表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

第七話 伝授

次の日、いつもの特訓場所で修行していると、またあの時の老人が現れた。

「ジェフト君、合格したらしいのぉ。おめでとう」

「ありがとうございます!あなたのおかげで合格出来たようなものですよ」

「ほほ、儂はそこまでしていない。お前の力で掴み取ったものじゃ。それより、その術の『使い方』を教えてやる。これから炎を出すだけじゃ戦いづらいじゃろう」

「『使い方』?」

その時、辺りを切り裂くような喚き声が聞こえた。魔物だ。

「!!」

「ちょうどいい。着いてこい、それをいまから見せてやるぞ」





ジェフトは老人と共に魔物の声がする方へと進んでいた。

森の奥に進むにつれえ太陽の光は空に覆い被さる葉により遮られ、薄暗くなっていく。姿を隠した動物の鳴き声が響く。

「もう既に相手のテリトリーに入っているかもしれん。油断するなよ」

「……」

その時、枝が折れる音が響いた。その音はジェフトからでも老人からでもない。鳥は急いで飛び立ち、先程までとは打って変わって静まり返った。

(来る!)

魔物はジェフトの死角から仕掛けてきた。反応が間に合わず、鋭い爪が突き刺さる寸前で老人がジェフトを担ぎ避けた。

ジェフトの前には風格のある大きな猿が立ちはだかっていた。尻尾は二つに分かれ、爪が発達している。かなりの機動力がありそうだ。しかし、勝負は一瞬だった。

老人は

「ジェフト、息を止めてろ。『爆燃』!」

大猿の腹に炎が起き、その炎は次から次へとその身体を燃やし尽くし、すぐに塵となった。炎まで少し距離はあったものの、そこに居るだけで全身を火傷していまいそうだった。煙もかなり高音で、収まるまでしばらく呼吸が出来なかった。ようやく視界が開けてきた時、老人は落ち着いて言った。

「今のが『爆燃』……。急速に相手を燃やす魔法で、魔力消費が少なく済み、コントロールもしやすい」

(魔力って確か、各エネルギーを生み出す上で必要な体内に眠る力だったっけ)

「それと、高温の炎を使って自分の身体も火傷しては敵わんから水のエネルギーの扱いを覚えた方がいいな」

「水ですか?」

「気管や体の表面に薄く冷たい水の膜をはるんだ。これだけでも大分違うぞ。さて、もう太陽が真上に登っている。そろそろ戻って飯とするか」

ジェフトたちは帰路で山菜や果物を採り、健康的な食事をとった。

「さて、次は火のエネルギーを使った体術を教えようかの」

「エネルギーを使う?それは魔法なんですか?」

「半分ぐらいはな。炎魔法は中・遠距離で使う性質状、近距離に弱い。だから体術が不可欠で、そこに熱が応用できるということじゃ」

老人は拳を握って見せると、どんどん赤くなっていった。白い煙が出ている。

「こいつを当てた瞬間に溜めていたものを解放する」

そう言い、近くの木の幹を殴った。その部分に大きな穴が空き木は倒れ、それに続くように後ろの木も倒れていった。かなりの貫通力があったようだ。

「これは最後の衝撃をだす、というところが難しい。まあ今は出来なくても、エネルギーの扱いに慣れてくれば出来るじゃろう。教えることは教えた。身につけることが出来るかは君次第だ。ではワシはもう行くとしよう」

「今回もご指導ありがとうございました!」

「いいんじゃ。……ジェフト、お前は知識を増やすことによって人は豊かになると考えるか?」

「え、なんですかいきなり。まあそりゃ豊かになると思いますが」

「もしそれに罰があるとしても君は『知る』ことをやめないか?」

「罰って……?」

「いや、やっぱり何でもない。気にしないでくれ。……魔法学校はこの国の政府と強く繋がりがある。簡単なことでは無いが、この現状を変えるチャンスがそこにあるはずだ。後は好きにするといい」

老人は意味深なことを言い残し去っていった。呼び止めようとするが、その老人の名前を知らないことに気がついた。

謎の老人は最後まで謎を残し、再び現れることはなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