表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Một thế hệ quỷ: Trận chiến lửa  作者: Phép thuật màu xanh
3/24

第3章 - バインゴリンの月見屋

挿絵(By みてみん)

銀色のジープが赤土の道を抜け、バインゴリンの町へ入っていった。夕陽が砂と草原に長く影を落とす。前方に現れたのは「月見屋」と掲げられた古風な日本家屋風の食事処だった。


木造二階建て、瓦屋根が反り、軒先には赤い提灯が並ぶ。松の香りに味噌の匂いが混ざり、静かな風に漂っていた。新疆の大地にありながら、まるで草原に小さな京都が現れたかのようである。


ジープが停まり、陳明軍が先に降り、趙可欣の手を取って支える。扉が開くと、着物姿の給仕二人が深々と礼をした。

「どうぞお入りください。主人がお待ちしております。」


中は提灯の柔らかな光が広がり、床は磨き上げられた木。白布を掛けた卓、揃えられた箸と杯。厳かに整えられ、まるで儀式の場であった。


陳明軍は室内を見回し、思わず笑う。

「私の手術室でさえ、ここまで清潔ではないな。」

その一言に趙可欣は吹き出しそうになり、口を押さえた。張り詰めた空気に、ひと筋の日常の風が差し込む。


屏風の向こうから足音。現れたのは神崎宏樹。黒衣に身を包み、忍者のような装い。彼は礼を尽くし、低く言った。

「陳先生、これは妹の神崎あやめです。ぜひ今日の一戦を見届けたいと申しております。」


背後から姿を現したあやめは、堂々とした侍装束に身を包み、腰には巨大な大太刀を佩いていた。刃は床に届くほど長く、月光のように輝いている。


趙可欣は目を丸くして呟く。

「な、なんであんな長い刀を……持ち歩けるの?」

あやめは微笑んだだけで、軽々と柄に手を添えた。その姿に陳明軍も思わず笑みを浮かべ、可欣と視線を交わす。


宏樹は席に着き、青磁の杯を掲げる。

「陳先生、まずは薄酒を。」


手拍子と共に扉が開き、給仕たちが舞うように運んでくる。薄切りの刺身、湯気立つうどん、丸い焼きたこ焼き、香り立つ酒。まるで宮廷の宴のようであった。


趙可欣は思わず小声で呟く。

「これ……本当に武術試合なの? 宴会じゃなくて?」


陳明軍は杯を飲み干し、静かに言う。

「宏樹殿、試合を先に済ませ、食事は後に致しましょう。」

宏樹は頷き、恭しく答える。

「承知しました。」


二人は屏風を越え、畳敷きの武道場へ。中央には澄んだ池に錦鯉が泳ぎ、脇には手入れされた桜の木。完璧な静謐。


陳明軍は礼をして言う。

「約定を。掌法は使わず、兵器のみ。三本勝負。私はこの長剣のみを用い、あなたは各本ごとに武器を変えてよい。武器を落とすか、刃が身体に届けば勝敗とする。」


宏樹は満足げに頷き、刀を抜いた。鋭い光が走る。彼は白布で丹念に刃を拭き、完全に清めたのち、ようやく構えた。


「参る!」


二人は疾風のごとくぶつかり合う。鋼と鋼が火花を散らし、静寂の武道場に金属音が響き渡った。


数分後、互いに間合いを取り、再び構える。陳明軍の衣には一筋の裂け目。宏樹は微動だにせず、ただ目を光らせて言う。


「待った甲斐がありました。陳先生……感謝致します。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