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Messenger ~伝令の足跡~  作者: kagonosuke
第四章:王都スタリーツァ
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意外な組み合わせ


 侍女たちの控室からの帰り道、リョウはゲオルグと神官の二人の男たちが歩く後ろをそっと付いて行く形になった。

 こうしてみるとゲオルグは神出鬼没な気がした。いつもどこからともなく現れるのだ。

 ゲオルグは曲がりなりにも第三師団の団長だ。このような所にいてもよいのだろうかとリョウは疑問に思った。軍部の団長を拝命するには、ある程度剣技の腕が立たないと成れないものだと聞いていたからだ。だから当然、団長であるゲオルグも大会の方に参加をしているのではと思っていた。

 折しも、今は武芸大会の団体戦が行われている真っ只中だ。掲示板で見た組み合わせでは、ゲオルグの第三師団は、第二会場の組み合わせ(ブロック)で、三試合目にこの国の南西方向、キルメクとの国境警備を担う【西の砦】に詰めている一団である第九師団と一戦を交えることになっていた筈だった。

 少し前を歩くゲオルグからは、別段慌てたような様子は見受けられない。急ごうという感じもない。いつも通りののんびりとした自然体である。

 リョウは、ひょっとしたら、この男もシーリスのように大会へは不参加なのかもしれないと思った。それにしても、仮にゲオルグが不参加だとしても、仲間たちが戦う雄姿をすぐ傍で見届けなくてもよいのだろうかという疑問は依然として残るには違いないが。

 スタルゴラド騎士団の十ある部隊の中でも、第三師団は他と比べても若干、その任務の趣が異なっていた。ニキータやアルセーニィーが以前、食堂で話していたのだが、第三には目立って剣技を得意とするものはいないのだとか。軍部に所属をするのでその辺りは一応基礎的な訓練は受けているのだろうが、第三ではそれで身を立てるということにはならないとのことだった。そのような理由から団体戦ではいつも初戦で敗退をしているのだとか。術師を多く抱える第三師団にニキータとアルセーニィーの二人は親近感を覚え、贔屓にしているようだったが、そこは仕方がないのだと割り切っているようでもあった。

 そう言えば、以前、授業が一緒になった時、ニキータは術師の登録認可が下りた後、第三師団への登録を考えているというようなことを口にしていた。


 ゲオルグの隣を歩く神官は、物静かでどことなく影のある壮年の男だった。神官を表わす白い簡素な上下のいでたちが実によく似合っている。階級を表わす帯の色は濃紺だ。淡い紫色の帯を締めているレヌートよりは位が一つ下だが、それでも神官たちの中ではそれなりの高位に位置するに違いなかった。

 先を歩く二人の男たちの会話は、専らゲオルグが話をし、その隣にいる神官は合間に合槌を打つ程度であった。ゲオルグは決して喧しいという感じではないのだが、話題の引き出しも多く、じつに会話が巧みなようだ。

「ああ。リョウ」

 不意に前を向いていたゲオルグが後ろにいるリョウを振り返った。

「はい」

「先程、ザガーシュビリ殿の所にお邪魔していたのですよ」

 その言葉に、ゲオルグは随分と顔が広く様々な人脈を持っているのだと密かに思った。

「……そうなんですか」

 小さく目配せをするようにして微笑まれたが、リョウは相手の言わんとする所がよく掴めずに、実に面白味のない返事を返していた。

「レヌート先生を御存じでいらっしゃったのですね」

「ええ。互いに顔を見て認識をするという程度でしたが。まともに言葉を交わしたのは今日が初めてでした」

「…………そうなんですか」

 ゲオルグは何が言いたいのだろう。互いに顔は知っていたが、会話をしたのは今日が初めてだった。要するに態々、レヌートの所に何がしかの目的を持って訪ねたということが言いたいのだろうか。別段、深い意味はないのかもしれないが、ふとその裏を勘繰るような方向へ思考が行ってしまった。


