第三話 ついに来た 魔法学校!
魔法学校までの道のりは長かった。代わり映えのない森を退屈に眺めながら進み続けた。朝に出発したはずが歩くだけで夜になっており、足が棒のようになっていた。そんな時、幸いにも一軒の宿が見えた。
「よし、今日はここで泊まるか!」
アンドレはまだまだ歩けそうな元気をみせていた。
宿主と話すと問題なく泊めてくれた。
素泊まりだったため、アンドレから携帯食料を分けてもらった。あまり美味しくは無かったはずだが、今の空腹でたまらないジェフトには気にならなかった。
「あの、魔法学校まであとどれぐらいですか?」
「ここまで来ればあと少しだよ」
その言葉に身体は歓喜し、体力が戻ってきた気がした。しかし、アンドレは続けた。
「今ちょうど半分くらいかな!」
ジェフトの身体は再び鉛のように固まり、言うことを聞かなくなってしまった。
─次の日─
アンドレが宿泊代を払おうとすると、
「その連れの子、新人かい?じゃあその子の分、まけておくわ」
そう言い宿主は、一人分の金額にしてくれた。
感謝しながら宿を出ると、アンドレは言った。
「いや〜、これで財布がすっからかんだ〜」
ん?待てよ?
「俺の分タダにしてくれてなかったらどうしてたんですか!?」
「数日間掃除に手伝いと、金額分働かされるだろうな」
懐かしむように言うアンドレを見て、ジェフトは再び宿主の厚意に感謝した。
そこからさらに歩き続け山を越え、川を渡り、予定よりも早い夕方頃の到着となった。
「ここが魔法学校……!」
海の見える崖に聳え立つ建物はまさに城のような迫力であった。
「俺たちの魔法学校、『オミトーレ』にようこそ」
真ん中に高く立つ塔の後ろから夕陽がさし、眩しかった。しかし、その眩しさは単なる太陽の光だけではない。
(ついに来てしまったぞ。)
自分を待ち受ける未来に胸を踊らせながら、学校へと続く大きな門をくぐった。
一番大きな塔に入ると受付があり、多くの人で賑わっていた。出身地も分からない自分を通してくれるかは不安だったが、アンドレの説明により魔法学校選抜試験への受験資格を手にすることができた。どうやら試験は1ヶ月後だそうだ。
「アンドレさん、これで俺は試験を受けられます!ありがとうございます!」
「感謝は合格してからにしてくれよな。筆記試験と実技試験があるから、しっかりと備えておくといい」
その後学校を軽く案内してもらい、その日は学校の集合寮に泊まることにした。受験資格のある者なら試験まで無料で泊まることが出来るらしい。
「明日、良い特訓場所をおしえてやる。朝にエントランス集合な!」
アンドレと別れた後、ジェフトは自分の泊まる部屋へ行った。
(これから1ヶ月共に暮らすルームメイト……一体どんな人だろうか……)
仲良く出来るか不安に思いつつも、今までは無かった同じ歳の子で集まるということに憧れていたため、楽しみな気持ちもあった。
さあ、ここから始まるんだ
ガチャ
「来たみたいだね」
「お前も今回の受験者だな!」
「フン……」
前髪が目にかかった穏やかそうな男、屈強な筋肉をもった金髪の男、部屋の中なのに深くフードを被った暗い男という、いかにもな3人がジェフトを迎えた。
「俺ジェフトって言います!よろしくお願いします!」
「敬語は使わなくていい!俺たちは今日から友だからな!俺の名前はヴァンだ!」
「僕の名前はホルミスだよ。試験までの間だけどよろしくね。」
「……俺はダレルだ」
(皆いい人そうだな)
そう安心したのもつかの間、
「ここに二段ベッドが2つある……いいか!上の段に行くのはこの俺だ!!」
「そんなに慌ててハシゴを登ったら危ないよ!」
ホルミスは必死に止めようとするも、ヴァンは聞かない。
グラ……
「あ…」
ガシャーン!
二段ベッドは倒れ、4人は下敷きとなってしまった。
これからを不安に思うジェフトであった。