お菓子やオヤツをあげて可愛がるのは、面倒を見てるとは言えない
夕食後、今日も今日とて、隣室から父親の声が聞こえてきた。
それは、最近家族に加わった、私からしたら新しい妹となった存在に向けられていた。
「にゃーにゃーにゃー」
父親がそう口にすると、ご機嫌そうな甘えた妹の声が返る。
《ふみゃあ》
その返事に、父親は満足そうに今度は人間の言葉を口にした。
「いい子いい子、ほんとにお前はいい子だなぁ」
壁と廊下を隔てているので、顔までは見えないがデロデロに鼻の下をのばして、新しい家族である子猫を構い倒しているだろうことは明白だ。
古い家だから、隣室のテレビの音どころか会話すら楽々聞こえてくる。
「チ〇ール食べるか??
チ〇ール、チ〇オチ〇ール」
父が子猫用にと買ってきた餌というか、オヤツをあげようと、商品名を口にした。
その途端、まだまだ成猫には程遠いと言うのに、子猫は発情期並の鳴き声を出して興奮しだした。
《ふぅみゃうあうあるるる~♡》
「そうかそうか、よしよし今やるからなぁ」
いや、やるからな、じゃねーよ。
さっきもキャットフード食ったばかりなんだぞ、吐くぞ??
吐いたら、誰が片付けると思ってたんだクソ親父。
つーか、可愛がるだけじゃなくて面倒をちゃんと見ろや。
父親は可愛がるだけで、子猫の世話をしないのだ。
さすがに注意しよう、なんならチ〇オチ〇ールも取り上げよう。
そう考えて、部屋を出ようとした時だ。
階下から、ズン、ズン、ズン、と足音が聞こえてきた。
心なしか、怒りすら滲ませているように感じられる足音だった。
その足音が、隣室の前で止まる。
隣室の戸は引き戸なので、ガララとそれが開けられる。
足音の主は母親だった。
まるで、不倫現場に突入した本妻のように母は父を怒鳴りつけた。
恐らく、下の階にまで父親の声が届いていたのだろう。
「可愛がってばっかいないで、ココのトイレ掃除くらいしろや!!」
私が行って注意するまでもなく、母がそう怒鳴りつけ、父からチ〇オチ〇ールと子猫を取り上げたのが伝わってきた。
ちなみに、【ココ】とは子猫の名前である。
私が名付けた。
母が、ココを階下に連れていく気配がした。
そこで、私は部屋から顔だけを出して、様子をうかがった。
するとそこには、ガックリと肩を落として、道具片手にトイレ掃除に向かう父の姿があった。




