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お菓子やオヤツをあげて可愛がるのは、面倒を見てるとは言えない

作者: 狭山 涼
掲載日:2021/12/05

 夕食後、今日も今日とて、隣室から父親の声が聞こえてきた。

 それは、最近家族に加わった、私からしたら新しい妹となった存在に向けられていた。


「にゃーにゃーにゃー」


 父親がそう口にすると、ご機嫌そうな甘えた妹の声が返る。


 《ふみゃあ》


 その返事に、父親は満足そうに今度は人間の言葉を口にした。


「いい子いい子、ほんとにお前はいい子だなぁ」


 壁と廊下を隔てているので、顔までは見えないがデロデロに鼻の下をのばして、新しい家族である子猫を構い倒しているだろうことは明白だ。

 古い家だから、隣室のテレビの音どころか会話すら楽々聞こえてくる。


「チ〇ール食べるか??

 チ〇ール、チ〇オチ〇ール」


 父が子猫用にと買ってきた餌というか、オヤツをあげようと、商品名を口にした。

 その途端、まだまだ成猫には程遠いと言うのに、子猫は発情期並の鳴き声を出して興奮しだした。


 《ふぅみゃうあうあるるる~♡》


「そうかそうか、よしよし今やるからなぁ」


 いや、やるからな、じゃねーよ。

 さっきもキャットフード食ったばかりなんだぞ、吐くぞ??

 吐いたら、誰が片付けると思ってたんだクソ親父。

 つーか、可愛がるだけじゃなくて面倒をちゃんと見ろや。

 父親は可愛がるだけで、子猫の世話をしないのだ。

 さすがに注意しよう、なんならチ〇オチ〇ールも取り上げよう。

 そう考えて、部屋を出ようとした時だ。

 階下から、ズン、ズン、ズン、と足音が聞こえてきた。

 心なしか、怒りすら滲ませているように感じられる足音だった。

 その足音が、隣室の前で止まる。

 隣室の戸は引き戸なので、ガララとそれが開けられる。

 足音の主は母親だった。

 まるで、不倫現場に突入した本妻のように母は父を怒鳴りつけた。

 恐らく、下の階にまで父親の声が届いていたのだろう。


「可愛がってばっかいないで、ココのトイレ掃除くらいしろや!!」


 私が行って注意するまでもなく、母がそう怒鳴りつけ、父からチ〇オチ〇ールと子猫を取り上げたのが伝わってきた。

 ちなみに、【ココ】とは子猫の名前である。

 私が名付けた。

 母が、ココを階下に連れていく気配がした。

 そこで、私は部屋から顔だけを出して、様子をうかがった。

 するとそこには、ガックリと肩を落として、道具片手にトイレ掃除に向かう父の姿があった。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  ほんとこれ。  良い時だけ可愛がってしつけやら日頃の居住空間の手入れやら定期的な通院やら。  ペットにすら嫌がられながら日々環境を整えている人間よりいい顔しかしないエサをくれる人間の方に…
[一言] ふふ、頑張れお父さん(*´꒳`*)
[一言] 部屋から顔だけ出すって、意外に難しいんだよね。 どうしても肩まで出てしまう。
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