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やり直し精霊姫は加護なし皇子の寵妃を目指す 死にたくないので結婚します!  作者: 柊 一葉


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政略結婚のすすめ

占術士の一琳(イーリン)がお茶を飲んで帰った後、私は(カイ)と共に四阿(あずまや)へとやってきた。


ここは先帝である父が、母のために作った場所だった。


丸い机の上には、牡丹の絵が美しい茶器が並ぶ。

その茶器のまわりを、小さな精霊たちが嬉しそうな顔で飛び回っていた。


泰仁(タレン)は現在、第一皇子の即位に向けて動いています。弟皇子たちとその座を争っているらしく、何やら不穏な空気があるとか」


()と同じだわ」


大国とはそういうものです、と(カイ)は何でもないことのように話す。


「皇子の中には、禁術を使って兄弟を殺めようとする者もいるみたいですよ。これだから人間は」


「精霊族のように、皆がのほほんとは暮らしていけないのね」


泰仁(タレン)を見てきた(チャン)の報告では、その禁術については引き続き観察するとのことだった。

けれど、今のところ病や呪いの発生源となるようなものは見つかっていない。


「私の記憶では、第1皇子は今から2年後に即位式する……。病で自国民が倒れていく中で、そんなときこそ慶事をって、すごく派手な祝宴を開いていたから印象に残ってる」


「病は気から、といいますのでね。ある程度の鬱々とした空気であれば、祝宴などの明るい話題で何とかなることはございますが」


結局、それからまもなくして泰仁(タレン)もほぼ全滅というあり様だった。


「前回は、あなたと泰仁(タレン)に行ったのよ」


「姫様が心彩(シンツァイ)の外に?」


「ええ、高名な医師が泰仁(タレン)の首都にいたから……。そのとき、反逆罪で皇子様が処刑されるのを見たわ」


「それはまた……。おつらい思いをなさいましたね」


(カイ)は顔を顰めた。


「今はまだ、皆生きているってことよね。……泰仁(タレン)の皇族は加護持ちだから、簡単に倒れたり死んだりしないわよね?」


精霊族は全員がその身に加護を宿しているが、泰仁(タレン)では加護があるのは皇族や高位の貴族のみ。加護はその種類によって恩恵は異なるが、基本的に加護持ちの人間は身体が強いのだ。


禁術を使って殺し合いをしたところで、そう簡単に争いは終息しないだろう。


(カイ)によると、争っているのは1、2、3番目の皇子であり、4番目以降の皇子たちは皆、すでに継承権の放棄を宣言しているという。


「私が気になったのは、第五皇子です。今、諸外国に彼の婿入りの話が持ちかけられています


「第五皇子……!」


処刑台で見た彼だ。

泰仁(タレン)でも珍しい銀髪に、虚無な目が思い出される。


「我が国にも、半年ほど前に『婿にどうか』という書簡が届いていたのですが保留しておりました」


保留というか、放置ではないだろうか?

この心彩(シンツァイ)に、他国から婿を取るという発想はない。


(カイ)のことだ、鼻で笑って書簡を放置したに違いない。


「婿入りね……。それは同盟国を増やしたいということ?」


「最初は私もそう思いましたが、どうやらその第五皇子は加護がないらしいのです」


「加護がない?」


私は眉根を寄せる。


泰仁(タレン)の皇子たちは、あと一年もすれば全員処刑される。当然、その第五皇子も」


「第一皇子の(ガオ)は、現時点でかなり疑心暗鬼になっているようです。異母弟たちを反逆者として捕らえるのは想像できます」


(カイ)にとっても、予想外の未来ではないらしい。

そもそも大国では、帝位争いに敗れる=命を失うというのが通常であり、泰仁(タレン)に限らずそういうものなのだ。


「今、第五皇子を外へ出したがっているのは、彼の身内が処刑されないように策を講じたってことかしら?」


後ろ盾がないと聞いていたが、実は支援者がいたのかもしれない。

そもそも、加護持ちの兄に狙われたのに何年も生き延びられたのは、その人たちのおかげ……?


でも(カイ)の答えは違った。


「第五皇子に大した後ろ盾はありません」


「ないの?」


「亡き母君の生家は商家でして、皇子の祖父にあたるご当主が多額の持参金を出して他国へ……と売り込んでいます」


肉親の情か、それとも商売道具として他国と縁を持たせるために利用したいのか。


人には、血縁というだけで無条件に愛する者もいれば、とことん自分の利益だけを追求する者もいる。第五皇子の祖父がどんな考えなのかは、今のところわからないなと思った。


「後ろ盾ではなく、利用価値があるかもしれないから支援してるってこと?」


「おそらくは」

「心が真っ黒になるわね、他国のそういう話を聞くと」


「外の世界は、揉め事ばかりですよ」


人は醜い、と私が気を落としていると、(カイ)が本題を切り出した。


「姫様。ここで提案がございます」


「何?」


「その第五皇子、王配に迎えませぬか?」


真剣な目が、これは政治的な策なのだと伝えてくる。

私は突然の結婚話に驚くも、(カイ)が何を考えているのかはすぐにわかった。




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