エルフ少女、お風呂で女子力を知る。
『えるてん!』は毎週 月・水・金 の朝7時に投稿します♪
リリサ
「はいこれ、タオルと着替えね。」
ティナ
「ありがとうございます。」
リリサ
「私はあなたが出たら入るから。
リビングにいるから、何か分からないことあったら呼んでね。」
ティナ
「はーい。」
ティナ、脱衣所の扉をパタン、と閉じゴソゴソ。
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リビング。リリサはソファに座り、紅茶を片手にリラックス。
リリサ
「ふぅ……」
すると、突然――
ティナ(脱衣所から叫ぶ)
「うっひょーー!!」
リリサ(ビクッ!!)
「!? どうしたのかしら……?」
ティナ
「足ながっ!?
ウエストほっそ!!
なにこれ、モデル体型じゃん!!」
ティナ
「でも、おっぱいは変わんねぇーー!!
そこはなんとかならなかったのかよぉーー!!」
リリサ(ボソッと)
「うるさ……」
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浴室内。
ティナ
「シャワーに湯船……
うん、前の世界と変わんないな。」
身体を軽く流し湯船へ。
ティナ
「ふぅ……」
ティナ
「(お父さんもお母さんも海外出張で帰ってこないし……)」
ティナ
「(じいちゃん、一人で大丈夫かなぁ……)」
……
ティナ
「……大丈夫か。」
ティナ
「あの人、強いし。」
数分後。
ティナ
「さて、そろそろ洗うか〜。」
ティナ
「シャンプーシャンプー……これだ。」
指を立てて、豪快に
――シャカシャカシャカ!!
ティナ
「いてッ!いでででッ!!
ちょっとリリサさーーん!!」
パタパタと駆け寄る足音。
リリサ(脱衣所から)
「なに?どうしたの?」
ティナ
「この髪、細すぎてめっちゃ絡むしすぐ切れるんですけどッ!」
リリサ
「……」
リリサ
「揉むように洗ってね……」
ティナ
「え、そうなんですか?
今まで短めだったんで知らなかったです!」
リリサ
「痛みやすいからちゃんとトリートメントもするのよ?」
ティナ
「……トリートメント?」
リリサ
「シャンプーの隣の容器ね。シャンプー流したらちゃんと塗ってあげなさい。」
ティナ
「はーい。
(トリートメントってなんだ?)」
ティナ、シャンプーを流したあと、トリートメントを塗りたくる。
ティナ
「(……あれ?)」
ティナ
「リリサさーん!!」
リリサ(また脱衣所から)
「……なに?今度はどうしたの?」
ティナ
「このトリートメントってやつ、全然泡立たないんですけど!」
リリサ
「……え?」
ティナ
「え?」
リリサ
「……あなた、前の世界ではどうしてたの?」
ティナ
「じいちゃんが『“石けん1個”あれば全部解決』って言ってたんで!」
ティナ(何故か誇らしげ)
「でもじいちゃんハゲてたから!
さすがにわたしはシャンプー使ってましたけどね!
