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第1話



 高校三年にもなって思うんだが、本当に“クソ喰らえ”だと思う。


 俺ん家の実家は陰陽道とかの祖先か何かで、仏教の教えだとか作法がどうとか、変に格式ばった生き方をする奴らが多かった。


 別に嫌いじゃないんだが、そのたびにこう思うんだ。


 神様なんて、いるわけがないって。



 なんでそう否定的になるんだって言う奴らもいる。


 その度にこう返す。


 否定的なわけじゃない、って。


 あくまで俺は現実主義者で、オカルト的な超常現象には一切興味がない。


 宇宙人だってそうだ。


 まあ、あれは科学的な考察をすれば面白いんだが、わざわざ宇宙「人」である必要があるか?って毎回思う。


 「人間」なんて、人間が決めた概念の一つだろ?


 そんなちっぽけな考えを広い宇宙に当てはめなくたっていいんじゃないか?


 逆に、俺たちなんか相手にならないくらいの超生物が、そこらじゅうにウヨウヨしてる可能性が高い。


 知能の面でも、肉体的な強さの面でもさ?



 ——とにかく、だ。


 何が言いたいかと言うとだな、今、超絶ピンチな状況に陥っているって言うことだ。


 観覧車に乗って、優雅にデートを満喫している。


 …はずだった。



 問題は、どうしていいかわからないくらい緊張してるっていうことだ。


 合理的な発想で合理的な言葉を選ぶ。


 それを繰り返せば、少なくとも相手を不快な気持ちにさせなくて済む。


 ようは数学と一緒だ。


 計算に計算を重ね、=Aになる計算式を導き出してやればいい。


 「言葉」って言うのはそもそもそういうもんだろ?


 思考と感情の先に導き出される数式。


 それがつまりAであり、Bであり、XとYの座標の先にある…



 「ねえ」


 「…は、はいッ!」




 …声が裏返ってしまった。


 急に話しかけないでくださいませんかね


 今、どうすればいいか猛烈に計算しているところで…




 「なんでデートに誘ったの?」




 “なんでデートに誘ったか”



 それは、1から説明せねばなるまい。


 まず一旦整理すると、今回こんなことになってしまったのは、余計な“おせっかい”がいたからだ。


 そう、そこのソイツ。


 他の人間には見えていないが、俺には見える。


 オレンジ色の髪に、くりっとした丸い瞳。


 何やら腕を組んでドヤ顔をかましている「バカ」が、余計なことをしてくれたからだ。


 頼んでもいないのに、勝手に人のスマホをいじって「先輩」にラインを送ってしまった。


 「先輩」というのは、一緒に観覧車に乗っている“大学生“のこと。





 俺の憧れの人であり、高校時代は同じ部活動だった。


 書道部の先輩で、俺が2年に上がるタイミングで卒業してしまった。


 ずっと遠くから眺めていただけの存在だった。


 同じ部活って言っても、男子と女子とじゃあんまり絡みがなくて。




 (おい、なにか喋れ!)


 (黙れ)


 (せっかくデートに漕ぎ着けてやったのに、なんだこの空間は)


 (そもそも頼んでないっつーの)


 (夜な夜な先輩との妄想を膨らませていたお前がか??)


 (はぁ!?)


 (全部ダダ漏れだぞ?貴様の頭の中にいる私の身にもなれ)




 コイツ…



 先輩にはもちろん見えていないし、聞こえていない。


 コイツ、——もとい、俺だけにしか見えていない少女の名前は、「和茶(かずさ)」という。


 獅子王和茶。


 本人曰く「神」らしいが、神と名乗るにしてはあまりにもガサツというか、無神経というか…



 「私といてもつまらない?」


 「…へ!?いやいや、そんなわけ…」



 つまらないわけない。


 夢のような時間だった。


 だって、あの「先輩」と観覧車で2人っきりなんて、夢でも見たことない。


 これからの人生が転落してもおかしくないレベルで、運気を消費している気がする。


 夢のような出来事すぎて、考える余裕すらなかった。


 俺には早すぎたんだ。


 こんなシチュエーションは。



 (しょーもない男だな、お前は)



 先輩の横に座り、腕を組みながら見下した目でこっちを見てくる。


 和茶は、俺と同い年のような見た目だった。


 高校生っぽいっつーの?


 喋る言葉とか、着ている服とか、無駄に若いんだよな。


 神のくせにアニメが好きだし。



 (先輩に近づくな)



 「なに?どうかした?」



 …やべ



 つい、周りのことを忘れて相手をしてしまう。


 この前声に出してしまったことがあった。


 周りはびっくりしてた。


 あんな恥ずかしい思いは2度とごめんだが、反射的に…



 「なんでもないです!!」


 「そう」




 はぁ



 結局何も話せないまま観覧車を降りた。


 楽しいデートを想像してた自分が馬鹿みたいだった。


 そもそも、デートが始まる前からわかってたんだ。


 うまくいくわけないって。


 和茶がラインを送ってしまったせいで、もう後には引き返せなくなってしまった。



 …っていうか、なんで先輩はオーケーしてくれたんだ?


 こんな取り柄もない男からの誘いに乗るなんて、どうかしてる



 (ほんとにな)


 (おい)



 自分に自信がないわけじゃないんだが、先輩と釣り合わない男だっていうことは自覚してる。


 俺なんか、ステーキを引き立たせる野菜にすらなれない。


 木工用ボンドでくっつけただけのガラクタ。


 そんなヤツと、プロの設計士が組み立てたプラモデルを横に並べたら、素人でも「違い」がわかってしまう。


 正直、横に立つのが申し訳ないくらいだった。


 俺なんかじゃ、先輩の話し相手にすらなれそうになくて…

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