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Messenger ~伝令の足跡~  作者: kagonosuke
第四章:王都スタリーツァ
145/232

風変わりなお茶会

 そうして案内された場所は、とある一室の緑溢れる庭に面したテラスのような場所だった。

 財務官は慣れた仕草で側用人のような使用人にお茶の用意を頼んだ。リョウはそれを半ば恐縮しながら見ていた。

「どうぞ、こちらに」

 促されるようにして席に着いた。人工的に水路を作り、水の流れを引きこんでいるのだろう、仕掛け噴水のような小振りの噴水が、透明な形を刻々と変え、遊ぶ水が差し込む陽射しにきらきらと反射して眩い光の瞬きを散りばめていた。そこから水のせせらぎが聞こえてきた。

 その庭の美しい景色を前に、リョウはいつの間にか緊張を解いていた。

 一年を通じて比較的温暖な気候であるこの国では、冬場であっても庭先に様々な花が咲いていた。丹念に手入れが施された綺麗な庭だ。木々の枝はきちんと刈り揃えられている。小さな可憐な花が寄り添うように咲いていた。色は淡い薄紅色と黄色、それから白が多かった。

「素敵なお庭ですね」

 リョウは小さく感嘆の息を吐いていた。

「お気に召していただけたようですね」

 財務官が嬉しそうに微笑んだ。

「ここはちょっとした穴場なんです。息抜きにはぴったりですから」

 確かに、ここには雑音が全くなかった。まるで小さな林の中に紛れこんだかのような錯覚を覚える。だが、目の前にある小振りの人工的な噴水が、この場所が自然のものではないことを知らしめていた。

 やがて制服に身を包んだ女官と思しき女性が現れて、静々とお茶の用意をテーブルの上に並べて行った。そして、丁寧な所作で一礼をすると去って行った。


「どうぞ」

 お茶を勧められて、リョウは素直に茶器に手を伸ばした。

「頂きます」

「はい。どうぞ」

 一口啜るとほんのりとした甘みが口内に広がった後、微かな清涼感が後味として残った。恐らく、茶葉に香草の類を混ぜ合わせているのだろう。上品な味わいだった。

「美味しいです」

 ほっと息を吐いて微笑んだリョウに財務官の男も穏やかに口元を緩めた。

 イオータの所で飲んだお茶も美味しかったが、ここのお茶も美味だった。

 イオータも一緒に来ればよかったのに。一人あっさりと逃げるように去って行った小柄な背中を思い出し、リョウは老講師の余りにも冷たい仕打ちを半ば恨めし気に思い返していた。

 

 リョウは、静かに自分をお茶に誘った男を見た。

 そこで内心首を傾げていた。初対面であるはずの自分の何が男の興味を引いたというのだろうか。何か個人的な話しがあるのだろうかと思ってもみたが、それも普通に考えれば可笑しな話であるから、単なる暇潰しか。もしかしたら、この人は好奇心の旺盛な性質で、毛色の変わった人間が珍しく映ったのかもしれない。

 それにしてもお茶に誘うなら、自分のような相手ではなく、もっと見目の良い若い女性を誘ったらよいのにと思ってしまう。品の良い、いかにも良家の出身と思える男の空気ー貴族の淑女方にはさぞかし人気がありそうだーにそのような他愛ないことを思った。それに自分は、イオータとは違って養成所に通うまだまだ半人前のしがない学生だ。先程の鉱石処理のことを話すにしても、とてもじゃないが財務官にとって何か有益な話ができるとは思えなかった。

 王都の宮殿に近い区画で出会う男たち、要するに上流階級と思しき男たちは、実に言葉が巧みだった。それに接触過多なきらいもある。あくまでも自分の感覚的なものだが、強ち間違ってもいない気がする。皆、躊躇いもなく手を肌ー大抵が頬だーに触れさせた。

 そしてこの男も、この例に漏れなかった。


 こちらとしては別段他意はなかったのだが、考える時の癖でじっと相手の顔を見つめてしまっていたようだ。

 感情の読めない笑みを刷いていた男の口元が、目の前でゆっくりと大きな弧を描いた。

「ふふふ。キミの瞳は不思議ですね。こうして見つめられていると吸い込まれそうな気がしますよ」

「あ、すみません」

 リョウは、余りにも相手を不躾に見てしまっていたことに気が付いて咄嗟に目を伏せた。

 そして、ばつの悪さを誤魔化すように視線を庭先へ転じた。

「ここは静かな所ですね。風が心地よい」

「ええ」

 暖かな日差しにリョウは、身に着けていた外套の襟元を寛げた。

 そこへ声が掛かった。

「首をどうかされたのですか?」

 リョウの首元には、昨日、神殿管轄下の治療院の界隈でちょっとした揉め事に巻き込まれた時に出来た刃物の傷跡があった。あの後、すぐにレヌートから消毒を受け、軟膏を塗ってもらい、大げさかとは思ったのだが包帯を巻いたのだ。