リンスインシャンプー!」
リリサ
「」
ティナ
「? どうかしました?」
リリサ
「……い、いえ。大丈夫。
私はまた、リビングに戻ってるから……」
ティナ
「はーい。」
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湯上がり。リビングのランプが優しく部屋を照らす。
リリサ
「……おかえり。ちょっとこっち来て。」
ティナ
「はい?」
リリサ
「髪の毛、乾かしてあげるから。」
ティナ
「えー……自然乾燥で良くないですか?」
リリサ(ピクっ)
「……」
リリサ(唇を噛み締めて)
「(この子、さっきからリンスインシャンプーとか自然乾燥とか……
私が作った体をなんだと思ってるのよ……!)」
思わず拳を握りしめる。
リリサ
「(だめ、耐えなさい……ここで怒っちゃだめ。
この子は今までの生活基準がズレてるだけ……
食事の作法は完璧だったじゃない……!)」
リリサ(引きつり笑顔)
「ちゃんと乾かさないと痛むし、次の日、
髪型が爆発して大変なことになるわよ。」
ティナ
「生前はいつも爆発してたんで☆」
沈黙。リリサの中で何かが“ぷつっ”と切れる音がした。
リリサ
「……ねぇ。」
ティナ
「はい?」
リリサ
「あなた……本当に女の子だったの……?」
リリサ、少し泣きそうになってる。
リリサ
「さっきから……言動と所作が“おじさん”なのよ……」
ティナ
「なッ!? 失礼ですね!れっきとした花のJKだったんですけどッ!?」
リリサ
「ほんとうに……? 私、転生魔法どこかで間違えてたとかない……?」
ティナ
「ないです。ちゃんとJKやってました。」
リリサ
「私の理想は、もっとおしとやかで……
甘えてきてくれて、『お姉ちゃん♪』って呼んでくれる子だったんだけど……」
ティナ
「理想と現実の差って奴ですね。
世知辛い世の中ってやつですよ!☆」
……
リリサ(ついに泣く)
「うぅ……!」
沈黙。リリサのすすり泣く声だけが静かに響く。
ティナ(気まずくなって)
「あぁー……もうわかりました!
髪の毛、お願いします!」
リリサ
「……いいの?」
ティナ
「目の前で大人の女性に泣かれたらたまったもんじゃないんで……
その手に持ってるやつ、ドライヤーですか?」
リリサ(ぱぁぁぁっと表情が明るくなる)
「そう!魔力で動くのよ!」
ティナ
「じゃぁお願いします……
(この人、情緒がジェットコースターすぎない?)」
ティナ、リリサの前にちょこんと座る。
リリサがそっと風を当てながら髪を乾かす。
リリサ
「(あぁ、楽しい……楽しいわ。
妹の髪を乾かしてあげるのが夢だったの)」
数分後――
リリサ(うっとり)
「はい、こんなもんでしょ。」
ティナ
「ありがとうございます……」
ティナ、自分の髪を触る。
ティナ
「……やっば!?
めっちゃスルスルなんですけどッ!?」
リリサ
「ふふっ、トリートメントとドライヤーのおかげよ。
これからは毎日私が乾かしてあげるから♪」
ティナ(自分の髪を触ってにやにや)
「これならお願いしてもありかも……?」
リリサ
「ふふっ♪
じゃ、私も入ってくるから。」
リリサ、タオルを持って浴室へ。
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浴室内。静かな湯気の中。
リリサ
「(あの子、湯船に髪の毛入れてるわね……
まとめることも教えてあげないと)」
小さくため息。
リリサ
「(まさか、あんなガサツな子が転生してくるとは思わなかったわ……
理想の妹像とかけ離れすぎてる)」
湯に沈みながら、天井を見上げる。
リリサ
「(でも、ドライヤーした後のあの子の笑顔、可愛かった。
あの子はちょっと変わってるけど……
でもやっぱり、ずっと欲しかったんですもの……)」
リリサ(にやにや)
「ふふ、ふふふ……
やっぱり、“妹”っていいわぁ……」
リリサ
「さて、明日は街を案内して、住民登録もしなきゃね。」
リリサ(妄想が膨らむ)
「どんな服を着させようかしら?
やっぱり、春らしくパステルカラーコーデかしらね……!
可愛くしてあげなきゃ!」
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湯上がり。
リリサがリビングに戻る。
ティナはソファーに座り、自分の耳を触っていた。
リリサ
「ただいま。何してるの?」
ティナ
「見て見てリリサさん!
耳で鼻の穴ほじれる!」
くいっ! と耳を曲げる。
ティナ
「エルフの耳ってすげー!!
人間の耳じゃ絶対出来ないもん!!」
リリサ
「お願いだからやめて……」
ティナ
「ほら!右もいける!」
リリサ
「左右で試さなくていいの!!」
リリサ、大きなため息。
リリサ
「……もう今日は、歯を磨いて寝ましょ……
明日は、街の案内と住民登録に行くから。」
ティナ
「はーい。明日は早速お出かけかー。
おやすみ!リリサさん!」
リリサ
「おやすみ……
(やっぱり転生魔法失敗したかも……)」




