表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/149

閑話 マリエルの♥秘密♥の報告書

 部屋を取ると、グレン君達は街を見物に出かけた。


 私も行きたかったのだけれど、ギルドから急かされている報告書の作成のため、一人留守番だ。



 ギルドが求めているのは、先日のヤムリスクで遭遇した2つの事件の報告書。

 コルトマンの件と、出現した邪神との戦闘について。



 エッチな報告書だと思ったかしら?

 残念だったわね。もっと重っ苦しいヤツよ。



 コルトマンの件に関しては、既に提出を済ませている。

 今は残る1つ……邪神の方を作成中――




 なんだけど……先ほどから、筆は1箇所から全く進んでいない。



 私の筆を止めるのは、巨大邪神との戦いに駆けつける直前の一幕。

 全身ボロボロなのに、狂ったように笑いながら邪神を斬りつける、グレン君の姿だ。




『グランディアの魔人』



 邪神を見つければ我を忘れて襲い掛かり、仲間はおろか、自分の被害さえも構わず嬲り続ける狂気の殺戮者。


 ヤムリスクで彼の過去を聞いた時、何となく納得してしまった。

 『ああ』なってしまうは、確かに仕方ない、と。



 でも……アレなのよね。

 私が、有事の際に彼を囮りにするよう言われている、最大の要因は。




『頭の片隅にはおいておけ』




 彼が狂気に囚われ、人であることをやめ、守り手としての役目すら放棄してしまうのではないか。

 レベッカも、その可能性を捨て切れなかった。



 そして、実物を目にしてしまった私も――




「こんなこと……迷う必要もないはずなのに……」



 彼に『何とかする』なんて言っておきながら、頭から離れないのだ。

 人の道を外れた、悪鬼のような彼の姿が。



 アレをそのまま報告すれば、ギルドは益々、彼が危険人物だという認識を深めるだろう。

 きっと私にも、もっと具体的な指示を出してくる。

 何より私自身が『あの姿が本当のグレン君なんだ』って、認めてしまうような気がして……。




 凄くエッチなのに免疫も無くて、からかうとすぐに狼狽て。

 でも決める時はちゃんと決めて、一度懐に入れた人は絶対に見捨てない……それがグレン君なんだと思っていた。



 でも『魔人』の哄笑が、私が知ったつもりになっていた彼の姿を覆い隠す。





 クラリス達と、楽しそうに笑うグレン君。



 寒気すら覚える、凄絶な笑みを浮かべる『魔人』。





「本当のあなたは……どっち……?」




 報告書は、今日も仕上がらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