 因みに背中の蹴り上げられた部分は、案の定、痣になっていて、夜遅くに寮の部屋に戻って来たセレブロに軟膏を塗ってもらった。その時に共に首にも薬を塗り直して呪いの文言を自分の為に唱えたのだが、他人には上手い具合に作用をしても、自分に対しては治癒の働き掛けがどうも上手く作用しないことが分かったのだ。それは、ちょっとした盲点でもあった。

 なので、軟膏を塗って手当てはしたのだが、思いの外、切り込みが深かったようで治りが悪かった。油断をすると傷口が薄く開いて血が滲んだ。ひょっとしたら、また血が染み出しているのかもしれない。

 襟元を緩めた時にその包帯の部分が見えてしまったのだろう。

「これは、ちょっとうっかり引っ掛けてしまって」

「血が滲んでいますよ」

 そう指摘されて、リョウは咄嗟に自分の首元に手を当てた。

「すみません。お見苦しいものを」

 苦笑を浮かべたリョウに財務官はそっと微笑んでから眉を寄せた。

「いえ。大分、深いようですが、大丈夫ですか?」

 だが、心配される程痛みはなかった。

「あ、はい。後で薬を塗り直しますので大丈夫です。どうぞお構いなく」

「今、薬をお持ちなのですか?」

「はい。鞄の中に」

「それでは今、手当てをしてしまった方がいいでしょう。包帯はありますか?」

「はい」

 矢継ぎ早に有無を言わせない感じに言葉を継がれて、リョウは目を瞬かせた。対面に座る財務官の男は真剣な面持ちをしていて、それに少し気圧された。

 リョウは観念するように外套を脱ぐと鞄の中から御手製の軟膏と油紙、そして、包帯一式を取り出した。

「動かないで下さいね」

 そう言って財務官は慣れた手付きでするするとリョウの首元の包帯を取って行った。

 テーブルの上に置かれた白い包帯には、くすんだ血が滲み出ていた。なるほど、これならば替えた方がよいと心配をされても仕方がないだろう。

 空気に触れた傷口はひりひりとした。鏡が無いので自分では良く分からないが、薄らと傷口が開いてしまったのかもしれない。大した傷ではなかったはずであるのに思いの外、出血があることを内心訝しく思っていた。


 財務官は、痛ましそうに繊細な眉を顰めた。そして、傷口を改めると小さくぽつりと呟いた。

「これは刃物の傷ですね。ですが単なる刀傷ではない。刃先に毒が塗ってあったのではありませんか?」

「毒………ですか?」

 思いがけないことにリョウはぎょっとして、それから一気に肝を冷やした。呆けたように財務官の顔を見ていた。

「傷口が塞がり難くなるようにするものです。ほんの少しの掠り傷でも、放って置けば傷跡が時間の経過と共に深くなるんです。この包帯の部分に薄らと紫色が混じっているでしょう? それが証拠です」

 ―聞いたことはありませんか?

 それを聞いてリョウは顔色を無くした。それが本当ならば、道理で治りが悪い訳だ。掠り傷であったはずであるのに段々と血が滲むまでになったことを成る程と思った。

 それと同時に、薬草の講義の際に用い方に寄っては毒にも薬にもなるということで、そういう作用をする薬草(毒草)のことを学んだことを思い出した。

 リョウは、鞄の中から、御手製の帳面を取り出すとその講義の箇所を探して開いた。そこには、そのような作用をすると認識されている薬草の一覧とそれに対処する中和剤ー要するに毒消しだーが記されていた。そしてその中から、とある箇所を見つけた。自分のものと似たような症状だ。毒草の名は【ヤード】。白い小さな花を咲かせる野草の一種で、その根の部分を磨り潰して利用するものだった。それに施す中和剤は【プラチヴァーダ】。野に生える草だ。

 生憎、その中和剤(毒消し)は手持ちにはなかった。毒の作用としては即効性のない鈍いもので直接、命に関わるものでもないので、後でレヌートの所か養成所内の医務室に寄るしかないだろう。【ヤード】の場合は、ある程度時間が経過しないとその作用が表れないので、昨日の時点で気が付くことができなかったのだ。まさか、こんな所で毒草に当たるとは思ってもみなかった。【毒】と聞いて一瞬、冷や汗が出たが、一先ず打つ手が分かり、リョウは冷静でいられた。


 取り敢えず、この場では止血をする必要があるだろう。リョウは、鞄の中に入れていた薬草の入った袋の中から、凝固処理を施したストレールカを取り出した。切り傷などには抜群の効果を見せるものだ。解除の呪いを唱え、一瞬の躊躇いの後、その生の葉を口に入れて噛み砕いた。予想通り、何とも形容し難い恐ろしい程の苦みが口に広がったが、我慢した。そして、柔らかくした葉を外した包帯で抑えていた傷口に宛てがおうとしたところで再び、隣から声がかかった。

