14:名は体を表す?
護衛という名の監視である騎士と黒魔導士と共に、城の敷地を出た。
当初は騎士の訓練や魔法の訓練も受ける予定だったのだが、翻訳機能のブッ壊れ具合から、どちらもチートで国に縛られる予感しかしなかったので辞めた。
でも先生と薬師師長は本当に良い人だったので、この国自体はそれなりに信用している。
なので郊外に家を買って住む事にしたのだが……まさかの監視付きかよ!
まぁ、俺の事情を知っている奴が側にいた方が、何かとフォローしてくれるだろうしな。
……と、思って割り切ろう。
俺一人じゃないという事は、掃除や洗濯、食事の準備をする使用人が必要という事だよな。
黒いワンピースに白いフリル付きのエプロンのメイドさん。
個人的には、ヘッドドレスを付けて欲しい。
郊外ではあるが、歩けない距離ではないとの事なので、屋敷まで徒歩で行く事にした。
気の良い商人の馬車が「乗るかい?」と声を掛けてくれたりしたが、急ぐわけではないので丁重にお断りした。
「親切な商人じゃないからな?そういう人も居なくは無かったが、大概が騎士のコイツと魔術師の俺を無料で護衛に使おうって奴らだからな」
黒魔導士改め、魔術師アザトースが教えてくれた。
実はアートモが悪意とか敵意の度合いで頭の上に三角のポインターを表示してくれていたので、見分けは付いていた。
信号と同じで青・黄・赤で識別される。
アザトース自身、黄色表示だったりする。警戒されてるんだろうなぁ。
〈アザトースって名前自体でアウトだけどな!白痴の魔王だ!〉とは、ガイア談。
クトゥルフ神話の邪神らしい。
うわぁお。
騎士の名前は、ボールス。
ガイア曰く〈円卓の騎士と同じ名前!〉との事。
彼の識別は青。〈青中の青、真っ青〉とはアートモ談。
余談だけど、王様は黄色、先生もなんと黄色。宰相だもんな、うん。
薬師師長は青、魔法長は赤寄りの黄色だそうだ。
あの教会のオッサンは勿論真っ赤っかな!見てないけど!
王宮を出るまでこの機能を作動しなかったのは、俺が腹芸が苦手だと判断したからだとか。
うんうん。
先生が黄色だと判っていたら、絶対に態度に出てたわ、俺。
「おおぉぉぉ!立派!」
豪邸と呼ぶのに相応しい大きさの建物が目の前に在った。
門から屋敷の間に、噴水が有るんだけど!?
門の前に門番が居ないのが、逆に違和感だよ。
「門の開閉は、ここのプレートに手を置くと、登録してある人は開くから」
アザトースが手を置くけど、開かない。
「え?あれ?登録してあんじゃないの?」
本気で焦っているけど、大丈夫か?
ここまで来て、まさかの野宿?もしくは、王宮に戻るとか嫌だからな!
「力尽くで開けます?」
ボールスが言う。
「馬鹿なの?馬鹿なのかな?今、力尽くで開けちゃったら、この屋敷のセキュリティ無くなるよね?」
思わずツッコむと、あぁ!と納得するボールス。
大丈夫か?この脳筋。
メイドの頭のは、本当はヘッドドレスではなく、ホワイトブリムと言います。