表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/149

第3話 グレン隊☆長

 真っ暗な空間を、幾筋もの光の帯が照らす。



 不思議な場所だ。

 来たことはない筈なのに、ずっと前から知ってるような。


 魂に刻まれているような、そんな感覚だ。



『っ!?』



 そんな空間の一角に、闇が、あった。

 とてつもなく巨大な闇。


 大きさすら測れないほどに巨大なそれは、何本もの光の帯に囚われ、動きを封じられていた。

 いや……よく見ると帯と帯の隙間から、自身も黒い光の帯を外に伸ばしている。


 その動きはウネウネと気味悪く、まるで邪神の触手のようだ。

 黒い帯の行先を見ると、その先端にはまた、別の光の塊があった。




 人の形をしている。



 黒と白、他にも何色もの光が混ざり合った、歪なヒトガタ。

 だが、俺は何故か、その光に安らぎを感じていた。


 俺の視線に気付いたのか、ヒトガタが僅かに蠢く。

 動く度に手足が伸び、指が生え、より人間に近い形になっていく。


 そして完全に人の姿になると、ヒトガタは目が眩む様な、強い光を放った。



 最後に見えた姿……あれは――





 ――クラ……リス……?




 ◆◆




「では、ブリーフィングを始める」



 ……うむ、思っていたより気持ちいい。

 なんかこう『隊☆長』って感じがする。



 ランドハウゼン到着まであと僅か。

 現地での行動を確認するため、我らグリフィス特務隊は、ブリッジでのブリーフィングを行うことになった。


 ブリーフィングは、作戦前の部隊にとっては恒例行事だ。

 だが我々グリフィス特務隊にとっては、何と初ブリーフィングである。


 何せ人数が少ない上に、基本的に自由行動。

 部隊内では常に会話があり、情報共有も十分。

 実働要員のマリエルとアルテラは優秀と、ブリーフィングが必要な状況が訪れなかったのだ。



 俺も隊長を任されて、これで4ヶ月になる。


 1度は言ってみたかったこの台詞。

 口にするのは、やはり感慨深いものがある。



「凡そ45分後に、我々はランドハウゼン皇国に到着する。今回の標的は『天空王』グリフエラーナ。各人、緊張感を持って今後の動きを把握してほしい」



 体調も万全だ。

 妙な夢は見たが、クラリスのお陰か寝覚は非常に良かった。



 因みに、手は手汗に負けて30分で離したらしい。

 ホントにクラリスのお陰か?




「ではライル。詳しい説明を頼む」




 ……だって仕方ないじゃない。

 この船のスタッフ、みんなライルの部下だから、連絡コイツに集まるんだもん。


 精一杯キリッとした顔を保つ俺に、ライルは苦笑いを浮かべながら前に出た。

 おのれ。



「1時間ほど前、ランドハウゼン皇国の観測隊が、アウストラ山脈上空に天空王が飛び立つのを確認した」


「天空王は、そのままランドハウゼン皇国に向けて移動を開始。飛行速度から計算して、凡そ3時間後には皇都に到着するだろう」


「皇国軍と駐屯していた帝国軍、及び傭兵部隊は、オリアナ平原に展開しこれを迎え撃つ構えだ」



 オリアナ平原は、皇都の目と鼻の先にある大平原だ。


 本来なら部隊展開はもっと先で行うべきなのだが、空を行く天空王のルートは自由自在。

 彼らを素通りして、皇都を襲う可能性もある。

 あまり皇都から離れるわけにはいかないのだ。



「また、皇国は『光の勇者』セイン・バークレイにも協力を要請したが……決裂したようだ。どうも、見返りに第二皇女を『ハーレム』に差し出せと言ってきたらしい」



 ランドハウゼンの第二皇女……アリア姫か。

 闇精霊と猫獣人(ねこじゅうじん)のハーフで、俺やライルとも同い年。

 まだ学生だが、かなり優秀だって話だ。


 そして見たことはないが、メチャクチャ可愛いらしい。

 確かに、奴が欲しがりそうな娘だ。



「詳細はわからんが、とにかく皇王はその話を蹴った。まぁ、リーオスのパーティが負けてるからな。パーティ単位では格下のセイン達は、精々予備戦力扱いだ。

 奴にスタンドプレーに走られると、逆にやりづらくなる。こちらとしても特に問題はない」



 フハハッ、セインざまぁ。


 そういやセインも、アリア姫と同じ帝国の学園生だったはずだ。

 こんな要求をしてくるってことは……奴め、直接行ってフラれたな?


 ざまぁっっ!!!




「何にせよ、これで俺とお前たち、グリフィス特務隊が、今回の主力になることが決まった………が、本隊に合流する前に1つやることがある。

 先程、『蒼剣(そうけん)の勇者』リーオスが見つかった」



 元凶の名前にざわっとなる艦内。

 皆、視線でライルに次の言葉を促す。



「見つかったのは、案の定ランドハウゼンの近郊だ。奴め、のこのこと街道を歩いてきたらしい。

 既にボロボロで衰弱も激しいが、腐っても勇者だ。発見した小隊だけでは、抑え込むので精一杯のようだ。

 天空王の標的はリーオスでほぼ間違いない。我々は先ず、彼らの応援に向かいリーオスを捕獲する。奴をふん縛って、平原のど真ん中に放り出してやる」



 ギラリ、とライルの目が光る。

 マリエルは指をポキポキと鳴らし、アルテラは槍の先端を冷たい視線で眺め出した。


 みんな、やる気満々で何よりだ。

 ちょっと殺る気も迸ってる気がするんだけど、生け捕りだからな?


 まったく、仕方のない奴らだ。

 ほら、リリエラから『ひっ』て小さな悲鳴聞こえたし。




「グレン様……快楽殺人者みたいな顔してます」



 俺だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