「貸して御覧なさい」

「いや、大丈夫です」

「それでは見えないでしょう?」

「あ、はい。では、お願いします。傷に張り合わせて下さい」

 自分の唾液塗れになったものを他人に触れさせるのはどうかと思ったが、それを心配する前に強烈な痛みが傷口に広がってそちらに気を取られた。

 傷口が恐ろしくしみた。だが、その分ちゃんと成分が入り込んでいるということでもあるので、ぐっと歯を食いしばってその痛みを堪えた。その上に軟膏を塗った油紙を置いて新しい包帯を手に取った。

 駄目元で油紙の上から手をあてがい呪いの文言を小さく紡いだ。

 包帯を巻く時にも財務官の男に手伝って貰った。

「あの、一重目を少しきつくお願いできますか」

「分かりました」

 滲まないようにするために少々不自由になるが、きつくなるようにお願いした。首元はどうしても自分だと加減をしてしまうので緩くなりがちだからだ。

 そうして一通り、手当てを終えた。

「先程ものは、中和剤ではありませんね?」

 それなりに薬草の知識があるのか、財務官が目敏く尋ねた。

「あ、はい。生憎、【プラチヴァーダ】が手元になかったので、取り敢えずの応急処置です。ですが、きっとこちらの方が効き目はあると思いますから」

 そう言って残る痛みに引き攣った笑みを浮かべたリョウに財務官は眉を顰めた。

「毒性の弱いものとはいえ、毒を甘く見てはいけません。適切な処置をしなければ後々大変なことになります。最初の判断を誤ることが重大な過失に繋がるのですから」

 思いの外、真剣な眼差しにリョウは息を飲んだ。

「術師ならば尚更ではありませんか?」

「そうですね」

 尤もな指摘にリョウは神妙に頷いた。そして、後で必ず医務室か師として仰いでいる祈祷治癒師の所に行くことをきつく約束させられた。

「それにしても、随分と手慣れていらっしゃいますね」

 話しの流れを変えるように、リョウは先程の男の手際の良さを口にしていた。

 対する男は、お茶の入った茶器を優雅に傾けながら、ひっそりと笑った。

「私には兄と弟がいましてね。小さい時から年中傷をこさえて駆け回っていたものですから。自然と身についてしまったんですよ」

 ―今では残念ながら、滅多にそういう事態にはなりませんが。

 そう言って小さく肩を竦めて見せた。

「そうですか」


 そんなこんなで思いがけず和やかな時を過ごしていると、

「おい、ケリーガル。いきなりあのような使いを寄越してどうしたというのだ?」

 一人の男が前触れもなく庭先に現れた。

 リョウは、その男の姿形を見て息を飲んだ。

 現れたのは、男盛りの壮年の域に入る美丈夫だった。がっしりとした逞しい体つきに精悍な顔立ち。それを縁取るように男らしい髭を蓄えている。男は、軍部のものと思しき制服に身を包んでいた。だが、これまでリョウが目にしたものとはその形や色合いが随分と違っていた。

 だが、何よりもリョウの視線を釘付けにしたのは、きっちりと後ろに流されたその男の髪の色だった。

 その男の髪は、銀色だった。自分が良く知るとある男と同じ色である。その色が、この国でも余り多くないことをこれまでの経験上知っていた。そして、現れた男の瞳は、この目の前に座る財務官と同じ淡い空色をしていた。

 突然、現れた体格の良い男に財務官の男は驚くでもなく、鷹揚に微笑んだ。

「ああ。兄上。ちょうど良かった。お茶をしていた所だったんですよ」

「それは見ていれば分かる」

「兄上もいかがですか? どうぞこちらへ」

 財務官である男は、新たに現れた男の事を兄と呼んだ。血の繋がりがあるのかは分からなかったが、少なくとも戸籍上は兄弟ということなのだ。

 こうして並んでいると顔立ちは余り似ていないが、どことなく身にまとう空気というか全体的な雰囲気が似ている気がした。ということは血が繋がっているのかもしれないとリョウは密かに思った。

 そこまで考えて、不意にリョウの鼓動は一つ不規則に跳ね上がった。

―まさか。

 この瞬間、頭の隅を掠めた莫迦げた思い付きをすぐさま消し去った。

 自分が良く知る男には二人の兄がいるとのことだった。だが、その男と目の前の二人の人物を繋げるには、偶然にしても余りにも突飛なことのように思えたからだ。


 軍部の隊服に身を包んだ貫禄のある男と目が合って、リョウは咄嗟に目礼を返した。

 その瞬間、酷薄そうな造形をしている男が目を見開いて、隣にいる財務官の男に視線で何がしかを問うたことにリョウは気が付かなかった。

「これは、また珍しい客人がいたものだ」

 そう言って男らしい笑みを浮かべると空いていた席にどっかりと腰を下ろした。

「お邪魔しております」

 何と言ったものか分からなかったのだが、兄弟の親密な空気の中に紛れこんでいることは分かったので、そう口にすれば、何を思ったのか、銀色の髪の男は可笑しそうに豪快に笑った。

