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第7話 KY勇者リーオス君再登場

「いやっ、俺っ、お前の誕生日とか知らされてないしっ!?」



 約200名からの白けた視線に晒され、涙目のリーオス。

 知らないって言っても、場の空気ってもんがあんだろうよ。




「私達、ガッツリ祝福ムード出してましたよね?」


「せめて中尉が泣き止むまで待つとかさぁ……」


「むしろ、アレで涙引っ込んでたよな?」


「これだから勇者って奴は」


「この早漏野郎があだだだだだだだっっ!!? なんでっ!? 中尉なんでっ!?」



 てめえロイド、早漏の何が悪い? 調子乗ってっと、もぐぞ。




「ほら、あんまり苛めないの。久しぶりね、リーオス」


「マリエルっ! ……ほぐ&@※バ#ひょっっ!!?!?」



 四方八方からの口撃に晒されるリーオスにかけられた、救いの声。

 だが当の本人はそれどころではなかった。




「ママママリエルっ! そ、そそ、その、そのかっこ、ここっ、格好はっ!?」



 無理もない。久しぶりに会った惚れた女が、脚丸出しのレオタードアーマーで出迎えてきたのだ。

 鼻を押さえた手の下からは、赤い筋が2本垂れてきている。



「っ!? あんまりジロジロ見ないでっ……えっち」


「はぅあっ!?」



 そこに、俺を窮地に陥れた必殺恥じらいアタックが炸裂。赤い筋は噴水となる。

 蒼剣の勇者リーオスは、真っ赤な鼻血を撒き散らしながら卒倒した。


 その顔は、とてもとても幸せそうだった。




 おお、ゆうしゃよ。しんでしまうとはなさけない。





 ――暫くお待ち下さい





「お前達に伝えておくことがある」


「また鼻血出てんぞ」


「うるさいよっ!?」



 体は正直だな。

 俺もよく正直者のムスコに困らされてるから、気持ちはわかる。



 先程の鼻血スプラッシュを、なかったことにするかのような真面目顔のリーオス。

 だが、チラッチラとマリエルを見ているせいでいろいろ台無しだ。



 尚、射精はしなかった模様。

 俺と似たような童貞臭を醸し出してるくせに、生意気な。



「とにかく! テントに幹部を集めてくれ……教会の内情に関わる話だ」



 声を落とすリーオス。

 いいだろう、こっちもそろそろ真面目な話がしたい。


 俺は必要なメンバーを集めてテントに入った。



 話を聞くのは俺達グリフィス特務隊と、モーゼス達ギルド組。

 統合軍からはギリアム閣下と中隊長達だ。


 その中にはロイドの姿もある。

 小隊単位で来た奴らは、纏まって幾つかの中隊になっていたのだが、なんと臨時中隊長に任命されたらしい。



「じゃあ、本題からいくぞ」



『勿体ぶると、大事なところで邪魔が入るのはお約束だからな』




 そう切り出したリーオスは、本当にいきなり本題から語り出した。






「教会はあの少女……クラリスを殺すつもりだ」





 クラリスの肉体は邪神と同一のものだ。

 クラリスの力を利用したことが世間に知られると、ただでさえ下降を続ける教会の評判が益々悪くなる。


 参戦してる2人の勇者――エインダールとリーオスは、邪神討伐の他、クラリスの暗殺も指示されているらしい。




「セインとカンタビレは不参加か。全員いたら、流石に面倒だったな」



 セインは、アグリア修道院での限界突破のダメージが残っているらしい。

 ……本当は、小便ちびって命乞いをした手前、俺と会いたくないだけじゃないだろうか?



 カンタビレは連絡付かず。十中八九、逃げたな。


 あの勇者も、勇者の歴史の中では稀有なタイプで、強欲ではあるが傲慢ではない。

 名声にも興味がなく、自身の実力で楽に利益を得られる戦いにしか赴かないのだ。



「順番も問題だ。上は女王の核よりも前に、クラリスを殺せと言ってきている」


「そんなことしたら、女王と群れの弱体化が解けるわよ!?」


「あぁ……寧ろ教会は、そこも狙ってる」



 『不足の事態』で力を取り戻した女王により、連合軍の第1波は壊滅。

 回復したセインと、現在グランディア平原に向けて急行中の『聖女』イレーヌを中心に、集結中の各勢力を『教会が』まとめ上げ、『真の決戦』に挑む。



 それが、聖導教会上層部の描いた『教会復権』の筋書きらしい。



「アホだな」


「人類滅亡、待ったなしね」



 その頃には邪神の後続も追いつく。

 特級戦力がセインと聖女だけで、どうにかなる相手じゃない。


 まあ、この状況で自分達の利益を最優先に持ってくる逞しさだけは誉めてやろう。

 クラリス最優先の俺達といい勝負だ。



 だが、目的がかち合った上に、その後の人類の展望が暗すぎる。

 その台本は没にしてもらうとして……。




「問題はエインダールだな。一対一なら敵じゃねえが……」



 女王からクラリスを引っ剥がしながらとなると、相手をする余裕があるかどうか。

 古強者ってやつは、若者の隙をいやらしく突いてくるからな。



「リーオスが尊敬するような人なら、説得はできないの?」



「無理だな」



 マリエルの問いに答えたのは、同じく古強者のモーゼスだ。



「教会の力が削がれれば、ガルデニアも傾く。国が傾けば、最初に割を食うのは民草だ。奴はガルデニアの民の生活のためなら、虐殺だろうと躊躇いなくやってのける男だ」


「そりゃまた……随分と極まった御人だな」



 そうゆう精神性の奴は、本当に厄介だ。

 最悪、自分の死すら戦術に組み込み、目的を遂げる方法を模索してくる。



「エインダール様は俺に任せてくれ。敵わないのはわかっている。だが……俺はあの方に、子供を殺させたくはないんだ」


「リーオス……どうなさいますか、隊☆長殿?」



 マリエルめ、女の顔しやがって。そう聞かれて断れるかっ!



「好きにしろ。仮にしくじっても、勇者1人くらいどうにかするさ」


「感謝する……!」



 さっきは悲壮な覚悟って感じだったが、やる気十分のいい顔になった。

 それは、いいことなんだが……。




 ずっとマリエル見てねーで、俺にも感謝しろ?

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