04:テンプレ通りの教会
「文字が読み書き出来るなら、誓約書にサイン貰えるかな?」
部屋で一人寛いでいると、何か偉そうなオッサンが近寄って来た。
いきなり挨拶もなく命令するって、どうかと思うぞ?
しかもこのオッサンが会社の嫌味な上司に似ていたので、余計にムカつく。
因みに先生は、仲の良かった上司に雰囲気が似ている。
先生は今、薬師師長に会いに行っており、席を外している。
コイツは廊下で先生に会ったようで、「文字が書けるのは聞いた」と偉そうに言ってきた。
無言で見つめる俺の前に、誓約書とやらを置くオッサン。
名乗りもしないから、オッサンでいいだろう。
『 せいやくしょ
このくにのために つくします
おかねはすべて くににあずけます
てにいれたそざいは むじょうけんで
くににおさめます』
おい。ブラックにも程があるだろ。
先生の授業中にいきなり乱入してきて、自己紹介も説明もなくサインしろだと?
まぁ、今は休憩中だが、そういう問題では無い。
しかも気になるのは、誓約文とサインの間が妙に空いているこの誓約書。
空白部分の上に手をかざし、何かあるだろ?と思いながら手を動かした。
『ぼくのこうけんにんは だいしんかんです
だいしんかんには さからいません
ぼくのもつけんりは だいしんかんのものです』
「ただいま戻り……何をしているのですか?」
先生が戻って来て、俺とオッサンを交互に見る。
オッサンは慌てて誓約書を隠そうとしたが、その前にサッと手に取る。
文字の浮かんだ誓約書を、先生に渡した。
先生は恐ろしい形相でオッサンを睨む。
「大神官とは、貴方の事ですよね?国に納めると書いておきながら、実際の権利は貴方ですか?そもそも魔法誓約書でこのような内容にサインしたら、奴隷も同然じゃないですか?」
「あ、いや、それは、後見人が居た方が良いだろうとの気遣いでして」
奴隷にするのが?
言い訳するオッサンの顔は汗まみれだ。
「これは陛下に渡しておきます。退室しなさい」
先生は、オッサンを部屋から追い出した。
「申し訳ありませんでした」
先生が頭を下げてくる。
「いやいや、先せ……アルハトさんが謝る事じゃ無いですよ」
心の中で先生と呼んでいたので、そのまま口に出そうになってしまった。
危なっ!
「教会は国とはまた別の組織なんですよ。今日は偶々王宮に居たのですか、今の状況を鑑みると偶然ではなかったのかもしれませんね」
確かに、あんな手の込んだ誓約書は準備が必要だろうな。
国とは別の組織。
俺を召喚した国が在った頃から、存在するちょっとアレな組織だと覚えておこう。
絶対に近付かないぞ、教会。