とある勇者の追放TS
アホな話です
期待通りにはなりません
苦手に感じたら即ブラウザバックして貰うのがいいかと思います
その本当に突然の出来事でした。
「リディ、君にはパーティを抜けて貰う」
呼び出された宿の部屋で、勇者様が口にした私のパーティからの追放宣言。
宿の部屋になんて呼び出すから、てっきり勇者様に手籠めにされるのかと思って来ましたが、……なるほど。
僧侶と魔法使いまで部屋で待っていたので、複数人で強引に手籠めにされるのは流石に嫌だったので、少し安心したような、でも追放は困るような、不思議な気持ちです。
「どうして私が追放されるのでしょうか。先日四天王の一人を倒した時も、皆が私のお陰だって言ってくれたじゃないですか」
勇者様の意思は硬そうに見えましたが、それでも私は抗弁しました。
だって私にだってこのパーティで魔王を倒したいとの想いはありますし、幾ら何でも突然でしたから。
この勇者パーティの一員という仕事をクビになるなら、私にだって次を考える準備は必要ですし、退職金を含めた話し合いはしなければなりません。
「あぁ、確かにあの四天王を倒せたのはリディ、君のお陰さ。でもあの戦いで、俺達の心は折れたんだ」
顔色を蒼褪めさせた勇者様の言葉には、心の底からの恐怖が感じられます。
でも一体、何を恐れる事があるというのでしょう。
四天王であっても、何時ものように戦えば、問題なく倒せると証明された戦いでしたのに……。
「リディ、俺達はもう、君のような美人が魔物の股間のナッツを潰す様を見たくないんだ! 股間を押さえて蹲ったままの四天王を囲んで殴る俺達の気持ちが、君にはわかるか!?」
……あら、美人だなんて。
うふふ、少し照れちゃいます。
だけど気持ちはわかるかと問われたら、もちろんわかりますよ。
だって私も、ナッツをキュッとしてからブチィした後は、囲んで殴る事をお手伝いしてますもの。
隙だらけで楽しいですよね。
実はあんな風に殴っちゃうとお肉が駄目になっちゃうから、実家じゃできませんでしたし。
ただそれをまさか、勇者様たちが嫌がってたなんて……。
これは少し困りました。
このままでは本当に、私はパーティを追放されてしまいます。
私、リディ・アックスビーフは、アックスビーフ家の次女として生を受けました。
アックスビーフ家は牛の畜産で財を築いた家系で、特にダンジョンを使って肥育したミノタウロスのお肉は大陸一の味だと賞賛され、王家より貴族位を与えられる程でした。
尤も戴けた爵位は準男爵で、領地も以前から所有していた土地とダンジョンだけなのですけれど。
でも実は、基本的にミノタウロスは極端にメスが生まれにくい種で、生まれたメスは繁殖の為にお肉にはできません。
そして雄のミノタウロスの肉は、人間の歯では噛み切れない程に硬いのです。
故にアックスビーフ家では、雄のミノタウロスが成体となる前にナッツをこう、キュッとしてからブチッとして、雄を雌化させる秘術を家伝として継承していました。
そうする事で雄のミノタウロスの肉も雌に近く柔らかく変化し、大陸一の味だと賞賛される味になるのです。
しかし数年前、魔王が復活するとアックスビーフの生業は傾きました。
魔王が復活した影響により、多くの魔物は狂暴化し、……その影響は魔物の一種であるミノタウロスにも及びます。
狂暴化したミノタウロス達がダンジョンの中で傷つけ合えば、お肉の品質が悪くなってしまいます。
私達、アックスビーフの者が近くにいれば、暴れるミノタウロスも鎮圧できるのですけれど、流石に四六時中見張ってる訳にも行きません。
更に悪い事に、魔物の肉を口にすると、魔王の影響で狂暴化してしまうなんて噂が流れます。
特にアックスビーフは名指しで、私達は狂暴化したミノタウロスの肉を口にしていたから、ミノタウロスを取り扱えてたんだなんて、事の順序も理屈も無茶苦茶な噂が流れました。
恐らくアックスビーフの成功を長く妬んでいた者の仕業でしょうが、魔王が復活して世界が不安に覆われると、そんな噂を信じる者も多く出ました。
……ミノタウロス以外にも、普通の牛の飼育をしていたので、アックスビーフがすぐに潰れてしまう事はないでしょう。
ですがこのままでは、アックスビーフを拡大してきた柱である、ミノタウロスの畜産は潰えてしまいます。
そうなるともう、私はミノタウロスのお肉を口にできなくなってしまう……。
だから私は復活した魔王を倒して全てを元に戻す為、勇者様のパーティの一員として、武闘家『くるみ割り人形』のリディとして、ここまで旅をしてきたというのに。
こんなところでパーティを追放されてしまうのは、本当に困るのです。
でも勇者様は、もう私の話を聞いてくれる様子はなく、怖くて仕方ないからパーティを出て行ってくれと頭を下げるばかり。
……これでは流石に、私も無理は言えません。
だけど、窮地に陥れば、人はそれを打開する閃きを得る事があります。
私にとっては、正に今がその時でした。
勇者様達が私の戦い方、魔物のナッツをキュッとしてブチィするのを怖がるのは、勇者様達にもナッツがあるからなのでしょう。
つまりそれがなくなってしまえば、全ては解決するんじゃないでしょうか。
えぇ、その筈です。
大丈夫です。それを失っても死なない事は、多くのミノタウロスや魔物達が証明してくれています。
会心のアイディアに、私は思わず満面の笑みを浮かべます。
私がパーティを抜ければ、戦力が低下した事で苦戦し、勇者様達が死んでしまうかもしれません。
これも世界を救う為であれば、勇者様達もご理解くださいますでしょう。
「……リ、リディ?」
ね。
その後、女勇者率いる女の子パーティによって、魔王は打倒されて世界は救われました
一番手強かったのは、お色気枠の女四天王だったそうです
めでたしめでたし