらから掛かる声に和やかに挨拶を交わしたり、雑談を交わしたりしていた。

 ファーガスもロシニョールもケリーガルも人好きのする微笑みを浮かべて久し振りに見る友人や知り合いたちに挨拶をしていた。そして、夫人たちのアレクサーンドラ、ジィナイーダ、ダーリィヤは尚のこと生き生きとおしゃべりに花を咲かせていた。その様子を見たリョウは、改めてこのような場所での主役はやはり着飾った美しい女たちなのだろうと思ったのだった。

 中でもユルスナールは、多少の驚きと大いなる好奇を持って他の招待客たちに迎えられていた。これまで必要以上に社交界には近づかなかったユルスナールが宮殿の夜会に顔を出すのが珍しかったようだ。昨年の祝賀会へは顔をちらりと出して義理を果たしたとばかりに帰ってしまったのだという。そして、この時の為に気合を入れて着飾って来た貴族の娘たちをがっかりさせてしまったのだとか。そのような話を道々馬車の中で母親のアレクサーンドラから聞いたのだ。

 ユルスナールが館内を歩くと方々から様々な囁きが漏れ聞こえて来た。若い娘を連れた母親たちが俄かに色めき立った。じりじりとした()けるような熱の籠った視線をユルスナールは動じることなく受け流していた。その堂々とした態度は傍にいるリョウから見ても惚れ惚れとするほどだった。羨望の眼差しやうっとりとした溜息、独特の空気が秋波となって漂ってくる。

 そして、武芸大会でユルスナールが求婚したという噂は瞬く間に社交界にも広まっていたようで、隣にいるリョウにも相応の好奇の視線が突き刺さるようにして向けられていた。リョウはまるで針の筵の上に座っているような気がした。決して自意識過剰ではないだろう。

「………ルスラン」

 リョウは思わず何とも言えない気分で隣に寄り添う男を見上げた。

「ん?」

「穴が開いてしまうかもしれません」

 ユルスナールの隣を歩いているリョウに注がれる視線は、単なる好奇だけのものでもなかったからだ。ユルスナールが大会中、黒いリボンを腕に巻いていたという話も伝わっているようで、その色を目に見える形で体現することになったリョウは、男を慕っていると思われる女たちからの強い視線、そして中には呪詛に近いと思えるような鋭いものを感じ取っていた。この時、リョウの脳裏には武芸大会で養成所の友人たちに言われた言葉―第七の団長に求婚されるということは、この王都中の娘たちを敵に回したようなものだ―が思い出されていた。リョウは、なるべく前を向いてそのような雑音を務めて排除しようとした。

 祝賀会の(メイン)会場となる大広間はまだまだ先のようだ。正式な夜会が始まるまでにはまだ間があるのか、多くの人々が手前側の控えの間で談笑したり、旧交を深め合ったりと思い思いの時間を過ごしているようだった。こういう事態は、予想をしていない訳ではなかったが、想像と実際とはやはり違うもので思わず怯んでしまう。

