姉貴は嫌、姉御はもっと嫌。
時刻は昼前。
転生申請も無事完了し、二人は魔王城を後にした。
リリサ
「いつまで落ち込んでるの?」
ティナ(うつむきながら)
「だってさぁ……せっかく美少女に生まれ変われたのに、
あの半目の写真はあんまりだよぉ……」
リリサ
「あら、意外と女の子らしいところあるのね。感心しちゃった。」
ティナ
「“意外と”って何!? ひどくないッ!?」
リリサ
「はいはい。
そんなことより、もうすぐお昼ね。お腹空いてない?」
ティナ
「……たしかに、ちょっと空いてきたかも。」
リリサ
「じゃぁお昼食べてから帰りましょうか。近くに良いレストランを知ってるの。」
ティナ(ぱぁぁぁっと明るくなる)
「え?いいの?
やったーー!!」
リリサ
「ふふ、いきなり元気になるのね。」
ティナ
「腹が減っては“へこむ”ことも出来ぬってね!」
リリサ
「それを言うなら“戦”でしょ。」
行き交う人々で賑わう城下町の中、二人は昼食へと向かう。
---
レストラン前。
ティナ
「……ここって、ファミレス?」
リリサ
「ええ。 でも店内は落ち着いた雰囲気だし、結構気に入ってるの。
価格も良心的。」
ティナ
「なんか、リリサさんって……
思ってたより庶民的ですよね。」
リリサ
「高貴ぶって空腹になるくらいなら、
庶民でお腹いっぱいの方がいいでしょ?」
ティナ(ちょっと感動)
「……名言出た!」
リリサ
「私もお腹空いてきたし、早く入りましょう。」
ティナ
「はーい!」
---
店内。
テーブル席に案内された二人。
ティナはメニュー表とにらめっこ。
ティナ
「わ~!ファミレスとか久しぶり!!
じいちゃんとは、たまに定食屋には行ってたんですけどね!」
リリサ
「ふふ、
今日は正式に“姉妹になれた日 ”なんだから、好きなもの頼んでいいわよ♪」
ティナ
「え、いいんですか!?
そう言われると余計悩むなー……」
リリサ
「私のおすすめはね、
“シーフードグラタン ”か“カルボナーラ”が美味しいの。」
ティナ
「へぇ~!」
ティナ
「決めました!
“焼き魚定食+三種の小鉢付き”で!」
リリサ
「ん?話聞いてた?」
ティナ
「聞いてましたよ?」
リリサ
「グラタンとパスタは?」
ティナ
「わたし、洋食より和食派なんで☆」
リリサ
「……食のチョイスまでおじさん思考なのね……」
ティナ
「あと『どんなところでも、和食は裏切らない』ってじいちゃん言ってたんで!」
リリサ
「……なるほどね。
おじい様イズムに感服だわ……」
リリサ
「それじゃ、私はカルボナーラにしようかしらね。」
ティナ
「あと、ドリンクバー頼んでもいいですか?」
リリサ
「いいわよ。
私も紅茶飲みたかったし、2つ頼みましょう。」
リリサ、タッチパネルで注文。
ティナ
「タッチパネルまで完備してる……」
リリサ
「あなたの世界にもあったの?」
ティナ
「ありました!タブレットで注文システム。」
リリサ
「へぇ。じゃぁあなたの世界にも魔法はあったのね!
ティナは何属性だったの?」
ティナ
「え!?魔法はないです!
なんか、WiFi?電気の力でやってました!」
リリサ
「わい……ふぁい……?
電気って静電気みたいな?」
ティナ
「あー、えっと……
よくわかんないけど、電気です!!」
リリサ
「不思議な世界に住んでたのね。」
ティナ
「こっちの世界の方が不思議ですよ。
色んな種族の人いるし、魔王城は市役所だし。」
リリサ
「私からしたらそれが普通だけどね。
飲み物、持ってくるわ。何がいい?」
ティナ
「コーラで!」
リリサ
「……いいけど……焼き魚に合う?」
リリサ、飲み物を取りに席を外す。
---
リリサ
「はい、おまたせ。」
ティナ
「ありがとうございます!」
リリサ
「ねぇ、ティナ。」
ティナ
「はい?なんですか?」
リリサ
「私たち、せっかく姉妹になったんだから、
敬語やめましょ?距離感を感じるの。」
ティナ
「えー、じゃぁタメ口ってことですか?」
リリサ
「そうね。あと、私の事は『お姉ちゃん』って呼んで?♡」
ティナ(即答)
「え、嫌です。」
リリサ
「え!?