 自分が良く知る男は、こんな風な笑い方をしない。どちらかと言えば、ひっそりと噛みしめるように喉の奥を鳴らすのだ。髪の色と顔立ちがどことなく似ている気がするが、やはり、この目の前の人物は自分の知る男とは違った。そのささやかなズレが、妙な違和感のような不思議な感覚を引き起こしていた。


「私の顔に何かついているかな? 【チョールナヤ(黒い)コーシェチカ(子猫ちゃん)】」

 重なりそうで重なり合わない妙な感覚に、知らず男の顔を見つめてしまっていたようだ。

 男の淡い空色の瞳がからかうように光って、リョウは咄嗟に目を伏せると不躾を詫びた。

「すみません」

 そう言って恥じらうように目元をほんのりと赤らめた。先程から自分が柄にもないことをしている気がした。何だか調子が狂ってしまう。

「ハハハ。成る程。確かにこれは面白い」

 その言葉にリョウはそっと顔を上げた。

 いつの間にか、兄上と呼ばれた男の前には新しいお茶が入った茶器が置かれていた。

 リョウは視界の隅に揺れる使用人の女性の前掛け(エプロン)の紐をぼんやりと目で追った。

「キミもお代りをどうですか?」

「あ、はい。ありがとうございます。頂きます」

 先程、生のストレールカを噛み砕いた所為で口の中はまだまだ苦いままだった。お茶のお代りがもらえるのは助かった。


 そして、奇妙な兄弟と思しき男たちとのお茶会は、まだまだ続いたのだった。

 テーブルの上にあったお茶菓子も一緒に勧められて、リョウは御相伴に預かることにした。イオータのことだ。きっと後で養成所の講師の部屋ー巣窟と呼び声の高いあの部屋だーに顔を出したら、お茶やお菓子の事を聞かれるかもしれない。イオータには別れ際、後で自分の所に顔を出すようにと言われていた。

 リョウは、財務官の男がなぜ自分をこの場に誘ったのか、良く分からなくなっていた。先程の鉱石処理の一件を聞かれるかと思いきや、なぜか話はそちらの方には触れられなかった。その代わりに他愛ないような雑談が続いた。宮殿内でのおかしな習慣やら名物だと目されている人物の話などだ。財務官の男の語り口は軽妙で実に愉快だった。

 その合間もリョウは専ら話に合槌を打ちながら、チラチラと横目に精悍な顔つきの軍人の方を盗み見ていた。

 自分では隠している積りであっても、それは相手にはどうやらあからさまであったようだ。

「ふふふ。兄上のことが随分と気になるようですね」

「あ、すみません」

 再度の指摘に、リョウは顔を羞恥に赤らめると視線を逸らした。

「何か気になることでもあるのか?」

「ええ。遠慮せずに仰ってください」

 二対の同じ色の瞳に見つめられて、リョウは間の悪さを誤魔化すように小さな微笑みを浮かべた。

「あの……その……そちらの方が、知り合いに似ている気がするものですから」

「おやおや」

「その人も同じように銀色の髪をしているので、つい気になってしまって」

 ―すみません。

 その言葉に財務官は、興味を引かれたようにそっと身を乗り出した。

「その人は、もしかして男性ですか?」

「はい」

「なるほど」

「あの、こちらでは余り銀色の髪の方はお見かけしませんよね?」

 これまでこの国で見聞きした経験が正しいものであるのかを口に上せてみれば、

「そうですねぇ。珍しい方かもしれませんね。私が知っているのも、一人、二人、三人……。存命している中ではその位でしょうか」

 弟の飄々とした口振りに兄である武官の男は、内心笑いたいのを堪えるように口の端を歪めて辛うじて表情を取り繕っていた。口元にある立派な髭が、その表情を隠すのに一役買っていたようだ。