 思わず漏れてしまったリョウの本音にユルスナールは柔らかく笑った。

「気にするな………と言っても、急には無理か」

 立ち止まったリョウにユルスナールはそっと腰を抱き寄せ、顔を近づけるとさり気なく耳とこめかみのあたりに触れるだけの口づけを落とした。

「ルスランは慣れているのでしょうけれど……」

「そういう訳でもないぞ?」

「でもワタシとは比べ物にならないでしょう?」

 何しろこのような華やかな空気は初めてなのだ。その豪華さは【エリセーエフスカヤ】の比ではない。

「それよりもリョウ、気を付けろ。ここに集まる男たちは美しいものに目がないからな。俺の傍を離れるな」

 ―でないと攫われてしまう。

 話の流れを変えるようにユルスナールがそのようなことを言った。

「もう。ルスランまで。ここには綺麗な人たちが大勢いるじゃないですか。女の人も男の人も。私は少し毛色が変わっているだけで地味なものでしょう?」

「この中ではお前が一番だ」

 自分が弱いと知る低音でそんな口説き文句を口にした男に、

「ルスランは、きっと美的感覚が変わっているんですよ」

 リョウは色を変えた空気を冗談に流そうとした。

「そうか?」

「ええ」

「それは聞き捨てならないな」

「そうですか?」

 恐ろしく甘い空気を撒きながら蜜のような言葉を吐くユルスナール。きっとそれはこの場での自分の緊張を少しでも解そうとしているのかも知れない。そして、その思惑は功を奏したのだろう。そうやって他愛ない遣り取りをしていると気が紛れるのも事実だった。それにこうして話をしていればユルスナール以外を視界に入れないで済む。

「ブコバルやシーリスたちも招待されているんですよね?」

 団体戦に出場した兵士たちも同じように正装で参加すると聞いていた。第七のお馴染みの面々もこの場所にいるはずだった。

そう思って訊けば、

「ああ。噂をすれば。ほら」

 そう言ってユルスナールが目線で促した先には、着飾った若い女たちが大勢集まっている一際賑やかな一角があり、よく目を凝らせば、その中心には噂のブコバルがやけに小ざっぱりとした引き締まった顔付きでー要するに無精髭を綺麗に剃っているのだろうー和やかに談笑しているのが見えた。

「……ああ…」

 やはりブコバルはブコバルである。女たちに囲まれたブコバルは女誑しー女好きとも言うーの本領発揮とばかりに実に生き生きとしていた。まるで水を得た魚のようだ。単なるむさ苦しい男も身なりを整え、こうして晴れやかな舞台の中で見ると実に立派に見えるのだから不思議なものだとリョウは当の本人が耳にしたら機嫌を悪くしそうな失礼なことを平気で考えていた。

「皆、騙されてますよ……絶対」

 思わず漏れた言葉にユルスナールは可笑しそうにクククと小さく喉を鳴らした。

「だが、あれは昔からだ」

「まぁ、そうなのでしょうけれど…………」

 それはリョウが知らないブコバルのもう一つの顔だった。貴族としての顔だ。そして、このことは隣に立つユルスナールについても言えることなのだろう。


 そのようないつもの遣り取りをして和んでいると不意に目の前に影が差した。そして深みのある渋い声が落ちてきた。

「これは珍しい。やはり噂は本当だったんだな。ルー坊?」

 声のした方に顔を上げれば、逞しい体つきの貫禄ある壮年の男が立っていた。濃紺の生地に赤い縁取りが見え隠れする軍服は、ロシニョールと同じ軍部の将軍の正装だ。少し縮れた焦げ茶色の髪をすっきりと後方に撫で付け、顎はたっぷりとした髭で覆われていた。全体的に男らしい精悍な顔立ちた。

 リョウはその男をどこかで見たことがあるような気がした。はて、それはどこであっただろうかと脳内の記憶を探っている傍らで、男たちの会話は進んでいた。

「将軍、その呼び方は止めてくださいとお願いしているはずですが」

 ユルスナールから漏れた将軍という一言にリョウは目の前に立つ男が武芸大会時ユルスナールと模範試合をした南の将軍であることに思い至った。確かドーリンの叔父だという男だ。

 リョウは、大柄な男をそっと見上げてみた。成る程。神経質そうな顔をしたドーリンとは面立ちが大分違うが、髪の色や雰囲気は似ているかもしれない。

「……今日の主役はお前だからな。それよりも嬉しい報せがあるのだろう? ファーガス殿もロシニョールもやけに張り切っていたぞ」

 そして、ついと隣にいるリョウに視線を投げると、強面の顔に驚くほど人懐っこい笑みを浮かべた。

「で、ルー坊、紹介してはくれないのか?」

 リョウは、ユルスナールが呼ばれたルー坊という言葉に思わず吹き出しそうになって慌てて口元に手を宛がった。ルーシャと呼ばれたのを聞いた時も仰け反りそうになったが、ルー坊というのは更にその上を行く。まるで赤ん坊に対するような呼び名に言い知れぬ可笑しさが込上げて来た。

