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第十話 幸運

危機を察知したジェフトは周りに炎をばら撒く。その気配は煙に包まれてゆっくりと歩いてくる。

骸骨(スカル)だ。死んでいる。何故動いているのか、そんなことを考える暇はない。声を出す隙もない。初めて感じた恐怖、いつ死んでもおかしくない緊張感──


骸骨は剣を出し、ものすごい速さで距離を詰めてきた。

金属音が鳴り響く。

挿絵(By みてみん)

身体が何とか反応し、両側を持ち手にしたハサミで防いだ。わりと応用が効くようだ。

ジェフトはすかさず骸骨に向かって炎をだす。しかし、全く効いていない。

(やっぱり骨に炎は効かないか)

そこでリュックが叫ぶ。

「逃げろ!」

驚くジェフトに続ける。

「こいつの今の狙いは俺だ!早くしろ!」

(逃げる?そんなの、出来るわけないだろ!)

ジェフトは直接殴りかかりにいく。骸骨もジェフトに剣を向け、接近を許さない。

「ジェフト、お前ってやつは……。わかった、最後まで戦い抜こうぜ。あいつに目や耳はない!とにかく合図を出して連携をとろう!」

まずはリュックからの避けろの合図、後ろから木を切り倒す。骸骨は避けるのに遅れ体勢を崩している。チャンスだ。ジェフトは老人から最後に教えてもらった技を思い出していた。拳を構えてエネルギーを溜め、すぐさま敵の肋骨に叩き込む。ぶつかった瞬間、火花が飛び散り、骸骨は大きく仰け反る。が、すぐに上体を起こし、ジェフトを切りつける。助けに入ったリュックも蹴飛ばされ、木に頭を打って気絶してしまった。


その場に倒れ込む。技は失敗した。ここまでか。

(ようやくここまで来たのに。一体なんなんだ、この化け物は。また何も分からずに死ぬのか)

そんな考えがよぎったとき、夢を思い出した。

(外の世界はどうなってるんだろうな。どこまでも草原が広がっているのか、本当に何も無い真っ暗な世界なのか。それをリュックは……真剣に聞いてくれたんだ。意識を失っている場合ではない!俺よ、力を振り絞れ!奇跡を引き起こせ!!)


倒れるジェフトの前で骸骨はとどめを刺すために剣を振りかぶっていた。しかし寸前に躱し、剣は首ではなく地面に突き刺さる。

(この位置なら、大丈夫、いける!)

横に回り込み、再び拳にエネルギーを溜める。不思議と体中のエネルギーをさっきとは比にならないほどこめられた。

声にもならない声を絞り出して肋骨に打ち込む。今度はしっかりとはいり、空間が揺れた。

骸骨の肋骨は砕け散り、その勢いで他の骨もバラバラに崩れ落ちた。

奇跡は起きた。

が、その歓びもつかの間、崩れ落ちた骨たちは繋ぎ合わさりすぐに復元されてしまった。

(やっぱそんな簡単には終わってくれないか。いやまて、砕けた肋骨の部分は治っていない……。粉々にすれば 流石に治らないのか。なら何回も叩き込むのみだ!

───あれ?)

世界が暗くなり、感覚が遠のいていく。もう立つことすらできない。エネルギーを全て使い果たし、身体はとうに限界を迎えていたのだ。今度こそ終わりだ。





「───何だ?森の奥から火が……、早く消しに行かなければ」

そういうと青年は大きな鷹の背に乗り煙の方へと向かった。するとただならぬ雰囲気に気がつく。

(これは……、あ、あいつまさか!)

目を凝らすと人影が見えた。

「ジェフト、聞こえるか!!」

返事は無い。それでも倒れ込んだ2人を担ぎ、そのまま逃げようとすると骸骨が止める。

「あぁ、そういうことか……。俺が相手だなんて、君は運が悪いね。普通の火で骨は溶かせない。でもそれは約1600度までの話...だったよな?『火球(ボライド)』!」

そう叫ぶと空から名前の通り火球が落ちてきた。辺りを眩しく照らす。

青年は2人と一緒に鷹に乗り、上空から骸骨が塵になるのを確かめてから燃えてる箇所に水を撒きすぐに学校へと戻った。

「ジェフト、こういう時は逃げるもんだって言ったんだけどな。……よく耐えたな」



ジェフトは目を覚ますと医務室にいた。

「あれ……、俺は何してたんだっけ」

隣のベッドからリュックが話しかける。

「お、ジェフト起きたか。お前結構長く眠ってたな」

「リュックか。お前大丈夫だったか?」

「俺より自分の心配しろよ……。俺は救助されてからすぐに起きたけど、お前は3日間ずっと寝てたんだぞ。その間に俺、母ちゃんにめちゃめちゃ怒られてさ〜」

「……3日も寝てたのか。そういえばあの状況でどうやって救助されたんだ?正直もう死んだかと思ったぞ」

「あ、そうそう!最初に撒いた火が広がって、火事だと間違えて救助に来たらしいぜ。しかも助けに来た人が生徒で最強の人が来てくれるなんてツイてるよな」

その時、ドアが開く音がした。

「ほら、あの人!」

「て、アンドレさんじゃん!」

「おお、ジェフトもう起きたのか。ちょっと待ってろ、先生呼んでくるから」

コソ…(おい、リュック、あの人が生徒最強って本当か?)

(えぇ?知り合いだろ、てかお前以外みんな知ってると思うぞ。有名人だからな。たしか初めて魔物の沈静化に成功した人らしいぜ。しかも手懐けたっていう)

(そんな凄い人だったんだ……)


その後来た先生によりかなり痛い治療を受けた。特にジェフトの身体はボロボロで右手から肘にかけて骨が折れまくっていたらしい。さらに右手は熱を纏った痕があり、大火傷のようだ。

(これが勉強した作用反作用ってやつか……。まあ理屈知ってても痛いのは変わらんな)



夜、周りは寝静まっている。不思議とジェフトは眠気がなかった。

(また俺は助けて貰っちまった。もっと俺が強かったら……。気持ちだけで俺は何も出来ねえじゃねえか。悔しい、悔しいなあ)

敗北の味を噛み締め、1人で枕を濡らした。

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