 そのようなことに気を取られていると、

「キミはレヌートに師事をしているのか?」

 そこで初めて、リョウの左斜め前方を歩く神官が、こちらをそっと振り返った。

 淡い茶色の玉のような瞳がこちらを捕らえた。

「はい」

「では、いずれは【ユプシロン】に?」

「…………ユプシロン?」

 聞き慣れない単語に思考が止まった。

「ああ、神殿の神官になるということですよ。こちらではそのような呼び習わしがありまして。まぁ隠語のようなものでしょうか」

 リョウの戸惑いを感じ取ったゲオルグは、ご丁寧にも説明をしてくれた。

 要するに神殿に仕える神官を仲間内では【ユプシロン】と呼んでいるとのことだった。

 【ユプシロン】―――――どこかで聞いたことがあるような気がする。それはどこであっただろうか。

 だが、それをこの場で思い出すことはできなかった。


 リョウは雑念を振り払うかのように小さく頭を振ると、問いを発した神官を見上げた。まだ肝心の質問に答えていなかった。

「いえ。神殿入りする積りはありません」

 そもそも自分の性別を考えれば、それは不可能な話だった。

 小さく眉を跳ね上げた神官にリョウはそっと微笑んだ。

「道が閉じられておりますので」

 神官は、尚も訝しげな表情をしたが、リョウはそれを有耶無耶に流した。

 その隣で、ゲオルグが何かを判じるかのようにその目を細めていたことには、気が付かなかった。


 やがてリョウたちの一行は宮殿の区画から外に出ていた。

 日が大分高い所にある。地面に伸びる影が随分と短くなっていた。

 神官は、この後、神殿に戻るとのことで進路を東方向、左手に取った。こちらとは真逆の方向だ。

 そして、リョウはゲオルグと共に武芸大会の会場である宮殿前広場へ向かうべく進路を右手に取ったのだった。

「ゲーラさんは、お出にはならないんですか?」

 どうしても気になったので一応聞いてみれば、ゲオルグは何やら楽しそうに微笑んでリョウの推測を肯定した。

「そう言えば、第三は第九と当たるそうですよ」

 リョウは掲示板で見た対戦表の組み合わせを伝えていた。

「おや、キミは私の所属を御存じでしたか」

「ああ。はい。レヌート先生の親戚に第七の副団長をしている方が居まして、その方からお聞きしました」

 知り合いになった順序としてはあべこべであったのだが、向こうが自分の事を色々と調べ上げているとは思わないリョウは、相手に分かりやすいようにそのような説明をしていた。

 リョウの方とて、ゲオルグのことは【ゲーラ】という愛称しか教えてもらっていなかったのだ。ゲオルグ自身は、自分が軍部の人間であることを仄めかしはしたが、実際にどこに所属をしているのだとか、どのような立場にあるのかといったことは、何も口にしていなかった。