 だが、男の手前、ここで笑う訳にはいかないだろう。そう思って堪えようと下を向いたのだが、

「リョウ、笑いたければ笑えばいい」

 直ぐ下にある剥き出しの肩が小刻みに震えていることにいち早く気が付いたユルスナールは、当然その理由にも思い至ったらしく、低い拗ねたような声を漏らした。

 だが、気を取り直したのか、取って付けたような咳払いを一つするとリョウを将軍に引き合わせた。

「リョウ、こちらは南の将軍、オリベルト・ナユーグ殿だ。ドーリンの叔父に当たる方だ。そして、将軍、こちらはリョウ。私の婚約者です」

 改まってユルスナールの口から自分のことを婚約者と称されるのはなんだか照れくさくて仕方がなかった。

 リョウは、慌てて笑いを引っ込めるとにっこりと微笑んだ。

「【オーチンプリヤートナ(はじめまして)】 お噂はかねがね。ドーリンさんにはいつもお世話になっております」

 昨日お浚いした淑女の儀礼に則り、目を伏せながら膝を軽く折って挨拶をすれば、

「おや、うちのドーリンを御存じでしたか。それにしても噂に違わずお美しい方だ。お手を頂戴しても?」

 ちらりと確認するようにユルスナールを見て、澄ました硬質な顔立ちが小さく頷いたのを見て取ってからリョウは手を前に差し出した。

 そっと上げられたその右手を将軍は恭しく己が手に取るとそっとその甲に口付けを落とした。柔らかい髭の感触が手の甲を擽った。

「ああ。なんて可憐な小さな手だろう!」

 ごつごつとした硬い大きな手の中にあるリョウの手は、まるで子供のように小さなものに見えた。かさついていた手にも昨日の内に香油を擦り込んでいたお陰かしっとりと滑らかになっていた。

 将軍は、どこか恍惚に似た表情を浮かべながらリョウの少し骨張った白い手を己が両手の中に入れると恭しく撫で回した。

 儀礼上、直ぐに解放されると思っていたのだが、いまだ相手の手中にある右手にリョウは困惑し、どうしていいのか分からずにそっとユルスナールを見上げて助けを求めた。

 口を挟まずに、だが、憚らずに呆れた顔をしていたユルスナールは、リョウからの信号を的確に受け取ると、態とらしい咳払いを一つした。

「オリベルト殿、初対面なのですから、どうぞこの辺でご勘弁を」

 そして、将軍の耳元に顔を寄せると小さく囁いた。

「いきなりそのように趣味全開でこられたら吃驚しますよ」

 それは、オリベルトだけに向けられたはずの忠告であった訳だが、傍にいるリョウにも聞こえてしまった。

 何やら途轍もない秘密の世界を覗いてしまったような気分になったのは、気のせいではないのだろう。

「趣味………ですか」

 無意識だったのだろう。ぽつりと微かに声を漏らして目を瞬かせたリョウに、だが、将軍は恥ずかしがることなく、実に堂々とした態度で笑ったのだ。

「ああ。私は小さくて可憐なものに目がないのだよ。キミのような素敵なお嬢さんは特に。【チョールナヤ(黒い)コーシェチカ(子猫ちゃん)】とは言い得て妙だな」

 そう言って茶目っ気たっぷりに片目を瞑って見せた。

 リョウは失礼かとも思ったが、堪らずに吹き出してしまった。

 だが、慌てて口元に手を当てて笑いを堪えると目の端に余韻の涙を浮かべながら言った。

「すみません。別に他意はないんです。可愛らしいものがお好きなのですね。例えばあのような」

 そして、ぐるりと館内を見渡すとまだ少女のようなあどけなさの残る若い娘の姿を目で捉えて微笑んだ。

 色白の肌に上気した薔薇色の頬、華奢な骨格。淡い黄色のドレスから伸びたすらりとした手足はまるで精巧な人形のようだった。可憐という言葉はあのような娘を評するのにこそ相応しい。自分は足元にも及ばない。

