第五話 猛特訓
ジェフトは火起こしをきっかけとして炎の魔法を身につけた。
「ジェフト!今のって……お前魔法が使えるのか!?」
ヴァンは興奮した様子で話しかけた。
「今初めて使えたんだ。さっきのがヒントになったよ」「……なかなかの威力だった」
ダレルも続けて褒めたが、ジェフトは謙遜した。
(きっと1人だとこの魔法を習得するのは難しかった。これは感謝だな)
3人は猪肉を焼くとその美味しさからか、あっというまに平らげた。
そして地面に寝転び、夜空を見上げていた。星のよく見える、いい夜だ。虫の音に囲まれながら、3人はいつの間にか夢を語り始めた。
「俺は親父のように戦士になる!沢山の人を守れる、強い人間になりたいんだ!」
ヴァンらしい、良い夢だ。
「……俺は家業のロウソク屋を継ごうとおもっている。まだ炎の魔法は使いこなせていないがな」
ダレルはロウソク屋の息子だったのか。まだまだ謎が多いが、少しずつ彼について分かってきた気がする。
(俺の夢は……先生とか、医者とか言ってたっけ。でも、本当になりたいのはそれじゃない。俺はただ、世界について知りたかったのかもな)
ジェフトは少しの沈黙の後、拳を空へと突き上げた。
「俺の夢は、旅をすることだ。そして、その生涯をまとめた本をかこう」
─試験まで1週間─
ジェフトの炎の魔法は身につき始め、ある程度は操ることが出来るところまで来ていた。
今日はホルミスとの練習を終え、寮で話をしていた。
「ジェフト君、これで実技試験は大丈夫そうだね。最近凄く成長してるよね! 」
「ホルミスだって、さっきの魔法凄かったよ。あれはどういう事なんだ?」
「ああ、僕は特殊能力で飴を出すことができるんだ。液体の時は水を操る要領で動かして、固定したい時は冷やしてかためてるよ」
「な、なんだ特殊能力って……。俺もそれ出来るのか?」
「うーん、どうだろうね。特殊能力っていうのは人によって違うものなんだ。親と同じものを受け継ぐことが多いよ。それより、ジェフト君は筆記試験大丈夫なの?特殊能力についても例年通りなら出題されるはずだと思うけど……」
やばい...完全に忘れていた
「僕たちの受ける学校、オミトーレでは実技試験よりも筆記試験が重要視されているんだ。だから、初級の魔法が使えれば実技試験は合格になるんだ。良い魔法使いに必要なのは知識と考えてるらしいよ」
「……それはまずいな」
「あと一週間だけど、まだ何とかなるよ!」
こうしてホルミスと図書室で猛勉強が始まった。
学校の図書室は広く、多くの本がある様だった。
入ってから目につくのは天井に描かれた、大きな地図だった。
自分たちが今いる場所は、真ん中にあるセントラル地方の大きな町、ファイヴである。
(この地図、なにか……)
「ジェフト君、まずは基本的な知識からだ。既に理解のある炎からやっていこう」
「ああ、分かった。」
...いや、今は勉強に集中するか
しばらく勉強した後少し休憩に入り、2人は面白そうな本を探していた。
ジェフトはパラパラと本をめくりながらいった。
「それにしてもよくこんなに本を集めたよな、しかも全部手書きだし」
「そうだよね、本を即座にコピーする魔法でもあればいいのに」
(魔法も何でもできる訳じゃないんだな)
ジェフトにはもう1つ、気にかかる事があった。
「……さっきから思ってたんだけど、同じような内容の本が多いな」
「そうかな?」
考えるほど疑問が生まれそうだったが、ジェフトはめんどくさかったのでやめた。
「よし、そろそろ休憩は終わりにして勉強しよっか」
「おす!」
ジェフトは魔法の練習に筋トレに勉強と、忙しいながらもそれぞれ着実な成長を遂げていた。そして――
試験前夜
ジェフト、ヴァン、ホルミス、ダレルは部屋に集まっていた。
「ついに明日はテストだ!ジェフト、ホルミス、ダレル、準備はいいか!?」
「……もちろんだ」
「今までの成果を出せるよう頑張ろう!」
「きっと俺たちなら大丈夫だ!」
4人は手を重ね、声を合わせた。
「絶対合格するぞ!!」
『おーーー!!』
次の日の朝、エントランスには多くの人が集まっていた。すでに受付を済ませたジェフトは試験の開始をそわそわとしながら待っていた。
(それにしても、すげぇ数の人だな。だがきっと俺なら大丈夫だ ! )
「お集まりの皆さん、大変お待たせいたしました。それではこれより、我が校オミトーレの合格者選抜試験を始めます!」
(かかってこい ! )