 気が付けば周囲からその男の情報を得ていた。

「そうですか」

 ゲオルグは何やら愉快そうにその目をうっそりと細めた。

「シーリス殿は何と?」

 そう言って横目にこちらを見下ろしたゲオルグは、妙に迫力のある微笑みを浮かべていた。

 リョウは、一瞬、たじろぎそうになったが、敢えて、気が付かぬ振りをしてさらりと流した。

「ゲーラさんが、第三の団長であると教えて頂きました」

 他にも色々と入ってきた情報はあるのだが、それはこの場では言わなくてもいいだろう。

「すみません。そのような身分ある方だとは知らず。これまでの御無礼、お許しください」

 初対面の相手に不躾な態度を取った積りはなかったのだが、軍部の中でいう所の上官に対して節度ある態度が取れていたかどうかは怪しいものだった。

 そう言って取り敢えず自己完結したように口を噤んだリョウに、ゲオルグは小さく喉の奥を震わせた。

「本当に、キミは控え目ですね。そのようなことなど気にすることはありませんよ。私の方も自分の肩書を明かさなかったのですから。おあいこです」

 ―――――――それに肩書に縛られるのは面白くありませんからね。

 そう言って茶目っ気たっぷりに片目を瞑って見せた。

 相手が見せた寛容な態度にリョウは小さく微笑んでいた。

「ありがとうございます」


 そこで不意にゲオルグが真面目な顔付きをした。

「リョウ。後でお時間を下さいませんか」

「はい?」

「キミが暇な時でよろしいので。少し、キミとゆっくりお話をしたいと常々、思っていましてね」

 その申し出にリョウはいよいよ【その時】が来たかと緊張した。

 これまで幾度となく軍部への誘いを口にされていたが、断りの言葉を告げても中々どうして相手は諦めた様子を見せなかったのだ。今一度、正式に断りの話し合いをしなければとは思っていた。いざとなったら忌憚なく腹を割って正直に話をしなければなるまいとさえ思っていた。要するに自分の性別のことも含めてだ。

 リョウは腹を括ると静かに頷いた。

「分かりました。この大会が終わって、養成所の方の授業との兼ね合いを見る形になるので今すぐ【いつ】とはお約束ができませんが」

 レヌートとイオータの二人の講師からは、其々、【祈祷治癒】と【鉱石処理】の分野で、一応講義の修了印を貰っていたのだ。他に選択している講義も佳境に入ってきていた。それらとの進み具合と兼ね合いを見て最終試験への申請を行う必要があった。なので時間を取るとしたら、術師の最終試験を受けた後になるかもしれない。

 その辺りのことを告げれば、

「ええ。キミの都合に合わせてもらって構いません」

 ゲオルグは鷹揚に頷いた。

 時間が取れたら伝令を使って知らせてくれて構わない。なるべくこちらもそちらの都合に合わせられるように調整するからと言われて、リョウは恐縮してしまったのだが、相手の申し出に静かに頷いて見せた。



 そして、再び辿りついた宮殿前広場は、多くの人々でごった返していた。午前中に比べても見物人の数は増えているように思えた。

 ゲオルグは広場から直ぐに会場の方には向かわずに、何故か広場入り口の外にある外郭部分の方へ足を伸ばした。

「どちらへ向かわれるのですか?

 不意に進路を逆方向に転じたゲオルグを不思議そうに見遣れば、

「少しお腹が空いたでしょう?」

 そう言って物売りの屋台が並んでいる方を指差した。


 そこには、集まった多くの観客たちを当て込んでか、様々な屋台が臨時に軒を並べていた。

 聞く所によると事前にこの街中を管轄している第四師団の方へ許可を申請して受理されれば、この場所で飲食物や雑貨などの販売ができるのだとか。

 リョウは、腹の辺りに手を当てて優雅な身のこなしで佇む気品溢れる男とそこに並ぶいかにも庶民的な屋台の組み合わせを見て、内心、可笑しみを禁じえなかった。どう見てもちぐはぐな感じがする。略式の軍服をきっちりと着込んだ男が、あのようなものを食べ付けているとは思えなかった。それもある種の偏見なのかもしれないが、致し方ない。

 仮設屋台の周りには、多くの人たちが集まっていた。焼いた肉の脂の匂い。菓子の甘い匂い。果物の清涼感溢れる甘い匂いも漂っている。物売りの威勢の良い掛け声。まるで街中の小さな市が、そこに突如として現れたかのようだった。

 リョウの内心の疑問を感じ取ったのかは知らないが、

「意外にイケるんですよ」

 繊細な面立ちの上品な口元が、そのような台詞を紡いで小さく口角が上がる。

 リョウがその意外な組み合わせに目を白黒させている間に、ゲオルグは一人、屋台の方へ足を向けたかと思うと何やらそこで売られているものを購入し、小さな紙袋を二つ手に戻ってきた。