 それをちらりと横目に見ながら弟は尚も質問を重ねた。

「そのお知り合いは、お若いのですか?」

 その問いにリョウはそっと微笑んだ。

「恐らく」

 面と向かってユルスナールに年齢を尋ねたことはなかったが、大体、自分と変わりがない位だろうとは踏んでいた。

「キミは、学生かなにかか?」

「あ、はい」

 リョウは自分が養成所に通う学生であることを告げてから、申し遅れたと口にして、自分の名前を名乗った。

 その時に目の前の男たちの名前を知った。財務官の男はケリーガルと名乗り、その隣の精悍な顔立ちの武官は、ロシニョールと名乗った。

「リョウ………ですか。耳慣れない響きですね」

「生まれはどこだ?」

 不意に口にされた問いにリョウはそっと目を伏せた。

「この国ではありません。とても…………遠い所です」

 小さく漏れたのは本音だった。この目の前の男が、自分が良く知る男に似ているからであろうか。似たような顔立ちに似たような色彩を持つこの男を前に、なぜか嘘はつきたくないと思ってしまったのだ。

「それ以上は、この場ではどうかご容赦を」

 そう言って貝の如く口を噤んでしまった。

 不意に変化を見せた空気に二人の男たちは目配せをし、この分野でそれ以上の質問を控えた。随分と繊細(デリケート)な問題のようだと判断した。その憂いを帯びた横顔は、外見に反して酷く老成しているように見えた。

 リョウは、相手に気が付かれないようにそっと眦を指で拭った。不意に捕らわれる感傷をどうも上手く制御(コントロール)することができない。その傾向は、恐らく神殿での一件が影響を及ぼしているのだろう。初対面の人たちにこのような醜態を晒す訳にもいかなかった。


「ワタシが知っているその人は、ロシニョールさんに少し面立ちが似ているかもしれません」

 停滞した空気を入れ替えるようにリョウは顔を上げた。

「おや、こんなに恐い顔をしているんですか?」

 こちらの意図を汲んだのかは分からなかったが、ケリーガルがすぐさま茶々を入れた。

 リョウは、何かを思い出すように柔らかく微笑むと、小さく首を横に振った。

「いいえ。第一印象は誤解をされてしまうかもしれませんが。とても優しい人です」

 そこで何かに思いついたように小さく笑った。

「お二人とも実にお上手なので、このままではうっかり余計なことまで口走ってしまうかも知れませんね」

 軽く流すように飄々と肩を竦めるとお茶に口を付けた。


「不躾を承知で尋ねるが……」

「はい、何でしょう?」

 ロシニョールが真面目な顔をしてこちらを見ていた。

 瞳の色合いは違うが、ユルスナールがあと十数年、年を重ねて髭を生やしたらこのような風貌になるのだろうか。不思議と湧いた親近感のようなものにリョウは気をつけないと本当に尋ねられるままに余計なことまで白状してしまいそうだと思った。

「キミは………男か? それとも……女か?」

 リョウは、一瞬、虚を突かれた顔をした。そして、すぐに可笑しそうに声を立てて笑った。

 これまで面と向かって自分の性別を堂々と尋ねられたことはなかった。この格好をしている限り男であることを疑われなかったからだ。そのようなことを聞いたのは、ユルスナールぐらいなものだった。

 リョウは、この男がユルスナールの血縁者なのではないかと思い始めていた。

 直截的なもの言い。躊躇いもなく核心に切り込んでくる。

「何かおかしいことでもありましたか?

 兄弟は顔を見交わせると笑っているリョウに不思議そうな顔を向けた。自分たちが笑われている理由が、全く理解できていないようだった。

 リョウは、ロシニョールとケリーガル、同じ色彩を持つ淡い空色の瞳を交互に見た。

 そして表情を改めると不意に真面目な顔付きをして見せた。

「どちらだと思われますか?」

 それから目を細めるとどこか挑発的に口元を吊り上げた。それは、艶やかな女の笑みだった。

 だが、それをすぐに引っ込めて、声を潜めるとすぐに答えのヒントとなるような問いを重ねていた。

「あの、宮殿のこの区画では、女人禁制ではありませんよね?」

「ああ」

 その声に一先ず、安堵の息を吐いた。

「兄上、どうやら我々の負けのようですよ?」

 ケリーガルが声を立てて笑った。

「では……お前は……」

 目を瞬かせながら躊躇いがちにされた言葉に、

「はい。ご想像の通りでよろしいかと」

 リョウも穏やかに微笑み返していた。

 そして、補足するように、自分のこの格好は個人的な趣味というか利便性を考えてのことで、別段深い意味はないこと。自分としては別に隠している積りはないのだが、この格好をしているとこの国ではどうも少年にしか見えないようで、それを逆手に取って利用しているという自覚はあるということ。一人で行動をすることが多いので、それは自分の身を守る一手段でもあることを話した。