「ははは。これは参ったな」

 リョウの返しに将軍は愉快そうに声を立てて笑った。

「だが、私はどちらかと言うとキミの方が好みだ」

「……オリベルト殿」

 ユルスナールが合間に入るように低い声を出したが、

「まぁ、光栄ですわ」

 リョウは動じることなく微笑み返していた。この国の男たち特有の社交辞令だと思ったからだ。

 そして、穏やかな表情のまま言葉を継いだ。

「ワタクシも可愛いらしいものは好きですわ。ルスランの甥っ子たちは特に」

「ロシニョールの所とケリーガルの所のか?」

「はい」

 にこやかな微笑みを浮かべたリョウにオリベルトはちらりと隣に立つユルスナールを流し見た。

 あそこは確か、オリベルトの記憶が正しければ男の子ばかりで、しかもかなりやんちゃな盛りだと思っていたのだが。シビリークスの形質を良く引き継いだ顔立ちのはずだが、あれが可愛らしいという範疇に入るのだろうか。そんな素朴な疑問が頭の隅を過った。

 ユルスナールは面白くないことでも思い出したのか、オリベルトに口パクで『リョウだけですよ』と答えると小さく肩を竦めて見せた。その様子に将軍は再び可笑しそうに笑った。

 その後、後から追い付いてきたロシニョールが合流して同じ将軍同士、二人して何やら話し込み始めた。

 そして将軍との別れ際、最後に名残惜しそうに太い指で手の甲を擽られたのは意外だった。

 だが、リョウはそこに社交界という世界の一端を覗いた気がした。つまり、そうやって女性に甘い誘いの言葉を掛けるのは挨拶のようなものなのだ。そして、このような場では際どい感のある言葉遊びが男女間の駆け引きのように多く飛び交うのだろう。そのような観点から見れば、ブコバルのような一見、軽い遊び人風の態度は、余り問題視されるようなものでもないのだろう。寧ろ当然なのかもしれない。そして、リョウは芋づる式にその筋では有名だと言う第三師団長、ゲオルグの顔を思い浮かべたのだった。

 最終的に、リョウは南の将軍に対して少し変わったお茶目で可愛らしい人だという印象を持った。その感覚は実にリョウらしいもので、きっと部下の兵士たちが聞いたら、仰け反るか、人気の無い所で腹を抱えて笑うに違いない。


 それから(メイン)会場のほうの準備が整ったのか、大広間の方へ招待客を案内する声が上がった。リョウもユルスナールに促される形で足を進めた。

 だが、緩やかな人の流れに沿って歩いていた所で、その歩みは、再びユルスナールを呼び止める声により止められた。

「まぁ、ユルスナール殿。今年は初めからいらしているのね」

 艶やかで張りのある声の後、優雅な足取りでやって来たのは、アレクサーンドラのような初老の域に達していると思われる貴婦人だった。

「ご無沙汰いたしております。リガルスキー夫人」

 ユルスナールは、振り返り、差し出された婦人の手を取ると恭しく慇懃な所作で軽く指先に口付けを落とした。

「本当に幾らお茶会にお誘いをしても中々お顔を出して下さらないんですもの。やっとお会い出来たわ」

 姿勢よく背筋を伸ばし、柔らかな微笑を浮かべながらもユルスナールのつれなさに恨み節を込めるのは忘れない。凛とした空気はどこか近寄り難く、穏やかな中にも威厳ある孤高の女王のような印象を受けた。落ち着いた色合いの薄い紫色のドレスがそのきつめの空気を少し和らげているような気がした。