「はい。どうぞ」

 手渡された口が開いた小さな袋の中には、こんがりと硬めに焼いたパンの間に野菜と香辛料を付けて焼いたと思われる【クーリツァ(鶏肉)】だろうか、何かの肉を挟んだものが入っていた。

「あ、お幾らでしたか?」

 リョウは慌てて、代金を払おうと小銭を入れていた上着の内ポケットを探ったが、ゲオルグに要らないと断られてしまった。

「美味しいですよ?」

 言った傍からゲオルグは、その場で同じ紙の包みに齧り付いていた。

 それは、やはり少し違和感を覚えてしまうような光景だった。これがブコバルであるならば、たとえ貴族だと言われても妙な感じは受けないのだろうが(リョウも大概失礼なことを考えている)。意外や意外。上品な有閑貴族のように見えるゲオルグもこのようなものを口にするのだと知って、リョウは慌てて脳内にあるゲオルグの人物像(プロフィール)に訂正を書き加えた。

 お祭りだからなのか、それともゲオルグ自身がこういう性質なのか、ひょっとしたらその両方なのかもしれないが、リョウにはいまいち判別がつかなかった。


「あ、はい。頂きます」

 折角なので、リョウもその場で御相伴に預かることにした。包みを捲って齧りついてみる。シャキシャキとした野菜の歯ごたえと油のある肉の旨味とが口に広がって、思った以上に美味しいものだった。香草を加えて焼いた肉が、肉本来の甘みを上手く引き出している。香草の香りが肉の脂をしつこくないものにしていた。

「………美味しい」

 吃驚して手にした包み紙の中身を見たリョウに、

「ね? 中々でしょう?」

 ゲオルグは少し得意そうに笑った。そんな仕草をなんだか子供っぽいと思ってしまったのはここだけの話だ。

 見かけに寄らずゲオルグは買った包みの中身をぺろりと平らげてしまった。こういう所は、やはり細くとも男なのだと思った。対するリョウは漸く半分を食べたぐらいで、相手を待たせる訳にはいかないので、そのまま食べながら歩くことになった。行儀が悪いかとも思ったが、周囲には似たような食べ歩きをしている男たちの姿がある。これもお祭りならではのことなのだろう。リョウも道々齧りながら、ゲオルグと一緒に歩いた。



 会場の方に戻り、リョウはそのまま第一会場の方へ向かうことにした。ゲオルグは第三の兵士たちが対戦する第二会場の方へ行くのかと思われたのだが、何故かそのままリョウと共に第一会場の方へ行くという。

「あの、いいのですか?」

 控え目に自分は一人でも大丈夫だから第三の方へ行って構わないと告げたのだが、

「ええ、いいんですよ」

 自分の所は元々剣技に力を入れている訳ではないので、団体戦ではいつも初戦止まりなのだと実にあっさりとその訳を口にした。

 リョウ自身、それでは団体戦に出場する兵士たちが報われないのではと思ったのだが、ゲオルグにはゲオルグなりの考えがあり、部下への接し方があるのだろうと思い、それ以上は口にはしなかった。


 第一会場へ向かう途中、第二会場の前で一際、大きな歓声が上がった。漏れ聞こえる人々の会話から第三試合が終わったことが知れた。掲示板が張り出されている所では早速、係の兵士が第九師団の方に赤い丸を付け、次の第五試合の方へ赤い線をなぞっていった。