 少々、あけすけな感がなきにしもあらずであったが、一通り話し終えたリョウは、どこかすっきりとした顔をしていた。

「ですが、こちらでは男として扱われることのほうが多いですし、その方が慣れていますから。どちらでも結構ですよ」

 そう言って茶目っ気たっぷりに微笑んだリョウに二人の男たちは顔を見交わせると苦笑を滲ませたのだった。


***


 そんなこんなで、ちょうど風変わりなお茶会が行われているのと時を前後して。

 一人の男が、些か焦りの色をその表情に浮かべながら、軍部の詰め所であるアルセナールから宮殿に向かって足早に歩いていた。

 その男は、酷く焦燥に駆られていた訳だが、それは傍目には良く分からないかもしれない。

 だが、一見、無表情に見えてもその男の眉間に深い皺が寄っていることに気が付けば、男がそれなりの感情を抱いていることが分かるだろう。その苛立ちは、男の大きな歩幅にもよく表れていた。長い脚を繰り出す度に腰に佩いた長剣が揺れ、鈍い音を立てた。その勢いはややもすれば駆け出しそうな程だ。それを漸くの事で自制している。そんな印象を受けた。


 ユルスナールの脳裏には、先程、廊下ですれ違った第二師団・団長スヴェトラーナの呑気な声がこだましていた。

 ―そう言えば、お前の次兄殿とこの間の養成所に通うという、確か、リョウと言ったか、あの小僧が連れ立って歩いているのを見たぞ。

 一頻り、情報交換という名の雑談をしてから、不意に思い出したというように告げられた言葉にユルスナールは虚を突かれた顔をした。

 ―なんだと?

 次兄のケリーガルとリョウが共にいた。それは余りにも性質の悪い冗談にも思えた。

 だが、口から飛び出す言葉は辛辣だが、基本的に真面目な性質であるスヴェトラーナが、このような場で冗談の類を口にするとも思えなかった。

 顔を引き攣らせたユルスナールを余所にスヴェトラーナはすぐに片手を振って用は済んだとばかりに踵を返してしまった。

「スヴェータ! 見かけたのはどこだ?」

 遠ざかって小さくなった同僚の背中にユルスナールは、大声を張り上げていた。それも自制心の強いこの男にしては、珍しいことだった。

 スヴェトラーナは大儀そうに首だけ振り返ると一言、

「南の仕掛け噴水がある方だと思うぞ」

 それだけ口にするとさっさと背中を向けてしまった。


 父と兄たちを交えて己が心積もりを告白した夜から、まだ数日しか経っていなかった。

 ユルスナールには、中央の財務官である次兄がリョウと接触を持つことになった経緯が全くもって想像付かなかった。

 黒髪に黒い瞳で養成所に通う学生である。それだけの情報があれば、次兄ならばすぐにリョウに辿りつくだろうとは思っていた。最後、本人を目の前にした時点で、性別の所で首を傾げるかも知れないが、自分が惚れた女であるという決定的な切り札(カード)があるのだ。そこには多少は引っ掛かりを覚えたとしても、すぐにそういう観点から見れば、相手の性別にはすぐに気が付くだろうとは思っていた。

 ユルスナールは、大いに頭を抱えたい気分だった。リョウを兄たちに紹介するのはやぶさかではなかったが、それも場を選んで、当然のことながら自分の立ち会いがあってのことだと考えていたからだ。


 次兄のケリーガルは、自分の興味が惹かれたことに対しては、割りと一直線だった。どちらかと言えば母親に似たその生来の顔立ちから柔らかで人当たりのよい印象を与えるが、それをそのまま信じてしまうと痛い目に遭う。そんな外見を裏切る強かな一面を持っていた。厄介なことに次兄には愉快犯的な一面もある。リョウを相手に自分の幼い頃のあれやこれや、過去の封印しておきたい出来事の類を「うっかり」口にされようものなら堪らなかった。

 そのことを抗議しても後の祭り。きっと「面白かったから、ついね」との一言で、悪びれた所もなく微笑んで、さらりとかわされてしまうだろう。


 ユルスナールは宮殿の区画に辿りつくと、門のところに立っていた衛兵に対する型通りの挨拶もそこそこに入口を足早に通り過ぎた。二人の衛兵は、冷静沈着で物静かな性質であると評判の第七師団の団長が常にない必死の形相ーというのは、兵士の勘からも感じ取れたのだーで、門を抜けて行ったという珍事に目を丸くして顔を見交わせたのだとかいないとか。


 それはさておき。

「兄上!!」

 美味しいお茶とお菓子を囲みながらの談笑の合間に突如として低い男の声が轟いて、リョウは何事かと肩を揺らした。

 そして、庭先に回り込むようにして現れた男の方は、落ちかかる前髪をそのままにそこに広がる光景に我が目を疑った。


「おやおや、ルスラン、どうしたんですか? そんなに血相を変えて」

 窘めるようにケリーガルは不調法にも突然乱入してきた弟を見遣った。その内心は、酷く愉しがっている風なのが、柔和な面立ちに浮かぶ表情から窺えた。その隣で一人静かに茶器を傾けていたもう一人の兄も貫禄のある風貌をそのままに余裕のある態度で闖入者へ一瞥をくれた。