「申し訳ございません。中々に都合がつかなかったものですから」

 ユルスナールは、珍しく薄らとした笑みを口元に刷きながら寛いだ様子で老婦人に対峙していた。恐らく古くからの知り合いなのだろう。

「この度はおめでとう。見事な試合でしたよ」

「勿体なきお言葉、ありがとうございます」

 リョウは、さり気なく会話の邪魔にならないように身体をずらすと一歩、後ろに下がった。リガルスキー夫人と呼ばれた老婦人の後ろにぞろぞろと若い娘たちを始めとする着飾った婦人たちがやってくるのが見えたからだ。きっとリガルスキー夫人のサロン(お茶会)の友人達なのだろう。何となくこのままユルスナールの傍にいるのは具合が悪い気がしてー今思えば、それは女の勘というやつなのかもしれないがーリョウは身体を反転させるとざっと周囲を見渡した。

 シビリークス家の人々がいないだろうかと思ったのだが、特徴的な銀色の髪も華やかな淡い空色のドレスもーアレクサーンドラが身に着けているものだーも見当たらなかった。


 他に知った顔がないかと探して視線を彷徨わせていれば、後方で、人垣の中から軍服を身に纏った一団がやってくるのが目に入った。賑やかなざわめきがこちらにまで伝わって来るようだった。

 そこで先頭を歩いている人物に目が止まり、リョウは思わず相好を崩した。

 先陣を切って歩いているのはシーリスだった。お馴染みの人当たりの良い柔らかな笑みを浮かべている。その後ろには団体戦に出場した第七の兵士たちーアッカ、ロッソ、アナトーリィー、そして控えのグント、ヤルターとアルセナールに詰めているグリゴーリィーを始めとする第七の兵士たちが続いていた。

 皆、きっちりとした正装に身を包んでいた。宮殿の中という視界に映る特殊な背景の影響もあるのだろうが、リョウが良く知る兵士たちは、北の砦の時とは違い、やけに上品で騎士団という名に相応しく立派に見えた。

 団体戦優勝者である彼らは今回の主役でもある。周囲からは次々に声が掛かっていた。

 その他にも同じような軍部の制服に身を包んだ兵士たちがいるようだ。詰襟の徽章には其々の部隊色と所属を表わした紋章の付いた石が煌めいていた。聞く所によると肩章の部分にも部隊毎にあしらわれている飾りが違うのだそうだ。と言ってもリョウのような素人には、その違いはよく分からなかったが。

 リョウはさり気なくユルスナールの指に触れて離れる為の合図を送った。そして、ドレスの若干長い裾を摘み上げると軽やかに反転し、こちらの方にやってくるシーリスの方へ足を踏み出した。


「シーリス!」

 決して大きな声量という訳ではなかったが、人々のざわめきの中に凛とした声が通り、名を呼ばれた第七師団副団長は、声がした方に顔を向けた。

 それまで社交辞令的な他所行きの微笑みを浮かべながら適当に人の合間を掻い潜っていたのだが、前方からやってくる濃紺のドレスに身を包んだ一人の女性の登場に暫し、目を奪われた。

 あのドレスには見覚えがあった。まず脳が認識したのはその(ひと)が身に着けている服の方だった。華やかな明るい色合いのドレスを身に着けた婦人たちが多い中で、そのシーニェイェ・マルタ特産の濃紺の色は別の意味で人目を引いた。リョウが聞いたら機嫌を損ねそうなものだが、逆に言えばそれ程、目に入った絵図らがシーリスの想像を超えていたのかもしれない。

 そして、ゆっくりと視線を上げると満面の笑みを浮かべたどこか妖艶で異国風の顔立ちをした黒髪の女性にぶつかった。遠目に小さく見えた女性の姿がみるみる内に大きくなる。そして、この国の一般的な成人女性よりは幾分小柄な、シーリスが良く知るはずの人物のの高さで止まった。

「…リョウ……ですか?」

 余程思いがけないことだったのか、呆けたような声を出したシーリスに声を掛けられた当人(リョウ)は、艶やかな笑みを浮かべた。

「もう、どうしたんですか、シーリス。そんなに変わってはいないでしょう?」

 口元に手を当てて淑やかに周囲に集う貴婦人たちとまるで変わらないように微笑むその知り合いの姿を目の当たりにして、シーリスは事前にユルスナールから聞かされていたので頭では理解していた積りであったが、実際に目にしたリョウの変わりように予想以上の衝撃を受けていた。勿論、この場合、良い意味で、だ。

