表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

第7話



 単刀直入に話そう。



 和茶、——つまり、目の前にいるコイツは、俺たちが俗に言っている「神」の1人であり、超常的な存在である。


 …んー、いや、まあ、信じられないのはよくわかる。


 俺だっていまだに信じられない。


 神なんていないし、そんな存在についてを考えることすらバカバカしい。


 ただ、あの日からだった。


 和茶とあの神社で出会った日から、奇妙な日々が始まった。


 もう6年目になる。


 出会ってから、一緒に過ごし始めて。


 もうそんなに経つのかって思う。


 6年って言ったら、小学校に入学して卒業するまでの期間だ。


 俺の人生で言ったら、半分とちょっとの時間だ。


 そう考えるとちょっとやだな…


 和茶のせいで俺の人生がめちゃくちゃになった。


 詳しくは省くが、コイツのせいで周りからは“クズ”呼ばわりだ。


 プライベートなんてあったもんじゃないんだ。


 学校生活だって、休みの日だって…



 (好きなんだろう?)


 「あ?」


 (男だったら、少しは勇気を出せ)


 「…はいはい」


 (私は少し眠るから、くれぐれも邪魔をするなよ?)


 「…はぁ」




 何が“邪魔をするな”、だ。


 そっくりそのまま返してやろうか?


 さんざん人の邪魔をした挙句、余計なおせっかいまで働きやがって。


 和茶との最悪の日々を誰かに相談したくても、相談できる人間が周りにいない。


 何人かは霊感が強い奴がいて、和茶のことを認識してる人もいる。


 友達だったり、理佐なんかがそうだ。


 理佐っていうのは親戚の子で、俺とは2つ離れてる。


 元々妹と仲が良くて、ほぼほぼ毎日家でつるんで遊んでる。


 俺のことを「ヒロ兄」って呼んでくる。


 実の兄貴じゃないんだが、理佐のとこは女兄弟しかいないから、どうも俺のことを実の兄のように慕ってくる。


 めちゃくちゃ霊感が強いせいで、和茶の存在を知っていた。


 かといって、俺みたいにはっきり見えるわけじゃない。


 あくまで“そこにいる”ってレベルで、気配を感じ取っている程度の話だった。


 

 …はぁ



 今日はチャンスだったんだろうか…


 お腹は空いてるんだが、どうも箸が進まない。


 先輩は俺のことをどう思ってるんだろうか。


 嫌いじゃないとは思うんだ。


 じゃなきゃ、デートの誘いになんか乗らないだろうし。


 「ラインを送った」って言われた時はマジでビビった。


 殴ってやろうかと思った。


 よりにもよってあの「先輩」に送って、挙句感謝しろとか、どの口がほざいてんだよって感じだった。


 和茶が言うように、今日のお礼とか言った方がいいんだろうか?


 いやいや、でも…



 ピコンッ



 スマホと向き合っていると、先輩から連絡が来た。


 今日の「デート」のことだった。


 まさか…


 そう思い、嬉しさのあまりスマホを落としそうになる。



 『楽しかった』



 文面には、そう書かれてた。


 多分お世辞だ。


 楽しかったなんて、どこのどの場面を切り取ったらそう思えたんだ…?


 我ながら最悪だった。


 誰がどう見ても”失敗“だった。

 

 それなのに…




 返信の文章を考えるのに、1時間くらい使った。


 結局当たり障りのない言葉を使って返すことにした。


 文章を打つだけで、こんなに緊張するのは初めてだった。


 和茶が寝てて良かった。


 起きてたら、また茶々を入れられるに違いないからだ。



 ったく、呑気なもんだよ


 神のくせにパジャマなんて着んなっつーの。


 “神聖な存在だ”って言うんなら、もう少し品性ってもんをだな…

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