 驚きの表情を浮かべているリョウとそこにいる二人の兄たち。

 ユルスナールは余りのことに言葉を失った。

 なぜだ。次兄のケリーガルだけならまだしも、なぜ長兄のロシニョールまでがいるのだ。

「ルスラン……?」

 心底不思議そうにその黒目がちな瞳を瞬かせたリョウの声に、ユルスナールは漸く我に返ると大きく息を吐き出し、乱れた髪を掻き上げてから、折よく空いていたもう一つの椅子ーリョウの隣だーに腰を下ろした。

「ルスラン? どうしたんですか? そんなに慌てて」

 人の気も知らないで。実に呑気な声を出したリョウにユルスナールはほっとするやら腹立たしいやら、感情の矛先を急に失って行き場を無くした気持ちを昇華するようにどっかりと背凭れに身体を預けると天を仰ぎ、額際を片手で覆って大きな息を吐き出した。

 いきなり現れたかと思ったら力なく椅子に座ったユルスナールの様子にリョウは慌てた。

「ルスラン? 大丈夫ですか? どこか気分でも悪いんですか?」

 ユルスナールの方を覗き込んだリョウにケリーガルが可笑しそうに含み笑いをしながら間に入った。

「リョウ、心配いりませんよ」

「ああ、気にすることはない」

 その二つの声に、ユルスナールはむっくと身体を起こすと二人の兄に不満そうな顔を向けた。

「兄上たちも人が悪い。このように不意打ちをすることもないでしょうに」

「俺は知らんぞ。ケリーガルに呼ばれたんだ」

 どこか拗ねたように兄たちを見たユルスナールに長兄が男らしい笑みを浮かべた。対する次兄は、心外だと言わんばかりに肩を竦めて見せた。

「人聞きの悪いことを。今日は偶々ですよ。ねぇ、リョウ?」

 いきなり話しを振られたリョウは肩を揺らして、いささか剣呑な顔をしているユルスナールとにこにこと実に眩しい笑顔を浮かべているケリーガルを交互に見てから、そっと控え目に苦笑を滲ませた。

「はい。本当に偶然でした」

 そして、まだ不可解な顔をしているユルスナールに、イオータに呼ばれてからの顛末を訥々と語る羽目になった。


 イオータから始まった一件を話し終えると、まだどこか不服そうな色をその眼差しの端に滲ませているようであったが、ユルスナールは一応、納得したようだった。

 ユルスナール自身は、まだまだ次兄に言いたいことがあったようだが、小さく息を吐くことでその感情を押し込めると、

「そういうことにしておきますよ」

 そう言って寛大な様を見せた。

 それが弟なりのやせ我慢であることが分かる兄たちは、平静を装う振りをしているユルスナールの態度に、顔を見交わせるとさも可笑しそうに笑ったのだった。


 リョウは、そんな三人の男たちの遣り取りを端からぼんやりと眺めていた。

 やはり、途中から感じていた通り、この二人はユルスナールの兄たちであったのだ。

 三人は其々、単体で見ると実に個性的であった。だが、三人揃っても、そこには口では上手く説明ができないのだが、親族としての血の繋がりを感じられる独特な空気があるように思えた。当初考えていたように三人共に顔立ちは似ているだろうかという予想とは違っていたが、ある意味、それは実に兄弟らしい壮観な眺めだった。

 微笑ましい気分で三人の男たちを眺めていると、ユルスナールが不意にリョウの方を振り返った。

「リョウ、兄上たちに妙なことをされてはいないか?」

 妙なこととは何を指しているのだろうか。

 やたらと真剣なその口振りにリョウは可笑しそうに喉の奥を鳴らした。

「ルスラン、何を言っているんですか。美味しいお茶とお菓子を御馳走になりましたよ」

「人聞きの悪いことを言うな」

 鼻を鳴らした長兄を横目にリョウは尚も言葉を継いだ。

「本当ですよ?」

 そこでユルスナールはふとリョウの首元に巻かれている包帯に気が付いた。

「リョウ、これはどうした?」

 ごつごつとした大きな手が、そっと首の包帯に触れる。その途端、リョウは目を泳がせて押し黙った。あからさまに狼狽えたようだ。

「目立つ所に痕は残していない筈だが………」

「ルスラン!」

 一昨日の夜の事を思い出してか、見当違いなことを言ったユルスナールにリョウは慌てて違うと目配せをした。

「怪我をしているんですよ。先程、包帯を変えましたけれど、【ヤード】の毒が回っているようですから、毒消しの処理をする必要があります」

 すっと目を細めたユルスナールに、次兄が余所行きの丁寧な口調を変えないまま、淡々と言い放った。

 その言葉にユルスナールの顔付きが険を帯びた。

「何だと? 何があった、リョウ?」

 急に怖い顔をして迫ったユルスナールの勢いにリョウはたじろいだ。

 だが、すぐに観念すると小さく息を吐いてから、淡々と怪我を負った経緯を正直に告げた。どういう繋がりがあるのかは知らないが、ユルスナールと懇意である男、ルークが絡んだ手前、適当に濁すことはしなかった。きっと後でバレるからだ。

