作戦会議
それからわずか二ヵ月、凱の動きは早かった。
まずは国家運営資金の見直し、近隣国の金や薬の流れを調査、泰仁に密かに人を派遣し病の発生源を探るなど、私だけではとてもできなかったことをわずかな時間で行動に移した。
私はというと、国内の医者や薬草学者、昆虫学者なども集めて病の研究を始めることに。
二度目の人生で得た知識や経験は全部使わなきゃ。
あれが水で伝わる病じゃないことはわかっている。だから水源の調査はしなくていい。
けれど、根本的なことがわからない。
「どうやって人から人へ感染するのか、それがわからないのよ」
健康な者を隔離しても、症状は出た。
そうなると、空気か虫か、何か目に見えないもので感染しているのかもしれない。
より詳しく説明したとき、凱はあらゆる可能性を示してくれた。
「接触していない人間にも感染するとなれば、『呪い』や『祟り』という可能性もあるかもしれませぬ」
「呪い?祟り?」
「はい」
そんなものがあるとは知っていたけれど、純真な精霊族にその発想はまったくなかった。
一度目の人生も、二度目の人生も、身体の不調=病だと思い込んでいた。
「呪いは人が人にかける悪意の塊よね?」
「はい、そうです」
「祟りは神々の怒り……。確かに、病じゃないといわれた方が自然な気がする」
もしかすると、二度目の人生で凱がその説でも調べてくれていたかもしれない。
けれど、すでに症状が出ている者たちを癒すことに意識が向いていて、とても呪いや祟りの可能性にまで手が回らなかったのかも。
「祟りの実例としては、50年ほど前に霊獣の怒りを買って2つの国が滅んでいます。むやみに山を切り開いてはいけないというのに、霊獣が棲む山に手を出したのがきっかけだと伝わっています」
「泰仁で何かがあったってこと……?」
凱は、呪いや祟りの発生源を探ってくれると言った。
「なれど、病であるという可能性も捨てきれませぬ。念のため、薬草を多く確保しておく必要はあるかと」
「そうね」
薬は、希少なものであれば外貨を稼ぐ術になるので、用意しておいても無駄にはならない。
調査や外交先の開拓などは凱に任せ、私は薬草園や診療所を然るべき場所に作ることにした。