……なんで?」
ティナ
「わたし、ひとりっ子だったんで。
お姉ちゃんって呼ぶの慣れてないんです。」
リリサ
「じ、じゃぁ『リリちゃん』とかは……?」
ティナ
「無理っすね。友達でもないし。
『年上の人には、敬意を払え』ってじいちゃんに言われてたんで。」
リリサ(ショック、言葉が出ない)
「……」
リリサ
「(……『友達でもない』……そうだけど……
面と向かって言われると傷つく……)」
ティナ
「せめて、姉貴とかじゃだめですか?」
リリサ
「……嫌……」
ティナ
「姉御は?」
リリサ(即答)
「もっと嫌。」
ティナ
「……めんどくさいですね……
じゃぁ今から呼び捨てで呼ぶことにします。」
リリサ
「……え?」
ティナ
「よろしくね、リリサ。」
リリサ
「まぁ……姉御よりはマシかしらね……
よろしくね、ティナ。」
店員
「お待たせしました〜。
“焼き魚定食+三種の小鉢セット”と“カルボナーラ”になりますー!」
ティナ
「おー!きたきたー!」
リリサ
「じゃ、早速。」
二人
「「いただきます。」」
ティナ(もぐもぐ)
「んー!やっぱり焼き魚は裏切らないよー!」
リリサ(パスタをクルクル)
「相変わらず箸の使い方が完璧ね。」
ティナ(じ〜)
「ねぇ、リリサ。」
リリサ
「なに?」
ティナ
「その……パスタも美味しそうだね!」
リリサ
「美味しいわよ?少し食べてみる?」
ティナ
「え!?いいの!?
じゃぁ、わたしの焼き魚と小鉢も分けてあげる!」
リリサ
「ふふ、ありがとう。」
二人、それぞれ小皿に分ける。
リリサ
「はい、どうぞ。」
ティナ
「リリサもどうぞ!」
リリサ(目頭がジーンとする)
「(私、今凄い幸せかも……
“お姉ちゃん”って呼んでくれなくても、こうやってお互いの料理を分けて、笑って……
私がしたかった事ってこういう事だったのよ!)」
ティナ(パスタを――ズズズッ!!)
「うわッ!
リリサの言った通りパスタも美味しい!」
リリサ(スンッ)
「……」
リリサ
「(……私の感動を返して……)」
ティナ
「?リリサも食べないの?」
リリサ
「あ、ええ。いただくわ。」
焼き魚をひと口。
リリサ
「あら、ティナの言った通り、美味しいわね。」
ティナ
「でしょ!?」
リリサ
「新しい発見だわ。ありがとう、ティナ。」
ティナ
「ヘヘッ!やっぱ和食は裏切らないんだよ!」
---
食後。
ティナ
「ごちそうさまでした!」
リリサ
「じゃぁ、帰りましょうか。」
レジ。
店員
「お会計2,620円になります。」
リリサ
「あ、これ使えますか?」
財布から取り出される、1枚の紙。
店員
「大丈夫ですよー。
お会計変わりまして、2,320円です。」
ティナ
「なにそれ?」
リリサ
「クーポン、ドリンクバーが無料になるの。」
ティナ
「主婦力ッ!
お姉ちゃんって言うよりお母さんじゃん!!」
リリサ
「“節約”を極めてこそ一流の女よ。」
ティナ
「……また名言。」
---
二人、また馬車に乗り帰路へ。
---
フローレンス家。
ティナ
「ただいま〜……疲れた〜……」
リリサ
「お疲れ様。
初めてのお出かけはどうだった?」
ティナ
「まぁ、なんとかなるっしょ!って感じかな。
前世とあんまり変わんなかったし。」
リリサ
「それは良かった。
今日は疲れただろうから、のんびりしましょう。」
ティナ
「うん、ありがとう、リリサ。
じゃぁさ……」
リリサ
「ん?」
ティナ
「まず、着替えたい。ジャージに!」
リリサ
「……ジャージはないわよ。
パジャマ用の白ワンピにしなさい。」
ティナ
「えー……しょうがないなぁ……
じゃぁ着替えてくるね〜。」
リリサ
「はいはい。
それと、明日はポーション作りの手伝いをしてもらいたいの。」
ティナ
「え、わたしに出来るかな?」
リリサ
「大丈夫よ。ちゃんとお姉ちゃんが教えてあげるから♪」
ティナ
「……不安しかないなぁ……」




