表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/126

横槍

ほんとお待たせしました

「次も、行くんですか?」

「まだ擬人は滅んでないからね」

「それは何より……次はどこに行きます?」


 真剣な顔で白露が訊いてきた。先程とは温度感が違う。違い過ぎて風を引きそうなくらだ。

 起きてすぐに次はどこを潰そうか感がていた俺も人の事は言えないけどな。作戦も考えないとな……


「この世界で唯一と言ってもいいサーカス団が特徴的な2番街だ」

「も〜……主様、観光に行くんじゃないんですよ?」


 白露は、主様はたまにかわいい事しますよねぇと言いたげにニコニコしながらそ言い放った。

 これから凍りつく表情が非常に楽しみだ。俺も最初聞いたときは鳥肌立ったからねぇ。懐かしい。


「奴隷達を使った曲芸が有名だそうだ。何しろあそこは私的奴隷を除く全ての奴隷を管理する街でもあるからな」

「なるほど……盾を減らすんですね」

「そゆこと」


 世界樹を切り倒す過程で奴隷達は己の意思にかかわらず肉壁になる。そんな壁を相手にしている暇はない。

 それにその戦いにおいて捨て駒としてこちらに突撃してくるだろう。だからその6割をここで削っておきたい、というわけだ。

 まぁガリガリの男共にそんな事をする必要はないけれど、領主を残しておくと面倒極まりないから処分しなければならない。

 6番街はよく訓練された私兵が治安を守りおまけに全奴隷の3割を飼い慣らすやばいところだ。

 そんなところを攻めて挟撃でもされてら面倒極まりない。だから消去法的に2番街を消す必要があるわけだ。


「どうやって侵入します?」

「あそこは管理が杜撰だから夜中に女装して街に入って路地裏で活躍する違法芸人の振りでもしてればバレない」

「杜撰ですね」

「領主が領主だからな」


 ここは慈愛を信仰の柱にしている。だからパンとサーカスにリソースが割かれ、街そのものへの投資が出来ていない。

 兵士も表通りにしか配備できないし、他の街のように尖った役割がない。観光だけで生きている悲惨な街だ。


「何なら昼に入ってもバレない」

「えぇ……」

「大丈夫、大丈……!!」

「ふんっ!!」


 白露が壁に向かって大槍を投げ付けた。見えなかった。いや、何か居るの事くらいは分かった。

 だが、白露の動きもある程度捉えられるこの目でも見えなかった。それに……白露の槍も何も捉えていない。


「……」

『ははははははっ!くくくっ、ど〜こ投げてるんですか?』

「そこっ!!」

『どこ向いてるんですかぁ?きゃははは!』


 奴等が居る……幻を見せられている。能力が分かっても5感に頼る以上それを狂わされば打つ手は、ない。

「ぐぼぉ!」

「主様!くっ……離せっ!」


 俺に駆け寄ってきた白露が何かに掴まれたかのような動きをしている。見えないけれどそこに居るということだ。

 立ち上が……ぐっ、脚が。片手だとへたり込んだまま剣をうまく投げられないっ!!くそっ!こんな時にっ!!


『ほらほら、どうしたんでちゅか?』

「私を掴んでいるということは……私も掴んでいるということ。これはただの人形。わざわざエリムサルエを使わなくても壊せる。シィイィイィィイ!!」

『チッ……妬ましい。妬ましい……!!その強さ寄越せぇ……!私の人形にしてやるぅうぅ!!私のコレクションに加われぇえぇえ!!』


 街から6本の腕が足の代わりに生えた人型の悍ましい怪物がわらわらと出て来た。街の人間をこんな風に作り変えれる……?

 基本的に教徒は女神の所有物。街で女神の名代を務める領主に無断でこんなものにするなんて……


「貴様……領主だな」

『馬鹿な割に考えまちたねぇ〜。教皇レースの為に有力な奴等を処分したり奴隷達の調達に私のお人形を送り込んでみたら……邪魔な領主を殺していってくれるなんて、とーっても便利でちたよ』

「主様。そんな顔をしないで。そんな顔をするのは私に責められて数秒で果てたときだけにしてください」

「そんな時は来てほしくないんですが」

 

 白露がニコッと微笑みながら異形共を殲滅していく。白露が強すぎるのかそれとも異形が弱すぎるのか?

 こいつらはは素体により個体差が大きいのか?だとしたらあの四人は戦闘力が高かったしあり得る……か?