 どうやら第三は敗退してしまったようだ。

「やはり駄目でしたか」

 その様子をちらりと横目に見たゲオルグは、実に淡々とした感じの感想を述べた。特に何の感慨も抱いていないようである。

「さて、向こうはどうなっているんでしょうかねぇ」

 のんびりと口にするとリョウの背中に手を当てて促すように歩き出した。


 ゲオルグはあろうことか、そのまま貴族の婦女子たちが集まる特別席の方に向かおうとした為、リョウは慌てて共に行くことを固辞した。

 あの場所には、恐らくアリアルダがいるだろう。さっきの今で、顔を合わせたくはなかった。それはきっと向こうも同じはずだ。

「リョウ? どうしました?」

 突然、立ち竦んだ相手を訝しく思ってか、ゆっくりと振り返ったゲオルグに、リョウはこのまま友人たちを探して合流すると口にした。

「こちらの方が、邪魔が入らずにゆっくりと観戦できますよ?」

「すみません。お気持ちは有り難いのですが、オレみたいなのがそこに入る訳にはいきません」

 リョウの言葉にゲオルグは気にすることはないと微笑んだ。

「心配要りませんよ。私が一緒にいれば大丈夫ですから」

「いえ。申し訳ありませんが、本当に無理なんです。ゲーラさんは、どうかそちらで観戦なさってください。オレは、あっちの方へ行きますから。多分、友人たちがいると思うので」

 言葉を重ねるゲオルグに対し、リョウは頑なに特別席の区域へ立ち入ることを拒んだ。

 小さく頭を下げて、そのまま踵を返そうとしたリョウに、ゲオルグは驚くべき反射神経の良さでその腕を掴んでいた。

 俯いたリョウの顔色を見て、ゲオルグは内心、驚きつつもそれを表には出さずに微笑んだ。

「リョウ、なんて顔をしているんですか?」

 そう言って、傷の付いていない右頬の辺りをそっと撫でた。

 そう言われても鏡がないので自分ではどんな顔をしているかなんて分からなかった。だが、恐らく酷い顔になっているのだろう。薬草の成分が効き始めている所為か、左の頬の部分が、じわりと痺れるように温かくなっているのが分かった。

「すみません」

 小さく謝罪の言葉を口にしたリョウをゲオルグが軽く笑った。

「何を謝るんです?」

「すみま………あ、いや、そうではなくて」

 再び癖になりつつある言葉を口にしそうになって、慌てて気まずそうに視線を泳がせた。

 ゲオルグは、リョウの過剰とも思える拒否反応に特別席に顔を合わせたくない相手でもいるのだろうかと思った。ひょっとしたら、その左頬を腫らしている原因もその辺りにあるのではないかと思った。下世話な勘繰りと言ってしまえばそれまでだが。

「分かりました。それではあちらにしましょう」

 ゲオルグは小さく息を吐くとリョウの腕を取ったまま、特別席からは離れる方向へと歩き出した。

「あの、ゲーラさん。ゲーラさんはどうぞあちらで。オレは一人で大丈夫ですから」

 一緒について来ようとするゲオルグにリョウは自分の個人的な事情に相手を付き合わせる訳にはいかないと慌てたのだが、

「リョウ、そんなつれないことを言わないでください」

 振り返ったゲーラがほんの少し哀しそうにその繊細な眉を下げた。

「私が共にいては迷惑ですか?」

 畳みかけるように儚い風情で言われて、リョウは何故か妙な罪悪感に似た気分に囚われた。

 こういう時、ゲーラの持って生まれた美貌という名の武器は、思わぬ方向で作用した。恐らく、その効用をよく知る本人は確信犯で使っているのだろう。

 リョウは酷く申し訳ない気持ちになって、

「いえ、とんでもない」

 すぐさま否定の言葉を口にしたのだが、その瞬間、自分の鼻先でゲーラが実に眩しい笑みを浮かべた。

 それを目の当たりにしたリョウは、内心、相手の手中にまんまと嵌ってしまったのではと思った。

「すみま……」

 と再び、同じ言葉を繰り返そうとして、

「いえ、ありがとうございます」

 リョウは言葉を改めた。

 相手が気を遣ってくれたことが分かった為、謝罪よりも感謝を表わす方がいいだろうと思った。

 改められた言葉にゲオルグは穏やかに微笑んで見せた。


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