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第六話 選抜試験

いよいよ試験が始まろうとしていた。

「まずは、筆記試験から行います。受験証に書かれた指定の教室まで移動してください」

(受験証にそんなの書いてあったっけ?)

そう思った瞬間、空白の部分に文字が浮かび上がってきた。どうやらこれも魔法のようだ。

「では、皆さんの健闘を祈ります」


―筆記試験―

(この問題…図書室にあった本に書いてあったぞ!)

難しい問題もあったが出来る問題を確実に解いていき、手応えを感じる結果となった。ジェフトは再び、心のなかでホルミスに強く感謝した。

(さあ、次は実技試験だ)

試験管はジェフト達を広い中庭へと案内した。


―実技試験―

ジェフトは長い列に並んでいた。1人ずつ魔法を出させているようだ。ジェフトは炎を出せるようにイメージしていた。すると……

『おお〜〜〜!!』

突如上がった歓声に集中を解かれた。

ざわ……「あいつ、4元素全て使えるのか!?」「しかも全部完璧だ」「あいつが例の天才だ!」

(な…俺は1つで精一杯だってのに、凄いやつだ)

ジェフトが話題の渦中にあるその人を見ていると振り返りざまに目が合ったが、すぐに目を逸らし行ってしまった。きっとあのような人が首席で合格になるのだろう。その後はスムーズに進み、ついにジェフトの番となった。

1度深呼吸してから手を前にかざした。

(今までの練習を思い出せ……。あの時のように風を、大地をイメージしろ!全身のエネルギーを絞りだせ!!)

ボウッ

その気持ちに答えるよう、ジェフトの前で爽やかに大きな炎が弾けた。出来ることは全てやった。満足気な表情で戻ろうとすると、後ろから冷たい風が吹き、舞った白く冷たい無数の雪が体に付く。

(これは……雪だったか?実際には初めて見たな。後ろの人の特殊能力だろうか)

「あ、すんません。あたっちゃいました?」

気の抜けるような声を掛けてきた人物は妙に厚着をしていた。大丈夫だと言おうとした時、次は熱風が吹いてきた。長く留まると火傷しそうなほどで思わず仰け反り叫んだ。

「あっつ!!」

「あ、わりぃ!まだ制御効かないもんで。カズも大丈夫か?」

「気をつけてよ、兄ちゃん」

この2人はどうやら兄弟のようだ。特殊能力は違くとも似てるところはやはりあるものである。そしてジェフトはやっとその場をあとにした。

最後に試験管から1週間後に合格の通知を出すと言われ、試験が終了した。


外では見慣れた3人が先に待っていた。

「ジェフト、手応えはどうだった?」

「まあまあかな。皆は?」

「僕もまあまあかな。筆記は結構自信あるよ!」

「……俺もだ」

「俺はこの自慢のこの筋肉で乗り越えたぞ!」

「ヴァン……筆記は大丈夫だったのか?全然やってなかったような……」

「今日は勘の当たりが良い気がするから多分大丈夫だ!」

4人は談笑しながら戻った。



―1週間後―

4人は深夜から部屋で緊張をほぐすように話しながら、合格通知書が来るのを待っていた。

朝の7時ほど、辺りはすっかりと明るくなり、新たな一日が始まるころだった。話題が尽きて少し静かになった時、ドアの郵便受けから音がした。軽い音、紙だろうか。しかし、その場の全員が何の郵便物かすぐに理解した。一気に戻ってきた緊張に包まれながら、ジェフトは郵便受けに手を伸ばした。合格通知書だ。不安を少しでも和らげようと、みんなで同時に開けることにした。糊を丁寧に剥がし、中にあった紙を開き、恐る恐る書かれた文字を見た。結果は……

(あ……合格……)

その二文字を何度も読み直し、喜びが湧き出そうになった。だがジェフトはまだ喜ぶのは早いのを思い出し、顔を上げて全員から笑みがこぼれたのを見てからようやく声に出して喜んだ。


ジェフト達は魔法学校合格者選抜試験において見事合格した。全受験者462人のうち合格者は104人で、総合点数はジェフトは96位、ヴァンは61位、ダレルは53位、ホルミスは32位であった。

合格通知書に同封されていた紙には一ヶ月後の9月に入学式を行うと書かれていた。ジェフト以外の三人は一度帰省することにした。いよいよ始まる学校生活に胸を踊らせながら、ジェフトは残りの期間でさらに修行を積むのだった。




おまけ

─ある日の夜─

ジェフト達は暑さから眠れず、涼しくなる提案をし合っていた。

「今夜は暑いな!オレなんてパンツ以外脱いでんのに!」

「ヴァン君、その姿のまま外出ないでね……」

ジェフトは対策を考える。

「涼しくなるには団扇を扇いだり、外に水を撒いたり、後は……」

「……怖い話だ。背筋の凍るようなやつな」

『!!』

「ダレル、まさかお前!」

「……あぁ、とっておきのがある。あれは今とは逆で、空気が乾燥した寒い日だった───

俺はまだ幼く、家の庭で焚き火をしていたんだ。だが途中で催して、トイレに行った。そして戻ろうとした時にお使いを頼まれて、そっちを優先した。帰る頃には焚き火の事をすっかり忘れていて、庭を見てやっと思い出した。そこにはなんと……、家に向かって倒れた枝をつたい燃えていく姿が!!あの時はぎりぎりで消化出来たからよかったが、もし少しでも遅れたらどうなっていたか。それから俺は火に細心の注意を払っている。どうだ、中々怖かっただろう」

「ダレル君の家が無事で良かったけど……」

「霊的な意味で怖い話を期待してたな……」

気まずい雰囲気をホルミスが打ち消そうとする。

「じゃあ、僕からも怖い話を!この学校は受験者なら入学までの間、無償で貸してくれるよね」

「あぁ、その制度には本当に助けられたよ」

ホルミスは声色を変えて言う。

「その制度、なんだかおかしいと思わない?いくら未来の魔法実習生だとしても、返済の必要がないなんて……」

(確かにそうだな、なにか裏があるというのか?)

「実は、受験に落ちた生徒、合格後に辞退した生徒には適正額の3倍の金額を請求されるそうだよ……」


恐ろしい話である。学校も商売なんだなと感じるジェフトであった。

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