「シィイィイィィイ!!」

『高コストの傀儡使徒が!く、くそっ!……ふはっ!!こいつがどうなってもいいのか!?』

「はぁ……操ることにかけて私に勝てるとでも思ってるのか?」

『う、うご……動かないっ!?』


俺の体が全く動かせない……物凄い力が釣り合っていて動かない。多分動かしたら俺の腕が切れる。白露の糸で。


『馬鹿め……ふへへへへ!私の拘束限界は四百、お前はこいつの主導権を握りながら攻撃できるのかなぁ?』

「浅はか浅はか……蜘蛛なら糸を操りながら色々出来て当然。まぁ感覚が狂って大変で」

『な、なななな……くくく、くくくくく!馬鹿が。いやぁ……演技が上手すぎるというのも考えものだなぁ』


 白露の糸が、ない……?まさか感覚が狂って俺たち二人が錯覚していたのに合わせて演技していたとでもいうのか!?


『へはははは!貰ったぁ!!正中線上がぐちゃぐちゃに無くなればどれだけ回復力があろうと無意味。首なし人形として私のコレクションの補填にしてくれるわ!!』

「に、げ……ろ!!」

「主様……心配しないでくだ──」

「白……露」


 白露の頭を剣が切り裂いていた。知っている。こういう特殊な形態の人類は2つの脳があり、2つやられると死んでしまうと。

 今まさに俺は2つの脳を一気に……くそっ!なんでっ!なんでいつもいつもいつもこうなんだっ!!なんで!!


「ぁ゛~、頭痛い……確保」

「え……?」

「ご丁寧に綺麗に切って貰ってありがとうございますっと……」

『っ!?脳組織は確かに破壊したはずなのにどうして生きて……』


 切り裂かれた白露の体が一瞬にして癒着した?脳組織の活動が停止していたんだぞ……反射反応で回復魔法を使ったとでもi


「大正解、主様に5000兆点。そして、捕まえた♡これなら感覚が狂っていようと主様を逃すことはない」

「い、痛い」

「私達の愛ですよ♡直に気持ちよくなってきます。さぁ、行きますよ」

「掛け声っ、掛け声を……!!」


 糸でお互いに縫い付けられている。切られた瞬間に剣を辿って縫い付けたのか。痛いが今は我慢しなければ……。


「ゴー!」

「うぉおぉおっ」


 白露が化け物の攻撃をわざと喰らい、どちらが街なのか把握し、慎重に方向を微調整し走る。

 俺はその歩調に合わせて必死に走った。全力疾走に全力疾走を重ねて、限界を超えても走った。


「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

「着きましたよ、街の中心っ!間違いないです!!飛びますよ!せーのっ!!」

「うぉぉおぉおお!!」

「私に合わせてください!」


 白露と一緒に飛び上がり、縫い付けられている腕を白露に合わせて動かす。白露の魔力の流れを直に感じる。


「せーのっ!約束された勝利の舞っ!!」

「「ぉぉぉおぉおぉぉぉぉお!!」」


 白露が銀白の極光を纏わせた両武器を出鱈目に振り回し始めた。感覚が狂うなら適当に振ったほうが当たるということか。

 相手は自分では戦う能力のない雑魚!耐久性がいかに高かろうが上空からの無数の弾幕は受け切れない!!


「縫い付けているからっ、主様の腕も私並の速度で動くっ!!2倍の太さと数千倍の速さを併せ持つ究極の攻撃!死ねぇえぇぇええ!!」


 腕が熱いっ!肌が焼けるっ!物凄い衝撃が腕に伝わってくるっ!!こんなものを白露はずっと……?


「主様……」

「白露にだけ身を削らせない」


 バルムンクに宿る怨念に腕を喰わせて衝撃波を飛ばす。当たれば結晶化する斬撃……いくら人形を用意しようと防ぎようがない。


「「はぁ……はぁ……はぁ……」」

「ひひっ、ひひひひひっ!!ひひひひひひ!!惜しかったでちゅねぇ……後数秒続いていれば死んでたんじゃないですかぁ?ふひひひひ、それじゃa」

「違うな……追い詰めたのは……俺達の方だ」

「あがぁぁあぁぁぁぁあ!!腕がっ!腕ぇえぇぇぇええぇぇええ!!見えてない、見えてないはずじゃ……」


 簡単な話だった。俺達が見る必要も感じる必要も無かったんだから。こいつに戦闘力なんて物は皆無。

 なら、武器の怨念に任せて腕を預ければ良かった話なんだ。出来れば足に当ててほしかったが贅沢は言えない。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!F・フルバーストっ」

就活が始まったので更新が月一くらいになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