 ざっと話し終えると、ユルスナールは苦々しい顔をしていた。無言のまま包帯が巻かれた細い首筋をそっと労わるように撫でた。

「そう言えば、先程の応急処置では何の薬草を使ったのか、お聞きしても?」

 暫し落ちた沈黙を破るようにケリーガルが声を発した。

「凝固処理を施した生のストレールカです」

「ああ、ストレールカですか。あれは大層苦いと言いますからね。成る程。ですが効き目は抜群のはずです。そうですよね、兄上?」

 先程の薬草を口に入れた時のリョウの顔を思い出してか、ケリーガルが尤もらしい合槌を打ち、隣に座る兄を見た。

「ああ。そうだな。だが、ちゃんと中和処理をしておいた方がいいだろう。そっちは言わば荒療治だからな」

 長兄からも真面目な顔付きで言われて、リョウは再び神妙に頷いた。

「リョウ、今すぐ医務院に行くぞ。ここからだと一番近いのはアルセナールの方か。それとも養成所の方か?」

こちら(宮殿内)にもありますけど」

「いや、止めておけ」

「ご冗談を」

 突然、立ち上がったユルスナールをリョウは吃驚して見上げた。

「今からですか?」

 のんびりとした声を出したリョウをユルスナールが何を言っているんだというように見下ろした。

「一人で大丈夫ですよ。後でレヌート先生の所に行きますから」

 祈祷治癒を専門とするシーリスの義兄の名前を上げれば、ユルスナールはなんとも言えない顔をして、椅子に座ったままのリョウの身体を上体を屈めることでそっと抱き締めた。

「リョウ、せめてものことだ。このくらいはさせてくれ。俺が知らない間に怪我を負うなんて。肝が冷えたぞ。それに毒を甘く見るな」

 耳元で囁かれたいつになく真摯な声に、リョウは目を伏せると複雑な気分で自嘲気味に微笑んでいた。

「すみません」

「なぜお前が謝る?」

「ルスランには心配をおかけしてばかりなので」

 鼻先が触れ合わんばかりの間合いで、ユルスナールがそっとリョウの頬に大きな手を宛がった。

「そんなことを言うな。済まないな。肝心な時に傍にいてやれなくて」

 悔恨の滲む男の言葉にリョウは小さく笑った。

「そんなの仕方ありませんよ。それにルスランが気に病む事ではありません。注意力の足りないワタシが悪いのでしょうから」

「ルークにまた借りが一つできたな」

「借りになるんですか?」

「まぁ、いつでも取り返せるがな」

 そのまま頬を寄せてきた男に反射的に瞼を閉じようとした所で、

 ―ん、ンン!

 少し態とらしい咳払いが、唐突に始まった二人だけの甘い世界に(ひび)を入れた。

「ルスラン、我々がいることをお忘れなく。それで良ければ、勿論、構いませんが?」

 邪魔が入ったことにユルスナールは恥じらうどころか、些か不服そうに間に入った次兄を流し見たが、リョウは人前でしでかしてしまった己が行為を恥じらうように咄嗟に顔を背けた。

 が、運悪く、視線を逸らした先に真正面から長兄の顔を見ることになって、そこに浮かぶ生温い視線に居た堪れなさを感じる羽目になった。


「ルスラン、お前、鍛錬の途中ではなかったのか?」

 ユルスナールが身に着ける訓練用の身軽な軍服を見て取って、長兄が唐突に話題を変えた。

 武芸大会を翌日に控え、アルセナール内に設置された鍛錬場で最終調整をしていた所だったのだろう。

「いえ、もう一通り終えた所でした」

 長兄の問いにユルスナールは姿勢を正した。

 それから話題はいつの間にか武芸大会のことになった。

「リョウ、キミも観に来るのでしょう?」

 次兄のケリーガルからなんとはなしに聞かれて、リョウも頷いた。

「あ、はい。養成所の友人たちと一緒に行く予定です」

「そうですか。良かったですね、ルスラン」

「まぁ、精々頑張ることだな」

 二人の兄たちのなにやら含みのありそうな眼差しにユルスナールは無言を押し通した。

「明日が楽しみですね。ねぇ兄上?」

「ああ。そうだな」

 二人の兄たちは意味深に顔を見交わせる。その前でユルスナールは、困惑に似た表情を浮かべながら、ほんの少しだけ嫌そうに口元を下げていた。

 そんな一風変わった兄弟たちの遣り取りをリョウは不思議な面持ちで眺めていた。


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