 シーリスでさえそうなのだから、後ろに続いていた第七の兵士たちは()して知るべしだろう。

「いや、これは想像以上です。すっかり見違えましたよ」

 「驚いた」とつるりと己が頬を撫でたシーリスは、そのまま顎に手を置いて立てた右肘に左手を当てて自分でも少し可笑しそうに笑った。

 だが、直ぐにいつもの表情に戻った。

「ああ。そう言えば術師の試験に合格したそうですね。おめでとうございます。良かったですね」

 シーリスからの祝辞にリョウは嬉しそうに微笑んだ。

「はい。ありがとうございます。これもシーリスがレヌート先生を紹介してくださったお陰です」

「ふふふ。お役に立てて何より。登録は済ませたのですか?」

「はい。申請は受理されたのですが、まだ登録札の方が出来上がっていなくて」

 恐らく、今日明日で出来上がるだろうから、後で取りに行く予定であると語ったリョウにシーリスもそうかと目を細めたのだった。


 そこで不意にシーリスはリョウの周囲を見渡した。

「それよりも、ルスランはどうしました?」

 このように女として見事な変貌を遂げたリョウをあの男ならば放っておくはずがないと思っていたのだが、用心棒よろしく隣に張り付いていそうな強面の美丈夫の姿は生憎近くになかった。

 その問いにリョウはそっと来た方角を振り返った。

 そこには、社交界では広い人脈を持つことで有名なリガルスキー夫人とその取り巻きのご婦人方がいて、華やかな女たちの中に囲まれている銀色の頭部が見えた。

 シーリスは状況を瞬時に理解した。

 確かにあの中にいたのではリョウは息苦しくて堪らないだろう。なにかと押し出しの強いご婦人たちだ。控え目なリョウなど迫力負けしてしまうだろうし、要らぬ嫉妬の鞘当てならまだしも集中砲火を浴びてしまいそうだ。

 その昔、娘時代にリガルスキー夫人はユルスナールの父親ファーガスに恋破れたことがあるそうで、それ以来なにかとシビリークス家の男たちを気を掛けているというのは社交界では有名な話だった。そして、今の所のお気に入りは、ファーガスの形質を一番よく引き継いだ三男のユルスナールであるというのが貴族たちの暗黙の共通認識であるらしい。年を重ねる毎にユルスナールはファーガスに似てきたようで、その昔、同じようにファーガスに恋をしたが、その夢が叶わなかったかつての社交界の花たちは、その想いを自分たちの娘に託そうとした。

 即ち、ユルスナールの心を射止めたリョウにとっては、あの集団は鬼門に違いなかった。近寄らない方が身の為だ。

「それは正解でしたね。あちらの方々は皆さん、中々に迫力がありますからね」

 にっこりといつもの人好きのする笑みを浮かべたシーリスにリョウはほんの少しだけ困惑したように笑った。

 リョウがそういう表情をすると普段の凛とした清々しさになんとも形容し難い儚さというか哀愁のようなものが漂い、シーリスは妙に男心を擽られるような気分になった。あれだ。放っておけないというやつだろう。庇護欲をそそられ、自分から何かと世話をしてやりたくなる。そのような不思議な空気をこの日のリョウは持っていた。そして、ユルスナールはこれに落ちたのだろうと新しい発見に一人感心したのだった。

 これは目を離したら大変なことになりそうだ。シーリスは内心、独りごちた。ここに集まる男たちはこういうある種、独特の匂いに敏感に反応をするものだ。遊び人の戯れに穢されては敵わない。そういう遊戯(ゲーム)の好きな性質の悪い男たちがこの場には多く集まっているのだ。早速、その匂いを感じ取ったのか、こちらをチラチラと見ている貴族の男たちの顔触れをそっと頭の中に入れて要注意人物候補に指定してからシーリスは言葉を継いだ。

