13:イェ~イ!独り立ち!え?独り立ち?
例の本の翻訳も終わり、この世界での常識も理解できた。多分。
とうとう王宮の仮住まいを出て、独り立ちを迎えます!
ありがとう、先生。
薬師師長、ワカティさん。
特にワカティさんは、俺を見下しながらも乾燥させる前の薬草を説明してくれた。
〈私の鑑定があれば、不要な説明ですね〉
アートモが更にワカティさんを見下していたのは、絶対に内緒だ。
〈それにオレ様のサーチがあれば、簡単に採取出来るしね~〉
美少女に厳しいな、ナビシステム達は。
ナビ達の声が俺にしか聞こえなくて良かったよ。
「郊外に家を買ったんだって?」
王様に質問されたので、素直に頷く。
ここは初日に来た応接室。
室内には王様と先生と、扉の所に護衛騎士。
鎧姿ではなく、騎士服に帯剣だ。
「実はまだ実物は見てないんですけど、間取りとか地図で場所とかは確認しました」
すぐに住めるように先生が手配してくれたから、信用している。
「淋しいから、偶には遊びに来てね!」
王様が俺の手を取ってブンブンと振る。
友達かな?友達だったかな?
違うよね?
色々感謝はしているけど、初日に会話してから会うの2回目だし、親近感とかは皆無だ。
むしろ会いに来るなら先生にだな。
「で、だ。1人で住むには広過ぎると聞いてる」
王様が俺の手をパッと離し、中空で手を振る。
誰かを呼んでいるように。
扉の前の騎士が横にズレて、扉を開けた。
「失礼します」
入って来たのは、例のイケメン騎士。
「失礼します」
その更に後ろから、例の黒魔導士。
二人が入って来たら扉が閉められた。
数歩進んだ二人は、揃って頭を下げる。
騎士は右手の握り拳を胸に当てていて、魔道士は普通に体の横に腕を下ろしている。
騎士の挨拶は心臓を捧げるとか……いや、騎士じゃなかった!
ヤバッ。元ネタ漫画だった!「駆逐してやる」な、アレだ。
巨人が進撃するのかと思ってたら、主人公の事だったんだよな。
いや、今は巨人はどうでも良い!好きだけど!!
「この二人を君の護衛に据えるから」
は?王様、お馬鹿さんなのかな?
勇者を護衛?要らないよね、マジで。
〈護衛という名目の監視だな!〉
うん。そっちの方がしっくりくるね。
「宜しくお願いします。抱えて逃げるのは任せてください」
騎士も馬鹿なんだな。
何で勇者を抱えて逃げるんだよ。
戦えよ!俺も戦うよ!
しかもその手つきは、所謂姫抱っこだよな!?
何、本気で護衛?する気になってんだよ。
監視しろよ!!
〈ちょっと……不思議な方ですね〉
アートモが引いてるよ。
ドン引きだよ。
〈こわっ!なんかコイツ怖っ!!〉
初めてガイアの意見に同意したかもしれない。
「宜しくお願いします。色々支え合って行きましょう」
ニッコリと微笑んで挨拶してくる黒魔導士。
黒魔導士は黒魔導士で、一癖も二癖もある感じだ。
常に礼儀正しいが、俺はコイツが「今更かよ!ヘッボいな王国魔術師!!」と開口一番叫んだのを見ている。
嫌いじゃ無いけどな、腹黒。
俺を嵌めたり、貶めたり、陥れたりしなきゃ、という条件が付くけど!