「シビリークスの方々は?」

 ユルスナールのことだ。自分の目が届かない場合は、それ相応の保護網を張っていると思ったのだが。

「恐らく中の方かと」

 だが、生憎、頼みの綱もこの人混みの中で離れてしまったようだった。

「そうですか」

 ならば、その役目は自分が引き受けた方が良さそうだ。

 その時、隣にリョウがいないことに気が付いたユルスナールが周囲を見渡し、シーリスの姿を捕らえた。そして、そこに佇むリョウの姿にも気が付いた。厄介な相手に捕まったという自覚がある所為か、どこか苦い顔をしている。だが、思いの外、リョウが近くにいてほっとしたようでもあった。シーリスはユルスナールにこちらに任せておけとばかりに鷹揚に頷きを返した。

 それからシーリスは、リョウに向き直ると穏やかに微笑んだ。他所行きではない心からの笑みを浮かべていた。

「それではお嬢さん、お手をどうぞ」

 芝居掛かった慇懃な仕草で恭しく一礼してから己が手を差し出したシーリスにリョウは可笑しそうに笑ったのだが、このような大勢の招待客の中でシーリスのような知り合いが傍にいてくれるのは非常に助かったので、相手の好意を素直に受けることにした。それにこういう夜会のような正式な場では、女性は必ず男性に同伴されるものであるからだ。一人でいることは有り得ないのだ。

「ふふふ。では、よろしくお願いいたします」

 白い手袋を付けたシーリスの手にリョウもそっと自分の手を乗せた。


「おい、シーリス」

 こうしてリョウはシーリスたちと行動を共にすることにしたのだが、シーリスの後ろにいた第七の兵士たちは、いまいち事情が飲み込めていないようで突如として加わった艶やかな笑みを浮かべる女性に戸惑っているようだった。

 どこかそわそわと落ち着きのない様子でリョウの方を見ていた。特に深く開いた胸元と同じように露わになった背中、そして大きなリボンを背後に結んだ腰から臀部の曲線をちらちらと盗み見ては態とらしく咳払いなどをしつつ視線を逸らしていた。中々に男の欲求に正直ではあるが、意外な程に初にも思える反応である。

「そちらの方は?」

 紹介してくれと言わんばかりに集まった面々を代表してか、そのような問いを発したロッソにリョウは傷ついたような顔をして見せた。勿論、ちょっとした演技だ。少し服装が変わって化粧をしただけで元々の造作は変わっていないのだ。特にロッソはスフミ村での一件からリョウが女であることを知っている口だった。気付いてもらえないのは、ほんの少しだけ悲しかったと言うのも本心だ。

「まぁ、酷いわ。ワタクシのことをお忘れになったの? ロッソ。あんなに素敵な時間を過ごしたと言うのに………」

 スフミでのことを仄めかしながら、ほんの少しの恨みがましさを込めて哀しい顔をしてみれば、ロッソは仰天したように目を剥いた。青灰色の瞳が驚きに見開かれたまま固まった。掛けられた言葉をを上手く消化できていないようだ。

 そんなロッソの傍らで、

「おい、ロッソ。おまっ、こんな美人と知り合いだったのかよ!」

 アナトーリィーが声を低くして詰め寄った。

「え……いや……その……そんな…はずは…」

 普段の冷静さはどこにいったのか、ロッソは急にしどろもどろになった。明らかに狼狽している。

 そんな反応が返ってくるとは思わず、少し楽しくなったリョウは、そのままちょっとした演技を続けることにした。

 そして、今度はその矛先を変えてみた。

「いいえ。ロッソだけではないわ。アナトーリィーもアッカも、それにヤルタにグントも。グリーシャさんまで。皆さん、ワタクシのことをお忘れになるなんて……。なんて薄情な方々なのでしょう。ねぇ、シーリス?」

 大声を上げて笑いたいのを堪えながらその三文芝居のような成り行きを見ていたシーリスは、リョウからの振りに調子よく乗っかった。

「ええ。本当に。随分な話ですねぇ。全く男の風上にもおけない。嘆かわしいことです」

 悲しそうな顔をして目を伏せたリョウの儚げな姿にシーリスは宥めるようにリョウの肩に腕を回した。その口元は不自然に歪んでいたのだが(勿論、笑いを堪える為である)、それに気が付くには相手の兵士たちは気が動転していたようだ。

 名前を呼ばれた兵士たちは突然のことに吃驚仰天、互いに顔を見交わせて狼狽したように視線で会話をし合った。

「うぇぇえ?」

「え、いや、まさか」

 グントとヤルタが言葉にならない奇妙な声を上げた傍で、

「それは本当ですか?」

「お嬢さんみたいな人なら絶対忘れはしないんですがね」

 アッカとアナトーリィが信じられないというような顔をして心当たりの無い非難をした相手を見た。

 その横でグリゴーリィーは、無言のまま目を瞬かせていた。

 ユルスナールが自分に求婚紛いのことをした時に、てっきりシーリスから詳しい事情説明が行われているかと思っていたのだが、どうやら違ったようだ。リョウは確認の為にシーリスの方を見たのだが、当人は目の端に涙を浮かべて必死に笑いを堪えているようだった。

 こうなったら皆が気が付くまでだ。この際だからリョウはもう少しからかって遊ぼうかと思ったのだが、そうは問屋が卸さなかった。

 というのも。

「おうおう、みんな揃ってんな」

 リョウにとっても第七の兵士たちにとっても実に馴染み深い男がひょっこりと顔を出したからである。

「………ブコバル」

 野生の勘かは知らないが、実に計ったかのような現れ方をする男である。

「あ? どうかしたのか?」

 周囲を取り巻く微妙な空気を敏感に感じ取ったブコバルは、首を傾げながら綺麗に髭の当てられた顎を撫でた。ブコバルからは、囲まれていた時に女たちのものが移ったのか香水の甘い香りが漂ってきた。

 だが、直ぐにその場にいない人物に気が付いて顔をリョウの方に向けた。

「……ってか番犬はどうした、リョウ?」

 最後に告げられた名前に周りにいた兵士たちが呆気に取られた顔をした。

 だが、それには構うこと無く、リョウは聞き捨てならない言葉の方に反応していた。

「………番犬……て。もしかしなくともルスランのことですか?」

「ああ? そうに決まってんだろうが」

 他に誰がいるんだとばかりの顔をしたブコバルにリョウは何とも言えない顔をした。

 その表現が強ち間違ってはいないのではと思ってしまうのは、ここに来る前にあったスラーヴァとの大人げない遣り取りを思い出したからだろうか。ユルスナール本人がいないのをいいことに散々な言われようだ。

 と思ったのだが。

「なんだ? 何か言ったか?」

 ぞっとするような低い声が不意に切り込んできたかと思うとリョウの背後に影が差した。そして、さり気なく定位置となった腰に手を宛がわれ、そっと引き寄せられた。

 噂の主の登場に第七の兵士たちは顔を一斉に強張らせたのだが、その原因を作ったはずの張本人(ブコバル)は、全く気にも留めていないようで、何やら愉快そうな顔をして(うそぶ)いた。

「あ? なんでもねぇぞ。なぁ、リョウ?」

「え? あ、はい」

 いきなり振られて、取り敢えず話を合わせる為に合槌を打ったものの、

「ルスラン、こんな所でブコバル相手に威嚇してどうするんです? それでは言葉通り、まんま番犬ですよ」

 折角、上手く誤魔化そうとした話の流れをシーリスが元に戻してしまった。

 だが、それは確信犯であったのだろう。そっと仰ぎ見たシーリスは実に良い笑顔をしていたからだ。

 ユルスナールは仲間からの容赦ないからかいに嫌そうに口の端を下げたのだが、何も言わなかった。

 

 そうこうするうちに周囲に高らかな鐘の音が鳴り響いた。


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